- ゼルダの伝説 オリジナル小説 -
第三十七章 最初で最後の嘘 作者:すずらん(元クレア)

「うわっ!」
リンクとシドは壁に叩きつけられる。
「畜生…強い…!」
ティラガルアは竜巻をつくり、その中に隠れ…リンク達を引き寄せ巻き込む。その攻撃自体強い訳では無いのだが、何度もやられればダメージが増すのは同然。
対策を考える間に、また中に引き込まれてしまうのだ。
「リンク!こいつの弱点は…額の赤い宝石なんだろ!?」
剣を床に刺し、強風に耐えながらシドは叫ぶ。
「ああ…くそ、この竜巻が無くなれば……」
二人が強風に耐える間にも、ティラガルアは何度も翼をはばたかせ、竜巻を巨大にしてゆく。
ステンドグラスはもはや木っ端微塵に壊されていた。
『そうだ、魔法を使えばいいんだ!』
「リンク!頼む!何でもいいから渦を作る動きをしてくれ!」
突然の注文に、一瞬リンクの目が点になる。
「えええ???」
「回転するだけでもいい。そうだ、剣と体も回転してみてくれ!」
「な、なんで「いいから早く!!」」
言葉を紡ごうとするリンクだったが、シドの切羽詰まった叫びに剣を握り締めた。
「回転斬りは、リンクの十八番だもんネ!頑張って!!」
「よっしゃ…まかせろ!!」

「せぇやぁぁぁあぁ!!」 リンクは思い切り竜巻に向かって回転斬りを放つ。
その瞬間に、シドは剣を一振りした。
途端に、シドのまわりに竜巻の風よりも強い風が吹き荒れ、リンクの回転切りので発生した渦とまざる。
…なんと驚いたことに、ティラガルアの作った竜巻をはるかに上回る大きさの竜巻が出来た。
「な…まさか!?」
驚異の声を上げるティラガルア。
一瞬の出来事であった。
リンク達に作られた竜巻はティラガルアが作った竜巻を打ち消し…竜巻は二つとも消滅してしまったのだ。否、ティラガルアの姿が丸見えになる。
「だりゃあぁ!!」
呆気にとられた一瞬の隙をつく。
「なっ……!!」


宝石の砕ける音が、神殿内の静寂に響き渡った。


ティラガルアのいたところには、微かな霧が掛かっていた。
「やったな、シド」
「凄い!シド、魔法が使えたんダ!」
「びっくりしたよなぁ〜!まさか、竜巻を相殺させるなんて思わなかった!」
「ごめん、隠すつもりはなかったんだよ…;」
苦笑しながらも、シドはリンクに歩み寄る。
「リンク」
剣を鞘に戻し、右手を差し出す。
「…有難う」
リンクは握手に応じた。
「どういたしまして」
握手の後、リンクはふと里のことを思い出した。
「さ、早く里の奴らを探そう!」


突然シドの笑顔が曇った。
「…?どうした、シド」
「…………リンク……実は」
その時だった。
ヘレンの声が聞こえてきた。
そうか、シドはきっと…
―シド、あなたは星の賢者として…目覚めるのです―

やわらかい光に包まれたシドは光り輝き…賢者になった。
「リンク…里を救うのを助けてくれて有難う…けれど俺らの仲間は……皆いない……本当は俺以外、死んでしまったんだ…」
「そう…だったのか…!?」
リンクは胸が締まる思いだった。
心配するクレアに…真実を伝えられなかったんだ…
「さあ、リンク。星のオーブをもっていけ。クレアに話すかどうかは、君の判断に任せる。
残る賢者はあと一人。多分…カカリコ村にインパが隠れ住んでいる。彼女に聞けば、きっとすぐにわかるだろう…頑張って捜し出してくれ……最後に…もし」
シドの頬に一筋、涙が伝う。

「…もしクレアにその事を話すなら…嘘をついて…ごめんって…伝えてくれ…」
「…うん」
そう言い、彼は光と共に消えていった……
「…っリンク!クレアが心配だワ…里に早く!」
「!!そうだ、急ごう!!」

バシィッ!!
「うっ………!」
クレアは腹にダーククレアの魔法をまともに食らう。
いい潮時だった。
クレアの体中についた傷が、戦いの敗北を示すかのように、赤く滲む。
長い苦闘の末、魔力が尽きてきたのだ。
「なんだぁ…口ほどにもないわね」
膝からゆっくりと倒れゆくクレアを見つめながら、ダーククレアは笑った。
「アハハッ!楽しかった☆まぁ、別に魔法で戦ってなくても、あなたは負けてたわよ」
「…たいそうな自信…ね…」
つかつかと、歩み寄るダーククレア。
「なんでか教えてあげよっか?影になるとね、あなたの持病とかもわかっちゃうのよね〜♪」
「!!」
黄土色に輝くクレアの髪を無理矢理掴み、ダーククレアは賢者の石を空いた手で引っ張る。
「あっ…」
「ふふ……そろそろ薬が切れるんじゃない?」
赤い目を意地悪く光らせ、賢者の石を紐からちぎろうとした。
が。
「?!ぐぁぁああああ!!」
「…え?」
突然、彼女の影は悲鳴をあげる。
胸に、なにかがつき刺さっているように見える……
あの剣は……
「……マスター…ソー……」

「おのれ……時の勇者……!!」
ダーククレアは霧になり、消え去ってしまった…
「間一髪!…とと、クレア!大丈夫か!?」
「ケホッ……」
姿勢をある程度取り直したもの、苦しそうに咳き込み始めた。
「ゲホッゲホッ…ハァ…」
「!?く、クレア!」
背中をさすっては見るもの、落ち着く様子が無い。
顔色もかなり青くなっていった。
―…そうだワ!!―
「リンク、カカリコ村に行きましョ!!あそこなら医者もいるし、インパもいるワ!!ニコラ!」
「フルルッ!」
ニコラはナビィとリンクを気に入ってくれたようだ…
―早くのれ!―
と急かしているようだ。姿をペガサスに変えて。

咳が止まらないクレアをニコラに乗せ、すぐさまリンク達は飛び立った。
「…クレア、頑張れ…!」


第三十七章 最初で最後の嘘
 2005年10月10日  作者:すずらん(元クレア)