上海蟹そして餃子そしてーー 一昔前まで中国では、唐の楊貴妃のために、はるか遠方から果物を早馬で運んだように、貯蔵手段が殆どない為、旬のある食べものは、その時期でないと食べられなかった。 中国に行き、街なかの自由市場を通ると、ああ、夏が来た、秋になったという季節感が感じられたものである。 それは、私が子供の頃、田植えの頃になると、那珂湊から、自転車の荷台に氷の入った大きな箱を積んで、鰹を売りに来たり、稲刈りの頃になると、秋刀魚を売りに来たのと同じようなものである。 中国で季節が来たなと思わせられるものは、ハミグワ(まくわ瓜)や西瓜などの果物もあるが、なんと言っても、上海蟹である。 極めて限られた時期に、取れるものであるから、予約をして、テーブルを確保しておかないと食べることは出来ない。これですらコネでも使わないと、予約することすら難しい。 中国に行っていた1980年代に、商社がコネを使って北京の有名な店に食べに行った事がある。まだ、8時になると店が閉まってしまうような時代であり、5時過ぎに店に行くと個室に案内してくれた。 このようなところに来るのは、軍や政府の幹部など限られた人たちのみである。 彼らは、給料こそ格差が少なくて、一般の公務員の数倍程度であるが、階級に付随する特権はすごいものである。 日本人など、よほどのコネがないと入れない。彼らも表面では日本人は歓迎だが、実際はそうではないことは雰囲気で判る。 今は、どうであろうか。1980年代と違い、上海蟹と言うものが金を出せば誰でも食べられるようになった.そんなに蟹が増えるはずも無いだろうと思っていたら、案の定、大半が偽者である。 海老にしても、同じで、フィリピンなどで海岸を仕切って養殖池を作り、海老を養殖すると、ぼうふらがわくように大きくなる。密度の濃い養殖だから、抗生物質など使って病気を予防するが、時には、大量に死ぬこともある。 そして、ついに餃子事件が起こり、人間が毒物を入れる事態となった。日本人の食べ物の大半は輸入品である。 いまや、人間は食物連鎖の頂点にいると言うが、自然のもの以外の食物を食べていくことが必要になる。 |