巣

 我が家は、団地の一番奥にあり、もともとは、田んぼを埋め立てた所で中学の崖の下にあり、東斜面は、松や椎などの雑木林であった。引っ越した頃は、マムシなどもいたし、季節ごとに山菜取りや、目白取り、篠竹とりなど色々な人が来ていた。
中学生も野球練習でボールを落とし、取り来る。女房が集めておいて渡している。

 松くい虫で松がやられ、手入れもしない山は、年とともに荒れてきて、つた類の覆われるようになり、今では、家の入り口と後ろに二本しか松は残っていない。

                    

                      横の山に2本残った松(手前に巣を)

山は持ち主が手入れをしないので、団地の前のほうでは山桜の木などが生い茂り、それにつたが絡まって、送電線にからまるようになり、持ち主に話をして、周辺の木を東京電力に切り倒してもらった。
その時、何本かの松も切られたのであるが、そこに巣を作っていたカラスが、我が家の前の松に目をつけたのである。

 最初は、女房が洗濯物のハンガーが落ちていると言うがよく分からなかった。

玄関外の電柱に蔦が絡まって、そこに巣を作るのではないかと思って、東電にきれいにしてもらったが、良く見ると高い松のうえに作っている。
 最初は、ハンガーがうまく引っかからずに、何本も下に落としていた。

落としたハンガーを拾って舞い上がるのは大変と見えて、落としたらそのままとして、どこかから運んでくる。女房が拾っただけでも、数十本になる。
落ちたのを見ると単にハンガーを枝にかけるだけでなく、端のほうが曲がっているのもあるから、くちばしを使って曲げているらしい。

 カラスが巣を作るとうるさいだけでなく、子育ての最中は人を襲うこともあるというので、カラスの巣の除去について調べてみた。

石原都知事がカラスの除去に熱心なように、東京は一番被害が多いらしい。
除去について明確な方針があるのは文京区である。ここは、公園や墓地が多く、個人の住宅も樹木が多い。周辺に、銀座、新宿、池袋と餌場もある。
ただし、巣の除去は、「巣を作ったから取ってくれ」といっても駄目である。

電柱などでは、停電などの恐れがあるから、電力会社が除去するが、個人が公園や自宅の樹木に巣を作り始めたからと言ってもやってくれない。

どう言う時にやるかといえば、明らかに人に危害を加えることが認められた時である。

 犯罪行為が認められないと逮捕しないと言うのと同じである。カラス鳥獣保護法で守られているのである。

                  
 
                           からすの巣 

松ノ木の巣は見事に完成し、いよいよ子作りの段階に入ったらしい。毎朝、夜明けとともに、鳴き出す。

昔の都都逸に「三千世界のカラスを殺し、主と朝寝がしてみたい」と歌われたように朝のカラスはうるさい。
仕方がないので、カラスの次に5時過ぎにやってくる新聞配達のバイクの音を聞いて、新聞を取ってきて読む。

そうすると、次は女房が、「早起きして、トイレで新聞を読まないで!!」と文句を言うのである。