老人力の強化

      今から5年ほど前の老人力が最も強かった時の話です。この言葉、一時はやりましたね

                それは、とても暑い土曜日であった。

場所は、岐阜県のさる山間のゴルフ場である。最近、いささか、暇ができ、ゴルフ練習場に何回か行った甲斐があり、不安定であったアイアンのショットも、安定してきた。なじみの会社で一緒だった悪共のゴルフで、さまざまな賭けをする。

 前半は、45で、後半は40それも6ホール目までパープレイ、久しぶりに30台かと思ったが、最終ホールOBで40となったが、大満足である。

終わって、支払いをして、帰る途中のさる喫茶店へ行き、ベットの清算をした。一人勝ちである。さて、帰ることになり、勘定は俺が持つということで、金を払い、あまった金を財布に入れようとしたら、財布がない。いつもの内ポケットには、ゴルフ場の清算書が一枚入っているのみである。

 上着を椅子に掛けておいて、落としたかと探してもなく、ゴルフ場に電話をし、念のために戻っても見たが、見つからず。

帰りの切符から免許証、キャッシュカード、クレジットカード、診察券から、あらゆるものが入っているので、いささか、あせった。

まあ、土曜日の午後であるし、誰かが拾って、猫ばばした上、金を引き出すとしても、めったに判る暗証番号ではないので難しいだろうと思ったが、クレジットカードの方は、使われる可能性が高い。

 いつか、なくすことも無きにしもあらずと、個人情報は、全て、一覧として、USBメモリーに入れてあるが、自宅でないと分からない。女房殿は、娘や亭主を入力装置と心得ているから、こんな時には役に立たない。娘は。旅行中で不在。

幸いなことに、ANAからもらった手帳に、クレジット会社の紛失時の連絡先があった。切符を買うため、1万円借金し、帰りの電車の中から、電話で、紛失の手続きをしたが全部できるわけも無く、家に帰り、数日間、後始末に没頭した。

 あれやこれやで、10万円近い損失となったのであるが、物忘れの代償として、色々なことを勉強することができた。これが、老人力の強化というものであろう。

参考までに、学んだことを書いてみる。

 

1.日曜日

 日立に戻ったが、今日も暑い。しかし、金がないので、駅前の郵便局に、車に乗って(?!)金を下ろしに行く。免許不携帯であったが、老人力が付いてきて失念(!!)した。

郵便局は、通帳さえあれば、金は下ろせる。銀行は、カードを差し止めると、通帳と印鑑を持って、窓口にいかねばならない。日曜日は休み。しかも、おらが日立にUFJはない!!

 ついでに、に行き、翌日の切符を買う。免許証は発行した検査場に行くとその日のうちに再発行してくれるとのこと。最近、65歳を過ぎたので、JRのジパングクラブに入り、200km以上は、割引で切符が買える。このカードもないが、手帳があるので、問題なし。ジパングクラブの切符の気に食わないところは、切符にG割という印刷があることである。J割でないのは、じじい割ではないかと文句が出るのを恐れたためか?しかし、も同じようなもので、どう見てもGrand papa、mamaの略号である。

 駅の目の前は、交番である。ご丁寧に、交番と駐在所と二つの看板がある。

入ると、カウンターがあり、後ろのほうでは、若い巡査が二人いて、パソコンでなにやらやっている。目の前には、60過ぎの私服なのか、リタイアして暇だから、来ているのか親父が、お茶を飲みながら、新聞を読んでいる。

「財布をなくしたので、紛失届けを出したいんですが」というと、その親父が、「ああ、遺失物ね、俺がけえて(書いて)やっから」とまるで茨城弁。

 「氏名、住所、年齢――いやあ、お若いですねな」どと言う。警察でお世辞を言われたのははじめてである。

場所は、岐阜県のゴルフ場、中には、―――と言って、皆書いてくれた。

「ほー、岐阜国際GCですか、国際云々というのは、名門なんでしょう」(メンバーの皆さんには悪いがとてもとてもーー)「いやー、何とか国際というのは、全国にあって大したことはないですよ」などと話をしていると、後ろの若い巡査が、「遠くまで行って遊べていいですね、我々は、どこに行くにも、誰と、何の為に、とか申告しないといけないんですよ」などと言う。

 親父が、「ところで貴方は、どちらの方?」というので、元は、水戸の方で、お宅なら知っているでしょうが、俺と高校の同期は、県警に三人いた。日立の副署長から、高速機動隊に行った、E君、最近、A少年の犯罪など小学館から文庫本を何冊か出しているK君、事情があって辞めたとか言うO君で、知ってるでしょう」「ああーー、Oさんは早く辞めましたね、EさんとKさんはトップまで行きましたね、そうですかーー」などと無駄話を30分もしてしまった。警察は狭い。

親父は、どうでも、後ろにいた若い方の顔を大体覚えたので、今後、何かの役に立つかもしれない。しかし、老人力がついて、名古屋から帰ったらすっかり忘れた。と言うよりもどうやら最初から覚えていないのだろう。覚えないから忘れる事などない!!と言うのが老人力。

 

2.月曜日

 1)免許証

 8時17分、いつもの電車で名古屋に行き、平針試験場に行く。

受付で聞くと、「はい、紛失は、3350円、表にある通りです」といい、申請用紙をくれた。

傍に、記入する所があり、書類は、本籍地、現住所、名前など上から書くようになっている。

記入していると、隣で書いていた、若い男が、「すみません、本籍地は、どう書けばいいんですかね?」と聞く。見れば、分かっている現住所や、名前は、すでに書いてあり、そこだけが空欄。俺に本籍地を聞かれても分かる訳はないが、「親とずーと一緒にいるのなら、現住所と同じだろう」というと、「じゃ、同上でいいですかね」と聞く。

下に先に書いて、同上もないのであるが、面倒なので、「役所の書類は、きちんと書かなけりゃ、受け付けないよ」と言っておいた。疲れる!!老人力の無駄遣いだ!!

