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かんてきで食べたすき焼き

 
食卓から牛肉が消えて3週間以上になります。
スーパーでは、牛肉売り場でも立ち止まってる人はごくまれです。
焼肉屋さんもがら空きで開店休業や店を閉めているとこも出てるらしい。
ただ、あの安い牛どん店はこの不景気なご時世か、お昼は学生やサラリーマンでにぎわってるみたいです。
今や、疫病神のごとく元凶にさらされてる牛さんは、哀れに思えてなりません。

 そもそも騒ぎの発端は、行政の失策に他ならないわけですが、それにしても、国の方針の一貫性のなさには、ホトホト呆れてしまいます。
 そんな騒ぎの中で、お偉い政治家や大臣が大口開けて「うまいうまい。」と、焼肉を食べて見せているのは滑稽なようにも思えます。
その芝居じみたパフォーマンスより、他にやることないのかと思うのは、TVを見ている国民の皆さんでしょうね。
いや、彼らのパフォーマンスはひょっとしたら、命がけなのではないかとも思う方もおられるかも知れませんね。

 私は牛肉はあまり好きではないのですが、この狂牛病騒ぎで、以前かんてき(奈良では、炭火のコンロのことを言います)で食べたすき焼きを思い出しました。
 今はもう廃業されましたが、志賀直哉も愛したという奈良公園の近くの「日吉館」で食べた、かんてきのすき焼きです。
かなり以前ですが、TVのドラマ「あおによし」の舞台になったところです。
20年前、若手看護婦の勉強会の合宿で泊まりました。
明治の頃の建物で、隙間風は入り部屋もふすま一つで区切ってあり、消灯時間も決まっています。
何故か、そこの晩御飯は毎日「すき焼き」。
それも、炭火のかんてきでアルミの鍋でします。牛肉は竹の皮で丁寧に包まれ、ご飯も年代もののおひつに入ってきます。
量的には決して多くなく、むしろ野菜がやけに多くて牛肉は少ないくらいでした。
卵も一人一個です。
他のおかずはなく、沢庵が一人2切れだけです。
宿の方が「ご飯は自分が食べられる分だけよそって下さい。決して食べかけで残さないで、味わって食べてください。残りは、私達で食べますので、きれいに残して下さい。」と言われました。どうも、必ずお客さんに言う言葉だそうです。
日頃、なにげなく食べているご飯も、緊張して食べましたが、いつも食べるすき焼きより、何故かすごく高級な感じがした思い出があります。

 今、我が家の冷凍庫には、以前コープで買ったすき焼きの肉と肉じゃが用のばら肉が入っています。
この3週間使うか使うまいか考えていますが、いまだ使わないでカチカチになっています。
 あの日吉館のかんてきのすき焼きを思い出しながら、やっぱり今日の晩御飯も田舎から送ってきた、干物を焼くことにします。
(2001/10/23)

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