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「よみうり教育メール」相談コーナー抜粋集

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  「生まれつきの茶髪」が受験に影響しないか不安
教育相談
「生まれつきの茶髪」が受験に影響しないか不安

【相談】  香川県、女性

今年3月に高校受験を控えた娘を持つ母です。入試の面接での相談なのですが、娘が去年10月ごろ、担任の先生から「髪を黒く染めるかどうか親と相談してきなさい」と言われ、娘はその場で「染めません」と答えたそうです。娘は生まれつき髪の色が茶色く、親としては小さいころから見ているせいかほとんど気にならないのですが、同じ制服を着た同年代の中に入ると茶色いのが分かります。入学当時は友人や先生らに「染めてるの?」と聞かれたようですが、今ではみんな周知しているため尋ねる人はいません。

先生方には「髪が生まれつき茶色い事を内申書に書いて欲しい」とお願いしましたが、前例がなく記入欄もないと断られてしまい、「試験を受ける学校に前もって電話を入れて、話をしておきます」との事でした。娘が目指している高校は県下でも有数の公立進学校で、友人の子供さんが髪を茶色に染めて面接を受けたら落ちたという話を聞き、不安がぬぐえません。塾の先生にも相談しましたが、やはり、内申書に書いてもらうのが一番だといわれました。このような場合の対処法がありましたらご教示下さい。

【回答】
NPO法人フリースクール札幌自由が丘学園代表 亀貝 一義

一般に中学校の先生は、できるだけ生徒にとって不利にならないように(困ることのないように)考えますから「髪の色」も生まれつきであるということを可能な方法で受験校に伝えてくれると思います。

先日、北海道教委の「教育相談係」に聞きましたが、この時の見解も参考にしてお話ししましょう。担任が「染めたものではなく地毛である」と内申書(調査書)に記載することができないのなら(「内申書記載は前例がない」は理由にならないと思いますが)、内申書とは別に担任の先生がその意味のことを記した『添書』という形で希望先の高校の校長先生宛に提出してもらうがいいのではないでしょうか。「添書」は中学校からの指導説明資料のひとつです。だから「添書」と記されなくてもいいのです。(ただ内申書といっしょに提出する文書)。

内申書(調査書)は都道府県によって異なるのですが、だいたい中学校での成績(通知表の成績を基準にして)、出欠数、特別教育活動の記録、生活態度の評価、の4つが主なものです。北海道の場合これらを総合する項目として「総合所見及び指導上参考となる諸事項」という欄がありますので、この欄に子どもや親が非常に気になっていること(例えばあなたの疑問や希望など)について注記することができると思います。

そもそも生まれつきの髪の色で「不合格」というようなことは考えられません。もしそうなら重大な人権蹂躙(じゅうりん)です。だから生まれつきの髪の色を、入試のために「染めなさい」という教師はおかしいし、「染めません」という娘さんは立派です。

もしどうしても不安でしたら、県か近くの教育委員会の「教育相談」の担当者に連絡を取ってみたらどうでしょうか。

ただ、先生がどうしても内申書を含め文書で「地毛であり染めていない」ことを表現できないというなら、また面接時に「地毛であり染めていない」と強調しても疑われ、ひょっとしたら不合格が予想されるなら、そしてどうしてもそういう高校に入りたいのなら、先生のいうように黒く染めていくこともあり得るかも知れませんね。「人間の尊厳」をおさえて……。

回答者略歴  かめがい・かずよし
私立高教諭(社会科)を退職後、1990年から札幌自由が丘教育センター専従役員。不登校の児童、生徒のための居場所、学びの場所として93年11月にフリースクール「札幌自由が丘学園」を開設、運営にあたる。

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  地毛の茶髪を染めないため恩師の離任式参加を拒まれた娘
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よみうり教育メール
発行日:2006.05.12(vol.1411)
発行者:読売新聞社
http://www.yomiuri.co.jp/ ==================

=相談コーナー=

地毛の茶髪を染めないため恩師の離任式参加を拒まれた娘

【相談】
 先日、生まれつき髪の毛が茶色っぽい中学生の娘が、中学校の恩師の離任式に参加するため、学校に登校しました。ところが、髪の毛が茶色いという理由で学校に入れてもらえず、家に返されてしまいました。

