- ゼルダの伝説 オリジナル小説 -
第三十六章 不死鳥と影 作者:すずらん(元クレア)

リンクとシド、そしてナビィはニコラに乗り、天空の神殿へ向かう途中にこんな話をしていた。
「シド…さっきの様子からみてズバッと言わせてもらうけど…」
「なんだ?」
「ひょっとしてお前、クレアに惚れてる?」
「ばっ…///な、んな訳ねぇだろが!!///」
「あ、顔が赤くなってるヨ〜?そっか、片思いなのネ?」
「だ、だから違……っ///」
「シド〜お前意外とピュアな奴〜?」
「……突き落としてやろうか…?」
「フルルルルル!!」
突然のニコラの声で三人の会話が終わる。
「もう着いたか」
「ここが…天空の神殿…?」

ニコラから降り、足元の雲に足をつけるリンク達。
リンクが神殿に見えなかったのも無理はなかった。
この神殿はどの神殿よりも古ぼけていて、まるで廃墟のように見えていたからだ。
天空の神殿は壁が剥がれかけ、階段や柱も長年つかわれてないようで…所々に亀裂がはいっている。
中に続く扉は開いていて、神殿内は薄暗く、何やら不気味だった。
「リンク、シド…行こう」
「…うん」
三人は中に入っていった。

「わぁ……!」
思わず、リンクの口からため息が漏れる。
中は見た目と違い、たくさんの美しいステンドグラスのおかげで神殿内は意外に明るく、そして綺麗に見えたからだ。
「この神殿は遥か昔ハイラルに起きた事…歴史をステンドグラスにして残している所。全部がタース族特製なんだ。俺やクレアも、幼いときに作ったことがある」
「へぇ〜…」
よく見れば、緑衣をまとった…たぶん自分であろう…少年が青い剣をかかげているステンドグラスがある。
そのなかで、あるステンドグラスがリンクの興味をひいた。
「なぁ、シド!あのステンドグラスにいる黒い髪の女と三人の男…何を表しているんだ?」
「あれはたしか、今から400年前に…ヘレンに封じられた邪神と魔神だ。女が邪神で、三人の男が魔神だったような……;」
「魔神………!?」


『因業の魔神……』
リンクはガブリエルの言葉を思い出す…

その時だった。
「誰だ?わが巣に入る不届き者は……」
不意に、低い声が聞こえる。
リンク達が前をみると……巨大な鳥がいた。
「誰の巣だって?もともとは、俺たちの聖域だ。勝手に入ってきたのはあんたなんだから、[不届き者]はお前だ!」
「ほう…それも、一理あるな。まぁ、我輩にとっては七年前の話だが…」
巨大な鳥は、真っ赤に燃えそうな体をしている。
そんなとき、シドがいきなり小声でリンクに囁いた。
「気を付けろ、リンク。こいつは不死鳥…死を知らぬ鳥なんだ」
「死を…!?じゃあまさか…」
「何をほざいているのだ?まぁいい、自己紹介といこう。我が名はティラガルア。貴様等はタースの長に、時の勇者だな…?ふん、時の巫女はタースの里にいるのは知れているぞ……残念だが、やつはもう我らが手の内に落ちたも同然…」
「何だと!?」
リンクは叫ぶ。が、シドは驚いていた。
「リンク…まさか君が時の勇者なのか………!?」
「話は後だ!」
「ふはははは!…共に死んでゆく者同士、少しは仲良くしてくれよ…?」
ティラガルアがそう言った瞬間だった。
―ゴオン!―
「「「!!」」」
入り口が閉まり、鉄格子が扉に掛かる。
「どうやら逃げられないってやつみたいだな…!リンク、早くこいつを倒すぞ!クレアが心配だ!」
「わかってる!そのつもりだ!」
「ふはは!!面白い!だがな、人の心配するよりも、貴様等の身の心配をしたほうがいいぞ!倒されるのは貴様等の方だ!」
「リンク!シド!気を付けて!!いつもの造られた魔物だけど、何か違うの…!」
「わかった!」
そこまで言うと、ティラガルアはゆっくりと両翼を広げる………
「いざ、決闘なり!」
リンクとシドは剣に手を掛けた……

「♪〜…」
一方、里に残ったクレアは一人、フルートを奏でていた。
『二人とも、大丈夫かな…
って、あれ?』
ふと、何かがうごめいた気配がして、唇をフルートから離す。
その気配は、たしかなものだった。
「こんにちは、時の巫女さん♪ご機嫌いかがかしら?」
クレアの背後から、クレアの声が聞こえた。
ただ、邪気を感じる声だったが。
「…シャドウ…ふぅん、人を模写する魔物か…」
クレアが振り向くと…クレアが…だが、全身が真っ黒なクレアがいた。
「わぁ〜♪私の真の名前を知ってるだなんて!凄く光栄ね☆でも、この姿の時は…う〜ん…あなたクレアって名前だっけ…いいづらいけどさ、ダーククレアにしておいてくれない?シャドウばっかじゃ、ほら、飽きちゃうし」
「それより…あなたも私を捕えるのが目的?」
さり気なく、フルートを足元におく。
そして、着ていた上着を脱いだ。
「いいえ、違うわね…直接じゃかなわないもの☆でも、賢者の石さえ壊せば…あなたはもう私たちの手の内に落ちる…ってなわけ」
すると、ダーククレアも上着らしき物を脱いだ。
「そう簡単にはいかないけど?私だってプライドがあるんだから。自分自身には負ける気はないもん」
「なら…戦ってみましょ♪」
再び、二つの戦いの鐘は鳴った……


第三十六章 不死鳥と影
 2005年8月16日  作者:すずらん(元クレア)