「間違い」

 若い時から、下らない事に興味を持ち、雑学の大家と自ら任じていたが、そのせいもあってか、色々な所で、職業などを間違えられる。

  一番多いのは、その街の住人に間違えられることである。

「東京や大阪で、日本人に聞かれる」、「同じく、外国人に聞かれる」、「外国の空港や街角で日本人や韓国人に聞かれる」はなはだしきは、「ニューヨークで白人に道を聞かれる」のである。ロンドンでもアラブ系かインド系の人に道を聞かれたことがある。

 しかし、何か聞く時に第一印象で、聞きやすい人と聞きにくい人はいるもので、小生は聞きやすい方に入るのだろう。

ある時、台北空港で帰りに時間があって、暇なのでDuty Freeの店でネクタイを見ていると50歳ぐらいの年格好のおばさんが寄ってきて、「主人のお土産にネクタイを買うんだけど、どんなのが良いでしょうかね?」と聞く。

 「ご主人の年恰好は?私くらい?」などと聞きつつ「私の経験から言えば、女房の選んだネクタイなど気に入った物は無い、もらい物も同じ、したがって、奥さん自身が気に入ったもの、ブランド物、当り障りのないものの3本位買っていくのが良いでしょう。

そして、お土産!!と言って渡し、気に入ったのを選んでもらって、後は、誰かにお土産と言って、差し上げてと言ったら良い。どれを残すか後で見ると、ご主人の気に入ったのが良く分かる。でも、皆、人にくれてしまうかも?!」などと言って、何本か売りつけた。

次に多いのは、職業の間違いである。

バリ島に行った時に、女房がリゾートホテルなど海を見ていても面白くないと言う。

見れば、下の海岸にらくだに乗っている人がいる。観光らくだらしい。あれに乗ろうと言い出し、それに乗ったが、今日は終わったが、明日も暇だ。

町の観光に行きたいと言い出した。仕方が無いので、ホテルの中の観光案内所に行くと、やはり、中年の夫婦が、なにやら、相談をしている。誰やらのゴルフのティーショットの如く、その長いこと!!いい加減、頭に来たこともあり、ちょっと失礼と先にやらせてもらうことにした。

すると、後で、女房が「お父さんは、強引だから、あのご夫婦のご主人が、あれが典型的な日本の商社マンだ!!といってましたよ」と言う。

もっとも、日本でも、事業部時代、新製品の売り込みに、某電力会社に通っていた時は、技術部門だけでは、埒があかないと資材部長の所にも行き、ゴルフの賭けのやり方やらなにやらの話をしていたので、しばらく行かなかったら「営業の鹿島さんはどうされました?」と言われたりもした。

 しかし、技術屋といっても、それは専門外の製品であった。

相手もその話を聞いても面白くない。必要なことは、製品を売り込む前に自分を売り込むことである。相手が、それなりの立場の人間である場合、相手は、こちらの人柄を見る。

人と付き合える基本は、この人は、何か有った時、頼りになる、裏切らないと言うことであろう。勘違いしてはいけないのは、相手が、「自分と付き合ってくれているのか」、「自分の地位や身分と付き合ってくれているのか」と言うことである。

 幸い、電力会社を相手に、事故対策やら、新製品や新技術の売込みを長年やっていると、付き合いは、一見で終わらない。
これによって、色々と勉強することが出来た。しかし、中にはいやな奴もいる。

やはり、面白い人達は、苦労をしてきた会社の幹部、たたき上げの社長など、民間会社関係の人達である。

 しかし、事業部に移ってから以降、小生を「技術部門出身である」と思ってくれない人達が多くなったのは良いことなのか、悪いことだったのか?

技師長などという職位にも付いたが、自ら「詐欺師長」などといったりもしたので、いささか、先行きに響いたかも知れない。