 これまで、娘は学校の先生から再三、髪の毛を黒く染めるように指導されてきたのですが、地毛であるため黒色に染めることに対して抵抗してきました。しかし、卒業式の前に染めなければ卒業式に出さないと言われ、卒業式には、やむを得ず黒色に染めて参加しました。学校側は、なぜ黒色に染めなければならないかという明確な理由を全く説明していません。保護者に対しても学校から黒色に染めるように電話がありましたが、なぜ染めなければならないかという明確な説明もなく、黒に染めろという一点張りです。中学生や高校生に対しては、家庭や学校みんなが納得できるような指導を考え、しっかりした倫理感を持った大人になるように教育していくことが大切だと思います。今回の中学校の指導方法について、どのように思われるのか、お考えをお聞かせ下さい。
        ―――石川県、男性

【回答】
NPO法人フリースクール札幌自由が丘学園代表 亀貝 一義

 このメールを拝見し、「まだこういうことがなされているのか」と少々驚きました。私がかつて勤務していた女子高でも似たような「生活指導」が行われていました。私が高校を辞める一つの理由は、そういう“指導”がいやだったことでした。

 髪とか服装など、実に些末(さまつ)でどうでもいいことを、「服装(髪型その他も)の乱れは心の乱れ」などといって、あたかも本質的な問題のように生徒と親に対して“指導”することは情けないし、地毛をあえて染めなければならないなど常軌を逸しています。

 今、私はフリースクールで数十人の中高生たちと接していますが、それぞれが自分の好きな服装髪型をしていますし、全く不自然さは感じていません。

 北海道教育委員会に対して質問をしました。「どう考えても納得できない学校側からの教育措置があった場合、教育委員会としてその学校に対してどういう指導をするのか」と。指導主事は「保護者からよく聞かれるケースです」と前置きして「原則として、私たち教育行政の担当者は、それぞれの学校に対してこうしろああしろとは言えない。各学校が実態に合わせて(学校の判断で)対応するはず。ただ、『保護者とよく話し合ってください』とはいいます」と。

 かつて、私の生徒がカナダの高校に短期留学して帰ってからいうには「あちらの学校では髪やその他みんなちがっていて、日本では髪型を他の人と一緒にしないと先生に叱られることがあるといったら、笑われました」といっていました。日本の常識が国際的に見れば非常識だと思ったことも思い出しました。

 男子生徒が例えば「野戦服」などを着てきたり、女子生徒が例えば夜の仕事をする女性のような服装をしてくるような場合、「服装などのTPO(時、場所がら、場合)」を考える機会にできるわけです。そこから子どもたちの常識とか倫理感が形成されていくのだと思います。

 ぜひ娘さんに、現実の学校と教育の不合理さ、管理教育の行き着く所が、個性と自主的判断力を削いでいることを率直に語ってください。


回答者 かめがい・かずよし
私立高教諭(社会科)を退職後、1990年から札幌自由が丘教育センター専従役員。不登校の児童、生徒のための居場所、学びの場所として93年11月にフリースクール「札幌自由が丘学園」を開設、運営にあたる。専門は不登校、中退、進路指導など。

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  納得できない中学校の校則
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    よみうり教育メール
             発行日:2005.05.13(vol.1155)
             発行者:読売新聞社
http://www.yomiuri.co.jp/
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=相談コーナー=

納得できない中学校の校則

【相談】  福井県、女性
 娘の中学校は、親も納得できないような校則で子供たちを縛っている気がします。「制汗剤の使用禁止」「日焼け止めの使用禁止」などです。自分の子供は汗の臭いがきついため、学校に制汗剤を持って行かせていたのですが、担任に見付かって注意の電話が来たため、学年主任や担任と話し合いました。学級懇談の席でも、学校側に校則の見直しを申し出たところ、賛同してくれる保護者が多く、学校側ももう一度検討すると回答しました。

ところが、ある雨の日、「傘は透明のビニール傘じゃないと生活指導の先生がうるさい」と子供が言うのです。仕方なく薄いピンクのビニール傘を差して行ったのですが、ピンクだからと没収されてしまいました。学校側の意図が分かりません。このような問題に対して親はどのように対処すれば良いでしょうか。


【回答】  山田中学生問題研究所代表 山田 暁生

 今どきまだこんな事を指導している学校があるのかと、まず思いました。というのは、今から四半世紀近く前の1980年代前半、全国の中学校の多くが荒れていたころ、「教育的指導」の名の下に校則を細かく決め、大変なエネルギーを使って指導していたことがあったからです。その後、この指導の方向は教育的に間違っているのではないかということになり、文部省(現在の文部科学省)からも、生徒の自主性を伸ばすために校則を見直すべきだという通達が出されたくらいでした。

