漢詩(その14)  酒(その4)

 漢詩には、に関するものが非常に多いのですが、そのものに関する話は更に多く、酒の種類もまた多く、酒の異名もまた数多く有ります。

此処に紹介するのは、下記の本に出ていた引用の一部です。

 (酒の別名)

    甘液、甘露 含春王 宜春 忘憂 快活湯 狂薬 養生主

    福泉 麹先生、麹君 秋玉 玉友 金糸 金尊 聖人(清酒)

    賢人(濁酒) 薔薇露 梨花 黄流 黄嬌 松醸 神聖物 
   
    春蟻(蟻は酒粕) 太平君子 竹露 竹葉 天禄大夫 天乳

    軟脚 軟口湯 釣詩鈎 米汁 顧健康 三遅 三清百薬之長

    天之美禄 壷中物 翠物杜康(酒造りの祖)白堕(酒造りの名人)
   
    翠物 養生主(和やかな酒) 斎物論(強い酒)


 

今は、宴席の有り方も簡略化されてきたようですが、昔は、一定のパターンで繰り広げられました。

宴席に坐ると、給仕が来て「ジュースですかビールですか」などと聞きます。此処で日本式にまずビールなどと考えて頼むと後が大変です。それは、単なる口直しのものだからです。

主賓が挨拶などして、「乾杯!」となると55度もある白酒を小さなグラスについで、文字通り「乾杯」です。その後、歓談に入ると、先方の誰かが「**先生。乾杯!」とグラスを出して、一緒に「乾杯!」これを繰り返すのですが、白酒を5杯も飲むと頭がぐらぐらしてきます。口直しにジュースと思ってもビールを頼んでいるので手元にはビールのみです。

 少しして分かったことは、中国人といえども皆が酒に強い訳では有りません。の強い部下が、弱い上司の代行をしているケースが多いのです。これでは、敵うわけがありません。

 そこで、日本で宴会をやった時、次のようなことをやって見ました。

「今日は日本流です」と言って、まずは「ビールで乾杯!」続いて「日本酒を飲みましょう黄酒と同じような作り方をします」などと講釈を言って「日本酒で乾杯!」更に「日本にも白酒と同じように作る蒸留酒も有ります。お国のものの半分位の度数ですがーー」などと言って「焼酎で乾杯!」更に、「もっと強い酒はウイスキーです。日本はサントリー」などと言って「ウイスキーで乾杯!」そして、最後に「お国の酒で締めましょう」などと言い、「白酒で乾杯!」(途中、こちらは誤魔化して、焼酎などの代わりに日本酒を飲んだりして?!)

 これだけやると、翌日はグロキーです。悪酔いの酒の詩を1首。 蘇東坡が大酒のみの詩人と坊さんと酒を飲んだ時のことです。

 

悪酒は悪人のようで、攻めてくること刀や弓矢より激しい。酔っ払ってベットの上でぐったりし、悪酒に勝つには戦うのを止めるしかない。

詩人は元気、坊さんは言葉清らか、自分は酔っ払って全て分からず、目の前は赤や緑がちらつく。目が覚めたら月は落ちで風の音も変わり、ただ明かりが一つ。

二人の酒豪はすでに居ない。