- ゼルダの伝説 オリジナル小説 -
第三章 ”「選ばれた者」の印” 作者:猛炎古代竜

「ぅ…ん。」
気が付くとそこは元の森だった。
先刻引き込まれた湖は、遥か後ろにある。
身体を起こそうとするが、足元の不安定さに疑問を覚えた。
そして未だまだはっきりと覚醒しない頭で目の前を、それこそ一つ一つ確かめるようにゆっくりと眺める。
そうしてさらさらと風になびくたてがみと、自分の下はほんのりと暖かい事に気付いた。
…どうやら自分は、馬上らしい。
何が起こった…?
眠っていたのだろうか。
馬の上で? ありえない。
しかしこの際そんな事はどうでもよかった。
それよりも頭が割れそうに痛いのだ。やがては吐き気をもよおしてくる程に。
「っ…!!!」
よろりと馬上から落ちるように降り、重たい身体を引きずりながら近くの大きな木の前まで行くと
―――吐いた。
しかしまだ残る吐き気を抑えながら、口元をゆすぎに湖の前まで歩く。
そして自分の顔を湖に移した瞬間、その手は止まった。
額に、傷。
「っ何だよ…、これ……!!!」
…いや、刺青が彫ってあった。それも意味深な形で。
丸い円の中にもう一つ円があり、その中に文字のようなものがある。
どうやら古代文字のようだ。
「…? いつ、こんな怪我を…?」
怪我じゃない。
これは人の手によって彫られたものだ。
しかし自分でもその事は充分に分かっていた。
「った…!!」
その傷からの吐き気だとはすぐに分かった。
割れそうなくらいに頭が痛いのも、無理やり傷を彫られたからなのだろう。
少し触ってみるとそれだけでもう、失神しそうなほどの激痛が走る。
何が起こったのか。全く分からない。
今さっきまでの記憶が、すっぽりとそこだけ無いのだ。

「「貴方は選ばれし者…。」」
不意に脳裏に浮かび上がった言葉。
それが何を意味するのかは、今のリンクには到底想像もつかなかった。



第三章 ”「選ばれた者」の印”
 2005年10月10日  作者:猛炎古代竜