漢詩(その1)

 高校時代から親しんできた漢詩は、中国と技術提携などやるようになって、色々と役に立った。我々が知っている漢詩とは、名前は「漢」であるが実際にはそれよりも500年以上も後の「唐」の時代の詩である。

花鳥風月、人生、戦争、政治などさまざまな情景を詩に託して表現している。

左側の詩は、王維の「陽関曲」とも言われる有名な別れの曲である。西域に公務で旅立つ友人を見送る情景であるが、もう会えないといった悲壮なものではなく、転勤の友を向こうに行ったら友人もいないのだからもう一杯飲もうやと励ます。

それに対し、右の詩は高適という詩人が、何らかの理由で辺境の地に来ている琴の名手の董大に会って彼を励ました詩である。

いずれも有名で、皆さんご承知のことと思います。

                                                       

 高適の詩については、忘れがたい思い出がある。

場所は西安、古の唐の都である。彼は小さな合弁会社の日本代表としてたった一人ここに赴任し、ホテル住まいをしていた。

 西安に行く用事があり、ホテルにきてもらい、二人で飯を食い酒を飲んだ。終って彼を送ろうとロビーに出ると、老人が書を書いて売っている。そこでこの「別董大」の詩を書いてもらい、彼に送った。「知人がいないと愁いなさんな、天下に君を知らない人はいないよ」と。

 数年後、彼は本社に戻ってきた。同じ頃、自分は名古屋に行くことになった。

彼と昔話をしていると、その詩の話となり何か送別に送りたいという。

今の心境を考えると、三国志の英雄、魏の曹操の詩の一節が良いだろうと頼んだ。

彼はこれを知り合いの書家に書いてもらい額に入れて送ってくれた。

名古屋ではこれを寝室のベッドの横に掛けて見ていた。