北京ダック

 

 今から、20年以上前の中国で、美味い物を食べようと思ったら、その食べ物の旬がある時で、それが入荷した時に行かないと保存手段がなかったために、本当の味は味わえなかった。

 また、一般の店では、冷房がなかったから、しゃぶしゃぶなどは、寒い季節が向いている。

その点、北京ダックは、当時、北京でも、チェンメンとか、ワンフーチンとか数軒の店しかなく、予約が出来れば、一年中、食べることが出来る。

そして、誰でもが、一度は食べてみたいと思う料理である。

ある時、K君を始め、研究所のH氏など何人かで、北京を訪れたことがある。

泊りは、何時もの新京飯店である。此処に行く時は、いつもインスタントラーメンやら、酒のつまみやら、色々な物を仕入れていき、つまみなどは商社の冷蔵庫に入れておいて、誰でも食べられるようにしていた。そして、ついた夜は、成田空港にあった京樽のさば寿司などを持っていき、皆で食べたものである。

 仕事の合間に、初めての連中は、市内見物などに出かけ、いつもの連中は、マージャンである。
小生なども、何回も行っている為、大抵の所は行っており、マージャンで過ごす。

万里の長城などいつでも行けるといっていたが、ある時、明日は、休みだから一度位、万里の長城も行かないとまずいだろうと言うことで出かけることし、マージャンをやって、もう寝るかと外を見ると雪である。大体、そんなことをを考えるから、雪が降るんだなどと言って、結局、マージャンで過ごし、長城へは行かなかった。

 結局、長城へ行ったのは、それから、十数年後、女房と行った時である。

かくのごとく、マージャンに打ち込んでいるのであるから、まず、負けない。この時も大勝であり、一緒に言った連中に、北京ダックをご馳走することになった。

K君が、商社の人に頼み、予約をして、出かけることになった。

当日は、商社の人達は、仕事で誰もおらず、案内はK君である。 場所は何処だというと、歩いていけると言う。自信ありげに案内をする。

確かに、店があった。店について、日立だと言うと中国語でなにやらごちゃごちゃと言っている。どうも予約がされていないと言っているらしい。

此処からが、K君の出番である。俺達は予約した、聞き方が悪かったんだろう、日本人の予約は入っているだろう、などと日本語と筆談でわめいている。

ともかく、頼んだことは間違いない、食わせろと言い、結局、席を用意させて、北京ビールなどを大いに飲んで、北京ダックを食べ、皆で気勢を上げて楽しい夜を過ごした。

 会計は、丁度、マージャンで勝った分位である。

さて、翌日になって、皆が集まり、仕事の話などしていると、商社の人がやってきて、昨日は北京ダックを食べなかったんですか?と言う。

 いや、皆で行って大いに食べ楽しかったと言うと、北京ダックの店から文句がきていると言う

なぜだ、と聞いてみると、昨日、予約されていたのでお待ちしていましたが、お出でになりませんでした。料理が無駄になったので、違約金を払ってくれと言うことである。

おかしいではないかと言ってみても、結局は、K君の早とちりで違う店に行ってしまったらしい。すったもんだしたが、結局、何がしかの違約金を払うことになり、小生が払った。

悪銭身に付かずとはこのことである。