 教科の指導も言うに及ばず、他のことにおいても指導効果を上げるには、指導する側の「何のためにその事にエネルギーをつぎ込んで指導に当たるのか」という確たる考えと、指導を受ける側の「理解と納得」が必要です。その点から言えば、この学校の指導は労多くして効少ない、かなり的外れな指導に大事なエネルギーを注いでいるように思えてなりません。

 とは言え、現実にお子さんが通学しているわけですから、何とかしなければなりません。根気が要りますが、これまで通り、保護者会で疑問を投げかけて多くの保護者の意見を引き出したり、日ごろも、おかしいと思った時には指導の意図と教育的意義をただしていく姿勢を持ち続けてほしいと思います。「うるさい親だ」と思われるかもしれませんが、大勢いる教師の中には「親の言い分はもっともだ」と、まともに受け止めてくれる職員がいるはずです。沈黙は黙認と受け止められます。

 教育委員会に訴えるのが早道と、そちらに電話をしても「校内の生徒指導については先生と十分話し合って」と返ってくるでしょう。勇気を出して、仲間と話し合いながら、根気よく先生方と話し合う機会を持っていきましょう。PTA研修会で「みんなで考える校則」をテーマにPとTが話し合うことも一つの方法です。


回答者 やまだ・あきお
東京都内の公立中教師、NHKラジオの電話相談番組のアドバイザーなどを経験。父母と教師の相互理解、中学生の理解と指導などが専門。著書に「万策尽きたとあきらめずに」(山田中学生問題研究所)ほか。

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  茶髪児童への指導に悩み
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     よみうり教育メール
         発行日:2005.03.11(vol.1110)
         発行者:読売新聞社  http://www.yomiuri.co.jp/
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=相談コーナー=

茶髪児童への指導に悩み

【相談】  山形県、男性

 へき地の小学校で生徒指導を担当しています。最近、低学年女子児童の中に頭髪を金色に染めて来る子がいます。母親の勧めで染めたとのことで、満更でもない様子です。中学年男児にも数人いましたが、こちらは子供と担任が話し合い、改善されてきています。頭髪は体の一部で、子供の人権のこともあり、慎重に対処しなければならないことですが、親がこのようなことをまだ発達途上の子供に平気でしてくることに対し、どのように説得力のある指導をすればよいでしょうか。


【回答】  山田中学生問題研究所代表 山田 暁生

 「最近の親は、子供に注意すると逆に抗議してきたり、『うちにはうちのやり方があるのだからガタガタ言わないでほしい』と、こちらの指導を拒否してくるので本当にやりにくい」という先生が増えています。あなたも同じような悩みを持っているのでしょう。でも、悩んでいるだけでは指導が進みません。
 おっしゃるように、「頭髪は体の一部」で人権にかかわることでもあるので、それを教師といえども勝手に切ったり、色を染め直したりすることはできません。あくまでも、本人と保護者の理解にまでこぎ着ける説得の努力が必要です。
 でも、そこまでエネルギーを注ぎ込んで髪の色を黒くさせることが、教育にとって重要なことでしょうか。「親も子も、飽きれば変えるだろう」ぐらいに構えてはどうでしょうか。あなたもご存知のように、今は保護者会をすれば、ほとんどの親が茶髪の傾向にあります。生活に溶け込んだ風景なのです。先生方でも、茶系に染めている人を随分見かけます。
 ここまでくると、かたくなに「日本人の髪は黒でなくてはならない」と考え、「髪は黒いのが正常で、それ以外の色にすることは学校では異常」として指導を貫くことが、果たして大事な教育活動かと私は思います。マスコミを通じて、どこかで何かがはやりだしたというニュースが出ると、今は全国津々浦々まであっという間にはやりだす傾向が強まっています。「それはいかん!」と教師だけが火消しに躍起になっても、誰もが心から納得する主張でない限り、労多くして効少なしです。
 発達途上の子供に重大な影響があるとの判断でしたら、保護者と度々会ってその根拠を示し、繰り返しあなたの思いを誠実に示しながら、保護者が徐々に受け入れる心を待ってみませんか。説得力を発揮するには、1.説得される側に、受け入れる気持ちが多少なりともあること2.説得する側に、相手が納得する理(根拠や理由、正当性、日ごろの心の交流)がある話ができること。この二つの条件が必要です。


