あいさつ    

 

 北海道を旅行した時、色々な人に出合った。旅館で一緒に食事をした人、写真を撮ってあげたり、撮ってもらった人、大阪から来た一人旅の大学生、露天風呂で一緒になった人、夫婦者、一人の男、地元の人など、話をしたり、すれ違っただけだったりの様々な人達がいた。

 名古屋や京都などの有名観光地と違い、団体も少なく、来ている人達も少ないところが多く、お互いに、挨拶したくなるものと思っていたが、必ずしもそうではない。

食事の場所が一緒だったり、船室が一緒だったり、子供連れであったりすると話のきっかけはつくりやすい。

また、旅には、写真を撮るという武器がある。自分がそこに行ったと言う事の証は、自分が入った写真が必要だが、タイマーがあっても一人では撮れない。

周りが迷惑する。しかし、カメラを持っている人に頼むと大抵は気持ちよく応じてくれる。

道ですれ違った時の「おはようございます」「こんにちは」とか言う挨拶になると、色々なことがあった。

まず、地元の人は、例外なく、挨拶を返してくれる。車やバイクで来た若者も、挨拶を返す。

子供連れには、大体、三種類ある。両親が挨拶する、母親が挨拶するかで、それにつれて、子供が挨拶したり、しなかったりである。

定年後の夫婦者は、亭主が右側か、前を歩いている。したがって、挨拶は、亭主にする形となる。しかし。奥さんは挨拶を返す場合が多いが、殆どの亭主は挨拶しない。

一人できている親父は、殆ど、こちらの挨拶を無視する。甚だしいのは、行きの船のデッキにいた親父の如く、「すみませんが写真を撮って下さい」、と頼んだら、今、本を読んでいるから後にしてくれと断られた。

 帰ってきて、その話を阿部床と言う日立の名物床屋の親父にしたら、自分も若い頃、釧路の辺りに数年住んでいた。(いま、81歳である。)

北海道に行った当初、汽車に乗って話をしていると、内地から来たんですか、あそこに行くんなら、道筋だから泊まっていけと知らない人に言われたことが何回かあり驚いたそうである。

今の人は、いい年をして挨拶もろくにできないなんて、人間じゃないと嘆いていた。

 さて、北海道から帰って、日立で夏を過ごした。体重を減らすべく、毎朝、近くの水木浜まで歩いている。朝、5時台でも結構、犬を連れたりして散歩をしている人も多い。

ここでも、犬を連れた人に「おはようございます」と言う挨拶をすると大抵は返事が返ってくる。当然、犬は、挨拶をしない。

中には、こちらに向かって、唸るやつもいる。

 二日ほどして、はたと気が付いた。夫婦者に挨拶するときに、先に歩いている亭主に挨拶したのは、主人ではなく、犬に挨拶したのであると。

道理で、後から来る奥さんが挨拶を返し、先に歩いている亭主は胡散臭げにこちらを窺うのだ。

本当は、奥さんに「いい犬ですね、30数年も飼いならすのに苦労されたでしょう」と言うべきであった。

 皆さん、犬にならないように、挨拶をする習慣を身につけましょう。

 

追記

 最近の携帯のコマーシャルでは、親父は本物の犬になっていますね。

小生は「先犬の明」があったのでしょうか!!!