「ところで、何で、免許をなくしたの?」「ゲームセンターですられたんです」

 さて、再交付受付の窓口に行くと、前の男が、質問をしている。 「紙を切る裁断機で間違って、免許証を切ってしまったので、再交付が必要ということで来たんですが、これで良いですかね」「君、現住所と、免許の住所が違うね、これは、住所変更の届けも必要だよ、これがその申請用紙、これにも写真を貼らなけりゃいけない」、「写真?持っていませんよ、切っちまった免許証を切って貼ったら駄目ですかね?」「だめ!あそこに、写真機があるからとってらっしゃい」

 十数人再交付の人が集まると、呼び寄せて、説明をする。「これが、皆さんに出してもらった申請用紙で、皆さんは、今日で19回目です」

いやはや、午後一時過ぎなのに、もう19回とは、少なくとも、毎日、200人位の人が再交付にきている勘定になる。

免許証に貼る写真を撮って、待つこと約一時間。無事、免許証の再交付を受けた。

免許証のNOは最後の桁が、0から1に変わるのみ。

古いのが出てきたら、必ず、廃棄してください」と言われたが、後で、某運転手と雑談していたら、無くしたはずのが出てきたので一枚を車のダッシュボードにいつも入れておくと便利なので、しばらく、そうしていたという。下一桁では、確かに、調べても簡単には判らないだろう。

 さて、平針から戻り、名古屋駅前郵便局に行き、カードの再発行の手続きをした。

再発行のための書類などをまとめて入れたバックをショルダーバックからだし、親切な局員の指示通りに記入し、金を払って、数週間のちに、カード会社からカードが来るでしょうと言われ、局を後にした。

局を出て、何か、物足りないと思ったら、小物要れを持って、ショルダーバックを忘れてきた。

ああ!老人力!!!!

 

2)カード会社

 カード会社は、こんな時、極めて事務的で早い。しかし、紛失のTEL。0120はまず繋がらない。これだけ話中ということは、余程、カードのトラブルがあるのだろう。

しかし、ダイナースは、極めて早かった。と言う事は、それだけメンバーが少ないのか?

 「ゴルフの掛け声」の会社は、VISAとマスターである。「ANAのVISAカードは、継続ですね、分かりました。三越カードは、この際、取り消しですね。手続きはしますが、三越にも連絡してください。電話は、***です。ところで、も一枚あるんですが、どうされますか?」「なんだそれ?」心当たりなし。

 結局、これは、会社でマンションに電話を設置したとき、カードを使うと安くなるということで、法人で入っていたと判明。とっくに日立IEは退職したのに、まだ残っていたらしい。会社の怠慢である。JALや青山のJCBも簡単であった。

簡単だと老人力は強化されない。

 

3)ジパングクラブ

 なかなか、電話が繋がらない。ようやっと繋がった。女の人が猫なぜ声で、「どうしましたか?何でお困りですか?」と老人ホームのケアの女の人が言うような言い方で用件を聞く。いつも、老人を相手にしているとこんな口調になるのだろう。

「カードを、なくしたので、再発行してほしいんだけど」「分かりました。それでは、用紙を送りますので、必要事項を記入して送ってください。再発行の費用が1020円かかります」というので「何で、1050円じゃないの?」と聞くと、「消費税が5%になった時に変えなかったんです」などともっともらしいことを言う。

ここは、最初からこちらの老人力があると思っている。

 

4)UFJ銀行

 「はい、分かりました。再発行の用紙は、すぐにお送りしますので、記入して送り返してください」と歯切れが良い。

安心していたが、待てど暮らせど、来ない。10日以上経ってようやく来た。

5)大和証券

 「再発行の申請用紙を送りますので、記入して、本人であることを証明するもののコピーを添付して返してください」「保険証のコピーでは?」「結構です」

「書類を頂きましたが、保険証の住所が、茨城県ですね」「当方での鹿島さんの住所は、稲沢市ですので、申し訳ありませんが、これでは、駄目です。免許証のコピーにしてください」などと、些細なことで誠にうるさい。

ともかく、ここは、日立IEの郵便番号は、郵便番号簿と違うとか、名前の芳丈の丈の字に免許証には点がありますので点をつけてくださいとか、口座を開く時にも面倒くさかった。(とうとう、点つき男にさせられてしまった)

 

 その他、ポイントカードなど色々なことがあったが、総じて、アメリカ系のビジネスは、手続きが簡単であるが、日本の銀行や証券会社などは、手続きが面倒で、これでは、国際競争に打ち勝っていくのは、困難ではないかと思った次第である。

 それにしても、この紛失事件で、色々なことを学んで、一段と、老人力がついたような気がする。