- ゼルダの伝説 オリジナル小説 -
第7章「天空の神殿」 作者:バッタ


昔から、空は人々にとって人跡未踏の領域だ。ある冒険者は大地の探検に飽き空を目指したが、生涯空の旅を満喫することはなかった。そして、彼の死も、自ら作成した気球という乗り物で空に旅立とうとし、途中で不運な嵐に巻き込まれて気球が墜落したのが原因だった。その後、幾名かの探検者が空という難攻不落の城に挑んだが、ほとんどが朽ち、命からがら戻った者も恐怖に憑かれ、人間の基本行動すらできない人間になり果てていた。どれも、地の上なら最高峰の探検家だったのだが…。
後に「空の要塞戦」と呼ばれたこの出来事は、人々の空への、いや、未知なるものへの憧れ・探求心を−どす黒く、畏怖という毒性の強い水分を含んだ−土で埋めてしまった。それから数十年たった今では土の毒性は薄れ、人々のそれは戻りつつあったが、それでも自ら「未知なる物」へ向かうのは極僅かだ。

リンクは驚愕した。顎、手、足は眼前に広がる光景に怖じ気づいて震えている。
「ハイラルが…、」彼は目を擦った。が、景色は変わらない。何度擦っても、強く擦っても。ならば、と言わんばかりに、彼はお決まりの方法を繰り出した。
「いてっ…。」頬に痛みが走り、少し赤くなった。これで夢ではないことがはっきりした訳だ…。後は学校で習った「妖魔の幻術」でないかを確かめるだけなのだが、彼はその方法を知らなかった。あの侵攻さえなければ、その翌日ならうはずだったのだ。しかし、謎の声が問に答えた。
「ここはあなたの夢の世界でもなければ、妖魔の幻術によって創り出された世界でもありません。御安心を。」
彼は振り返った。リンクの居る城の屋上に白衣の青年の姿。
「あなたは…。」
白衣の青年は、にっこりと微笑んで言った。
「私の名は白竜。ある神によって創られた、この天空の神殿を守る守護竜です。」彼はたっぷり息を吸い込んだ。そして続けた。「ようこそ、天空の神殿へ。」




第7章「天空の神殿」
 2006年5月3日  作者:バッタ