第6章 岩石を食らうゴロン族 作者:アナザー |
カカリコ村から入ることのできるデスマウンテンの
登山道で、初めてゴロン族と出会った少年は、その大
きさに驚いた。城下町やカカリコ村で出会った大人達
よりは小さいかも知れないが、その立派な体格と呑気
な態度には、これまで出会ったことのない迫力があっ
た。ドドンゴ洞窟内に住むドドンゴの凶暴化とガノン
ドロフがその入り口を封じてしまったことを、そのゴ
ロンが語る。新たな戦いを予感しつつ向かった先にあ
るゴロンの里で、少年は衝撃を受けた。なんと、ゴロ
ン族は岩を食べるという。しかも、ドドンゴ洞窟で取
れる岩が、栄養満点で味もピカイチだとのこと。だ
が、少年が衝撃を受けたのは、その食性ではなく、彼
らの呑気さだった。食べ物が不足し、空腹に悩むはず
の彼らが、余りにも呑気に見えたのだった。
ゴロン族の大親分”ダルニア”は、里の奥にいた。 彼は、常にゴロン族全体のことを考え、広い視野で物 事を捉え、その結果必要ならばどのような危険にも身
を投じることをもためらわない男だった。ただし、そ れは安易に命を投げ出すような無責任なものではな い。大親分としての役目を果たすために、最善の方法
を考え出すことを常に忘れない。彼は王家の使いを待 たなければならなかった。だからこそ、一族を守るた めにもゴロンの里を離れるわけにはいかず、後先考え
ずにキングドドンゴに戦いを挑めなかった。もし、彼 が大親分でなければ、真っ先にドドンゴ洞窟へ向かっ ただろう。その熱い魂を抑え込むあまり、気分は沈
み、厳しい表情になってしまっていた。そこに、少年 が来た。だが、待ち望んだ王家の使いが余りにも弱々 しい子供だったことが彼の機嫌を損ねた。無理もな
い。自分で戦えば済むであろう戦いを、この場から離 れるわけにはいかないために、弱々しい少年に委ねな ければならないのだから。
少年は、ゴロンの里にある”バクダン花”に火をつ
け、迷いの森へ通ずる道を開き、森の奥へ向かった。
迷いの森の中で、スタルキッドに出会った。森で迷っ
た子供のなれの果て、という説明をナビィに受けた少
年は、今まで気づかなかった故郷の恐ろしい側面をか
いま見た。コキリにとっては遊び場に過ぎない場所
が、外部の者にとっては恐ろしい場所なのかもしれな
い。だが、森の聖域にいるサリアと出会うことで、そ
の恐ろしさは消え去り、懐かしさで一杯になった。サ
リアは神殿の前の切り株に座っていた。少年は、ゴロ
ンの里へ流れ聞こえていた”サリアの歌”を教えても
らい、コキリの森へ立ち寄ることなく、そのままゴロ
ンの里へ引き返した。未来に目を向ける彼にとって、
過去を懐かしむ間はなかった。そう自分に言い聞か
せ、仲間達に会いたいと思う気持ちを抑え、あえて振
り返らずに旅立った。美しい音色を手土産に。
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第6章 岩石を食らうゴロン族
2005年6月10日 作者:アナザー |
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