第10章 時のオカリナ 作者:アナザー |
ジャブジャブ様に巣くった”バリネード”を倒し、無事に3つの精霊石を手に入れた少年は、ゼルダの待つハイラル城を目指した。全てが順調に思えた。確かに、魔物との戦いやルトの告白など、幾度かの危機があった。だが、世界に大きな変化は見られず、無事に目的を達成できそうだった。自分が生きている間に、世界が終わるようなことは絶対にない。漠然とした日常感が漂っていた。どのような状況であっても、その状況に長く接する内に、それが日常化していく。日常化した状況は、安定したものであるように錯覚させる。コキリの森から冒険の旅にでた少年は、いつしか冒険こそが日常となっていた。だが、それは誤りだった。
雷鳴轟くハイラル城壁。かつて見た悪夢の風景が少年の目の前にあった。開く城門からインパの駆ける白馬が飛び去って行く。馬上のゼルダが少年を見つけ、何かを投げた。城門から現れた、真っ黒なゲルド馬に乗る”黒き姿”ガノンドロフが、少年を問い詰める。
ゼルダの行方を。剣を抜き、立ち向かう少年は、暗黒の魔力でたたき伏せられ、ガノンドロフは闇の彼方へと走り去った。少年は、今まで感じたことのない、暗黒の力に圧倒されてしまっていた。だが、少年は意識がもうろうとする頭で、今起きた出来事を整理した。
ナビィがゼルダ姫が何か投げた事を話し、少年はそれを急いで探した。それは城壁の前を流れる、川に落ちていた。ゼルダが投げたのは、ハイラル王家に伝わる秘宝”時のオカリナ”だった。残された時のオカリナは記憶していた。ゼルダのメッセージと”時の歌”を。残されたゼルダの言葉に従い、少年は”時の神殿”を目指した。時の神殿の奥は、分厚い扉で閉ざされていた。少年は、3つの精霊石と時の歌で、その分厚い扉を開くことができた。少年はこれから起きるこ
とが想像できず、不安と緊張が交じり合う。
だが、そこにはひとつの剣が、台座に収まっていた。時の神殿の天窓から一筋の光が、その剣を照らしていた。ナビィは、その剣の名を”マスターソード”と少年に伝えた。少年は光り輝くマスターソードを台座から引き抜いた。そして少年を待っていたのは、彼を時の彼方へ吹き飛ばす運命のいたずらだった。ゼルダの夢が、現実のものとなっていく。それが、光の中で少年が最後に考えたことだった。
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第10章 時のオカリナ
2005年9月3日 作者:アナザー |
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