- ゼルダの伝説 オリジナル小説 -
第二章”再び <後編>”  作者:猛炎古代竜

森の中をしばらく歩くと、せせらぎが聞こえてきた。
近くに川があるのか。
何とはなしに音のする方へと歩き出すと、自然にその足取りは速くなっていく。
何が自分を動かすのかと問われれば、きっと答える事は出来ないだろう。
今の自分は微かな光が見え隠れしただけでも、すがりついてしまう有様。
それほど孤独は不安なものだったのだ。

生い茂る木々の間をくぐり抜けながら進むと、やがて広大な湖が目の前に広がった。
「す…ごい……!!!」
澄んだ青色。
それら全てが太陽の光を反射して、一種の宝石のように光り輝いていた。
その美しさにしばらく心を奪われる。
「ヒヒーン!」
だが、せきを切ったように鳴いたエポナの一声で我にかえった。
「ん、あぁ。すぐ…すぐ出るよ。」
何を期待してここへ来たのかさえも分からない。
「何をしたかったんだろうな、オレは。」
にっこりと微笑みながら愛馬に話し掛け、そのたてがみをそっとなでる。
そしてサファイア色に染まる湖を名残惜しく眺め、その場を立ち去ろうと背を向けた
その時。
「お待ちなさい。」
背後から…否、「湖から」声が聞こえた。
驚いて湖の中を眺めると、さっきまでは「見えなかった」筈の湖の底が見て取れた。
街。
そう、水の中に昔栄えていたらしい大都市が沈んでいたのだ。
ゆらりとゆらりと水の中で漂い、太陽の光が射し込むそれは、宮殿のような気品さがある。
城下町だったのだろうか…。
物思いにふけっていると、再び「そこ」から声が聞こえた。
「貴殿は選ばれし者。その者を逃すわけにはいきません。」
全て聞き終わるか否か、身体は湖の中に引き込まれていった。
遠ざかっていく愛馬の鳴き声。
それもやがては聞こえなくなり、目の前は真っ白になった。


背中の剣が、微かに光ったような気がした。




第二章”再び <後編>”
 2005年9月3日  作者:猛炎古代竜