今日の夜は北風が吹いて、とても寒かった。 その冷たい風でラーズの目は覚めた。ラーズは顔を左右に振り、リンクを見た。リンクの体は虫の繭みたいな物に包まれ、その繭の隣でリラは生き倒れのように寝ていた。ラーズはリラを起こさないように外に出た。東の地平線は少し赤く光っていた。夜明けだ!夜明け直前だ。涼しい風がラーズをなでるように吹いた。それと同時に殺気も感じた。なでるように吹いた風は、敵が近くにいるのを教えてくれたのかもしれない。ラーズは体を少しかがめて周りを見た。どこにもいる気配はない。ラーズは目を凝らして再び見た。
しかし、どこにもいない。
「っち、どこにも誰もいねーのに、何だっ!この感覚は。」
誰かがラーズの言葉に反応するように答えた。
「誰がいないって?」
後ろからその声は聞こえた。
「えっ?」
ラーズは後ろを向いた。そこには少年が立っていた。頭はぶかぶかの帽子をかぶり、赤色の半そでと黄色の短パンで、両手の手の平からは紫色の蛇の頭が出ていた。その少年はしゃべり始めた。
「我の名は、スネイクリースト(蛇を操る者)。リリア王女の命によりお前と
リンクを抹殺するもの。」
「その前に一つ聞かせろ。」
ラーズは言った。
「リリア王女ってだれのことだ?」
「イリシア姫のことだ。じゃあ行くぜ。」
その男の子は手を前に出して。
「毒牙の連撃(どくがのれんげき)。」
と、攻撃してきた。男の子が言うと、手のひらについている蛇の頭部が伸び、噛み付いてきた。ラーズは、そのくねくねした動きに避けられず左肩の少し下をかまれた。
「ぐっ・・・。」
ラーズの左肩から指の先まで、激痛が走ると腕が痺れ始めた。
「痛たたたたたた・・・・・、麻痺かよ!!!厄介なことになったぜ。
早く奴(スネイクリースト)を殺らないと・・・やばい!!」
ラーズは呟いた。ラーズは歯を食いしばり、痛みをこらえた。その後、すぐもう一匹、突っ込んできた。ラーズは右手で左肩に噛み付いている蛇を力ずくでむしりとり、右脇によけた。
「今からが反撃だ。」
ラーズは印を書くための血を出そうとしたが。手が挙がらなかった。この短い間に、もう蛇の毒は、ラーズの右手まで回っていたのだ。ラーズは自分をうつむせにして自分の舌を噛み、血を出して、素早く召喚印を書き始めた。
「印など書かせるか。」
とスネイクリーストは言い、二匹の蛇を伸ばしてきた。蛇はラーズのわきの下を二匹とも噛み付いた。ラーズは少しひるんだが、召喚印を書くのをやめなかった。書いている途中でかなり痛い腹痛に襲われ、目がぼやけてきて、
気がとても遠くなった。
「くそ・・・、こん・・な・所・・・・で、・・死ねるか・・・・よ・・・。」
そう言った後ラーズは気を失った。そこにスネイクリーストは歩み寄った。
「召喚者ラーズは手を封じれば勝てるという事はやはり本当だ。さすがリリア皇女。」
そう呟き、ナイフを引き出した。
「ラーズ、これでお前の命は終わりだ。」
スネイクリーストはラーズの心臓向けてナイフを振り落とした。胸に刺さるというところでスネイクリーストは後ろに吹っ飛ばされた。
「ぐわっ、誰だ?」
顔を上げて見たらそこにはリラがいた。リラは上に着ている青い絹を脱ぎ、金色のワンピース姿になった。スネイプリーストは飛び起きるとリラ目掛けて、
「この女(あま)。何しやがる。」
と怒りながら蛇を飛ばしてきた。リラは攻撃用の呪文を唱えて緑の炎をつくり、スネイクリースト目掛けて飛ばした。そのスピードはとても速かった。スネイクリーストは間一髪で避けたが、右腕と両手の蛇は焼け焦げて跡形もなくなった。
「やばい、あの女(あま)強すきだ。ずらかるしかない。」
とスネイクリーストは逃げていった。リラはラーズを抱くと魔法陣のところで繭に包まれているリンクの横に置いた。そして青色の粉が入ったビンを取り出し、中に入っている除毒薬{じょどくやく(毒消しの薬)}をラーズの口の中に流し込んだ。
To be continued.
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