- ゼルダの伝説 オリジナル小説 -
第21章 過去を怨むユニコーン 作者:ゆう

ーここは…どこだろうー

ふとベッドに寝ていた勇者は上半身だけ起こす。

周りを見渡す…。

そこには…

沢山の本があった。

床を見ると…

「!?なっなんだこれ」

血痕だった。

それも、沢山

ところどころ焦げ付いているところもあった…。

『あっ気づいたか…リンク』

そこには元気のない顔のシュバが居て…。今にも泣き出しそうなフォルテもいた。
「ここはどこだ?」

問いかけようとして、口をあけた。だが、その言葉は飲み込まれる。
「ここは…あたし達(シュバ&フォルテ)が出合った場…」

『お前には…話さないといけないことがある。』
「ナビィとリリィとルルは?」
『隣の部屋さ。疲れたらしく、よく眠ってるよ』
「そっか。」
『リンク…昔のオレの話し…聞いてくれるか?』
「…勿論…」
リンクは少し間をあけ、静かに言った。

今から、七年ほど前…フォルテは当時十歳で…本を見ながら見よう見まねで召喚術を試し
た。

召喚術自体は成功

が…呼び出された馬は気が荒く恐ろしい馬だった。

でも、彼女は笑う。

優しい微笑みを毎日絶えずオレに向けていた。

オレはそんなこと考えなくて…

それが彼女の精一杯の強がりだったことを…

「人様は傷つけるなよ…」

いつも言ってくれていた。傷つくのは、自分だけにして…と。

でも、本当は怖かったのだろう。本当は恐ろしかったのだろう。

彼女はオレが静かになる夜にいつも泣いていたらしい。

どうしてか…

そのときオレは作りものじゃない彼女の微笑みを見たかった。

背中にこんなにも痛々しい傷をつけておいて…。

足も、何回この硬い蹄で踏んだことか

彼女の足は、本当に女性の足なのか?と疑われてしまうような足になってしまって…。

オレは謝ったことなんてなかった…。

ただ、同じ年なのに、どうしてこんなに大人なんだろうとか、そのぐらいしか思わなくて…。

オレとフォルテが十五の誕生日を迎えた…。
そのとき、オレが誓ったこと…

『オレは、人は傷つけない。絶対に』
「シュバ、わかってくれたのね」
『…でもっ…』
「でも?」
『フォルテを傷つける輩は…殺る』
そのとき、彼女は凄く驚いたように目をまん丸にして…

「…ありがとう…」

一言呟いて彼女は微笑んだ。

あれは…本気の微笑みだったのだろう。

オレは心が満たされたような気がした。

 

「そうだったのか…」

『オレはその日から…フォルテの為だけに力を使うようにしたんだ。』

「あたしも、その日からいろいろな召喚をしてみた。でも…」
フォルテはシュバの方を見る

「あたしをこんなにも傷つけて、あたしの為に血だらけになってくれるのは……シュバだ
けだった」

「……」
リンクは微笑んで彼女達を見つめた。
すると、音もなくすくっと立ち上がり…
「さっ傷も治ったし…」

「行こう?」

リンク達は隣の部屋のナビィ達を起こしに行った。


第21章 過去を怨むユニコーン
 2005年6月26日 作者:ゆう