そのころクレアは、風を切りながら下へ…下へとおりていった。
ニコラには魔力があるらしく、
どんなに高いところから飛び降りてもまったく無事だという力があると
アシェリーから聞いていたが…
「きゃっ!」
ニコラは無事着地した。
だが、その弾みでクレアが落馬してしまったのだ。
「いたたたた〜…いきなり運悪いなぁ…」
「だっ…誰!?」
その声の主はクレアと同い年のようにみえた。
栗色に赤みがかかった髪に、あかぬけたかわいい顔…。
「……平気?」
その子は疑いながらも、すぐさま乗っていた柵から飛び降り、クレアのもとへ近寄った。
「あたし、マロン!あなた…空からきたってことは…天使なの?」
そう、クレアはロンロン牧場に着地したのだ。
「ちがうよ!タース族っていうの。クレアって名前なんだ」
「タース族!?あの昔話にでる星の民?あなたが?」
なんの昔話かわからないがとりあえずクレアは頷いておいた。
どうやら敵意は向けてないようだ。
「わぁー☆クレアっ!あなたすごいのねっ!
タース族って地上には滅多におりないってかいてあるのに…」
「マロン…悪いんだけど…あの〜…」
クレアがいいおわらないうちにマロンが興奮しながら言った。
「ねぇっ!クレアあたしの部屋にとまって!てかとまるって決めた♪」
「え… いいの?」
いいたかったコトを先に言われ、戸惑うクレア。
「かまわないわ!その代わり、明日の朝タース族について色々教えてくれる?
その子馬も休ませてあげるからさ☆」
どうやら今日の宿は確保できた。
そして、マロンと言う友達ができそうだった。
「本当!?ありがとうね!助かるよ〜……でも…」
「?どうかしたの?」
「腰打っちゃったから歩けないんだ…助けて……」
クレアがそういいおわると、二人とも笑ってしまったのは言うまでもなかった。
『はぁ〜…。』
夕食をいただき、やっとベッドに寝ようとしたクレア。
だが、今になり不安と恐怖がたちこめたのだ。
『私、臆病なのに…人より優れてるわけでもないのに…。
なんで引き受けちゃったんだろ…!
もし私が二度とタースの里にかえれなかったらどうなるのかな…。
私…あの恐いやつに殺されちゃうかもしれない…!
…アシェリーさん…やっぱり無理だよ…!』
クレアの瞳から涙がこぼれる。
……――あなたしかできないことなの――……
……――運命を憎まないで――……
突然、アシェリーの言葉がクレアの頭のなかをよぎる…。
――そうだ、きっと私にしかできないんだ…。今の私に必要なのは、勇気だ――
そうクレアは思って、クレアは涙をふいた。
―臆病なら、臆病なりの勇気をだそう。それが私にできること―――
『そういえば、アシェリーさんは、私に青いフルートをくれたっけ…。
練習したことあるし、奏でてみようかな……』
クレアは一度外に出て、遥か高いところにあるはずの故郷をみつめ…
そっとフルートに唇を重ねた。
クレアの奏でるフルートの音色は聞いたことがないほど透き通り、
美しかった。まるで時の流れを奏でているかのように…
第九章
初めての出会い
2005年4月9日 作者:クレア
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