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ひとりごと

誕生日とバラの花束

 
毎年私の誕生日には、玄ちゃん父さんからバラの花束をもらう。
実は、このバラには理由がある。
 
結婚してから玄ちゃん父さんは、私の誕生日にはケーキを買って来てくれていた。
元来、少食の私は食後すぐケーキと胃が受け付けず、子供達は喜んで食べても私の分は残していた。
あとで食べようと思っても、食欲の旺盛な子供に取られてしまっていた。
それを見て『ケーキあんまり好きではないな』と思ったらしく、買ってこなくなった。
それからは「誕生日おめでとう」と言うだけで、何もプレゼントをしてくれなくなった。
 私はつまらないので「誕生日には、真っ赤なバラの花束ほしいなー!」と言った。

それを聞いた玄ちゃん父さんは「えっ!お母さんバラきらいなはずじゃ・・・・・・・。」
「真っ赤なバラもらって、いやな人いないじゃない。一度だってくれたことないのに。」と私が言うと
「そんなことない。独身の時、バラをプレゼントしてつき返されたじゃないか。」
私は、古い記憶をたどってみてもおもいあたらず「いつのこと?」と聞くと
「ほら、お母さんが十八才の時、一大決心をしてバラの花束持って行ったとき、『こんなんいらん!』言ったん、覚えてないの?」
そーいえば、ありましたありました!そんな出来事が!

当時私は、働きながら夜学に通っていた。
疲れきっていた私は、頭の中が仕事と学校のことでいっぱいで、恋愛なんて考えられませんでした。
確かにその時、相手の気持ちを考えるゆとりもなく「こんなんいらん!」ってつき返し「私のじゃまやかんとって!」って言いました。
玄ちゃん父さんは、そのことずーっと覚えていたなんて、びっくりしました。
頭の隅っこにも記憶がなっかった私って、罪ですね。
「今なら、真っ赤なバラほど嬉しいプレゼントはないよ。」と言い謝ると、
それからの玄ちゃん父さんは、誕生日にバラをプレゼントしてくれます。

 9月26日の夕方、大和路線の快速電車で、仕事帰りに胸を張ってバラの花束を持っている、ちょっぴり頭の薄くなって、ややお腹の出た、丸顔の男性。
それは、玄ちゃん父さんです。 
(2000/9/19)

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