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桃の思い出

 
今年も桃の美味しい時期になりました。
桃を見ると毎年思い出すことがあります。

 末っ子が小学校に入学してすぐの時のことです。
「お母さん、ほらこんなにいっぱい梅のお土産があるんだよ。」と、学校から帰るなりニコニコして、帽子いっぱいプレゼントしてくれました。
見ると、黄色い帽子にあふれんばかりの青い実があります。
「どこで取ってきたの?」って聞くと、「学校のそば」と言うだけで要領を得ない返事です。
そのうち上の娘が帰ってきて、「あの梅は学校の近くの家の庭になってるよ。みんなよく取ってるよ。」と言うではありませんか。
 すぐ、その家を聞いて見に行くと、その家の木の実はもうほとんどもぎられているのです。
末っ子と一緒にとったと言う友達のお母さんにも、一緒に謝りに行きませんかと言いに行ったのですが、「子どものやった些細なことで、何もわざわざ謝りに行かなくても・・・・」と断られました。


 
でもこれでは子どものためにはよくないので、すぐ手土産を買いに行き、玄ちゃん父さんに連絡して帰ってくるなりすぐ末っ子を連れて3人でその家に行きました。
外出されているのかお留守だったので、何度か尋ねました。
やっと夜の9時頃、お仕事だったようで帰ってこられました。
事情を話し末っ子に謝らせました。
子どもはみんながやってたので、何も思わずやったことが、とても悪い事だったことだと分かったのか、泣いて謝りました。
 幸いにもその家の方は私達の真意を良く理解して下さり、息子に、
「正直に謝ってくれて、おばさんはとても嬉しいよ。これからは、みんながやっていても一回は、やっていいかどうか考えるんですよ。これからは、おばさんともなかよくしてね。」と言っていただきました。
末っ子は、ホッとしたのかやっと笑顔が戻ったのを覚えています。

 その家の方からお聞きするまで梅の実と信じきっていたのですが、梅の実ではなく実は桃の実だったのです。
毎年学校帰りの子ども達にむしられて食べられないとのことでした。
謝りに来られたのはお宅が初めてだとも言われました。
その帰り道、「ぼく、あのおばちゃんがどうしても許してくれなかったら、どうしようかとドキドキしてたんだよ。お父さんもお母さんも一緒に謝ってくれて嬉しかった。ありがとう。」と言いました。
その時3人で見たお月様がいつも以上に美しかったことが、まるでこの間の事のようです。

 そして、それが縁でその桃の木がある家の方ともお知り合いになりました。
子どもも、家の前を通る時あいさつをするのが日課になりました。
今では末っ子も社会人になって、私にもいっぱしの意見を言うようになりましたが、あの桃の実の出来事は覚えているようです。

 余談ですが、今年はネットのお友達のプレゼント企画に当選して、美味しい桃が送られてきました。
いっぱいの桃を目のあたりにして、あの15年前の出来事を書きました。
(2001/7/5)

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