分解輸送変圧器

 「平成20年度の記録品」の所に「分解輸送変圧器」について簡単に記載しましたが、現在では、この構造が内陸部の大容量変電所変圧器の基本的な形となりつつあります。

変圧器を輸送するには、「重量と寸法」「輸送手段」と言う二つの大きな制約条件があります。

火力や原子力発電所では、冷却水、燃料輸送などの問題があり、海岸に発電所が置かれ、重量物を陸揚げする岸壁が造られるので、「重量と寸法」の制約はほとんど無く、工場から港までの「輸送手段」のみが問題となりますが、今日では1000トンもある重量物も運搬できるトレーラーもあり、道路も補強されているので、問題なく輸送できます。

    

発電所用超大容量変圧器のトレーラー輸送                   一般の大きさのもの

変電所は、大都市を囲むように、リング状に内陸部の配置されますから、そういう訳には行きません。変電所や水力発電所の変圧器には、戦後の電力系統の進歩に沿って、輸送上の進歩があったのです。これをまず、簡単に書いてみましょう。

 

「昭和30年代頃」

 道路も悪く、輸送用の大型貨車、トレーラーもありません。輸送困難な場所があると変圧器を工場で解体し、タンク、鉄心、巻線と言ったユニットに分解し、現地に搬送し組み立てる分解輸送が行われたこともありました。

「昭和40年代頃」

変圧器輸送専用の、貨車(シキ車)やトレーラーが開発され、大容量の輸送が出来るようになったのですが、トンネルなどの寸法制限、橋の重量制限などから限界があります。

そのため三相変圧器を三つの単相変圧器にして組み合わせるという方法も行われました。

 

鉄道輸送用貨車(シキ車)

 

トレーラーでの陸上輸送

 

三相器を三台の単相器に

「昭和50年代頃」

 500kV変圧器が広く用いられるようになってきましたが、輸送制限から変電所では全てが単相変圧器でした。

 

巻線が一つでは幅が大きくなるので二つに

「平成になった頃」

 国鉄が民営化し、合理化で駅の側線などが廃止され、変圧器輸送はますます困難になってきました。このため、再び、分解輸送変圧器が検討され始めました。

500kV変圧器では、輸送上から単相変圧器であったものを三相変圧器として一体とすると敷地などが大幅に減少します。

 また、以前は碍子を使った巨大なブッシングで電気を引き出していたのがSF6ガス絶縁機器の進歩で外部の絶縁距離をとる必要が無くなって、全体が更に小型化されるメリットがでてきたのです。

 平成10年代になると、昭和40年代に作られた275kV級の変圧器の老朽化更新が検討されてきましたが、今では昔と同じ輸送は不可能な所がでてきました。これも分解輸送を検討する必要があります。

 

 このような時代の背景から、再び、分解輸送変圧器が見直され様々な検討が行われ製品化されました。

現在、二通りの方法が実用化されています。これらは、日立(AEP)独自の方法です

「第一の方法」

 鉄心を台の上に置き、それを繋いで、下部のタンクを取り付けて起立する。

 

鉄心起立方式

「第二の方法」

 下部のタンクに鉄心を立て、それぞれを繋いでいく。

 

A−SAT方式

第二の方法は、現地作業は簡単ですが、鉄心のつなぎの部分が多くなり、重量も大きめになります。従って、最も輸送重量が大きい鉄心部分の輸送重量限界からいずれをとるかが決まるでしょう。

リプレースなどで容量が比較的小さい場合はこちらの方が簡単です。

しかし、その基本構造は、1954年に製作された分解輸送変圧器と殆ど変りません。

数百トン超大型クレーン(借用料がべらぼうに高いしこれを現地に持ち込むのも大変)を使わずにユニットを組み合わせていくことが基本となります。

 

分解されたユニットの輸送

    

完成した275kV変圧器                          500kV変圧器

また、現地での品質管理も重要なテーマです。そして、2000年代になって多くの変圧器が納入されました。

正に、技術は発展していく段階で螺旋上の進歩をしていくと言う良い例でしょう。今後の更なる技術の発展を願うものです。

 

 

「解説」

変圧器の設計に携わっていた人以外の人達にも読んで頂く為に、「変圧器とは?」ということを簡単に書いてみましょう。

電気には直流交流があります。

エジソンが開発を進めたのが直流で、彼は最後までそれにこだわりました。

一方、ウエスチングハウスが実用化を進めたのが交流(三相交流)です。

しかし、電力を長距離にわたって送電し、電圧を自由に変えて使うと言うことになると直流は、交流にかないません。

この「電力の電圧と電流を自由に変換する装置」変圧器なのです。

変圧器は、電柱に乗っている数KVAの柱上変圧器から、原子力発電所や500kV変電所の1000MVA以上まで、様々なものがあります。

そして、大きさによって製作するメーカーや工場も違います。しかし、違わない所が一つあります。それは、殆どの変圧器が「油入変圧器」だと言うことです。

 と言う事は、使っている材料も殆ど同じと言うことです。

何で出来ているか? 部品を除いた本体は次のようなものです。

 容器:「鉄」 絶縁物:「油(純粋の石油製品)」「紙、プレスボード(純粋の木材繊維)」導体:「純銅」 鉄心「電磁鋼板」という訳です。
すなわち、j鉄、紙、油、銅で構成されていると言ってよいでしょう。

 これで、小は「100V、数KVA」から大は「1、000、000V,1、500,000KVA」と言ったものまで製作するのです。

重量も数十kgから1000トン位の物まで有るのです。

条件さえ許せば、もっと大きいものまで製作することは可能です。しかし、これには二つの制約条件があります。

その一つは発電機の容量です。基本的には1台の発電機に1台の変圧器が使われます。しかし、発電機を数台まとめて一台の変圧器に繋ぐこともあります。

もう一つの制約が輸送という訳です。