回答者 やまだ・あきお
東京都内の公立中教師、NHKラジオの電話相談番組のアドバイザーなどを経験。父母と教師の相互理解、中学生の理解と指導などが専門。著書に「万策尽きたとあきらめずに」(山田中学生問題研究所)ほか。

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   生まれつき茶色い髪
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         よみうり教育メール                  発行日:2004.03.02(vol.843)
                    発行者:読売新聞社     http://www.yomiuri.co.jp/ ============================================================================
=相談コーナー=

生まれつき茶色い髪

【相談】  小学校教員、女性

◆都内私立高校1年生のめいは、生まれつき髪質が弱く、茶色っぽい髪です。高校入学の際、両親が高校側に髪の色のことを説明し、「問題ない」と了解を得たので入学させました。ところが、担任の教師は「髪を黒く染めて来い」と再三指導するのです。学年主任にも立ち合っていただき、父親が担任に抗議しましたが、担任はその後も態度を改めません。めいは登校を嫌がりはじめましたが、不当な理由で転校はさせたくありません。


【回答】   教育評論家 尾木直樹

●これはひどい。とても見過ごされることではありません。問題が、2つあるように思います。第1は、髪の色の問題です。生まれつきの自然な色を認めないとは、差別であり、明白な人権侵害にあたります。人権尊重教育を進めるべき学校に、あるまじき対応といわなければなりません。第2は、学校の指導の問題です。学年主任などが了解しているにもかかわらず、担任がそれを無視する指導をするとは、尋常とは思えません。指導体制についても、学校に整理させない限り、全面解決は困難と思われます。

 まず、第1の人権侵害に関しては、話し合うだけではダメでしょう。彼女の髪をはっきりと認める旨の「念書」あるいは「確認書」を取り交わすべきです。教育の場にあっては悲しい限りですが、こうなっては、致し方ありません。めいごさんを守るためです。校長に申し出てはいかがでしょう。むろん、これが本意ではなく、やむを得ない対応である旨を丁寧に話されるといいでしょう。

 次に、第2の指導体制の問題です。この点についても、これまでの経緯を校長に率直に話し、校長から、今後このような混乱のないように約束してもらうことです。こうして少し様子を見てみましょう。

 東京都の「人権擁護委員会」にも、同時進行で相談されるといいと思います。同様のケースを多く扱っていますから、的確なアドバイスがいただけると思います。

 ところで、学校にこんなにひどい扱いをされたのでは、めいごさんの心が心配です。こんな時には、とりあえず、家族が味方に徹することです。同時に、1人でも友達を作り、この理不尽さを愚痴ることです。すぐに問題が解決に至らなくても、ストレスがたまらず、気持ちがめげることがありません。しんどいでしょうが、どうぞ動いてください。

回答者 おぎ・なおき
東京都内の公立中教諭、東京大教育学部講師などを経て、1994年4月から臨床教育研究所「虹」所長。教育臨床学が専門。「子どもの危機をどう見るか」(岩波新書)など著書多数。

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   身なり検査が厳しい中学校
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         よみうり教育メール                  発行日:2003.10.07(vol.753)
                    発行者:読売新聞社     http://www.yomiuri.co.jp/
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=相談コーナー=

身なり検査が厳しい中学校

【相談】  主婦(38)

◆今春から娘が通っている中学校には「身なり検査」というのがあり、髪形から服装まで細かく規則が決まっています。髪をゴムで縛ってはいけない、肌着は白のみ。かばんの中の持ち物検査まであり、誰もいない教室で先生がかばんを調べることもあると聞きました。生徒たちは一様に不快感を訴えています。人権侵害ではないのでしょうか。


【回答】  山田中学生問題研究所代表 山田暁生

●1980年代というと、もう四半世紀前になりますが、全国の中学校で校内暴力や校舎破壊、いじめなどあらゆる問題が起きて、学校の生活指導が大変な時期がありました。

そのころ、生徒の生活をきちんとさせることが最も大切だというので、頭髪の長さや形、服装などを「きちんとさせる」指導に力を入れ始めた学校がどっと増えました。学校で決めた服装以外は認めず、「違反者は校内に入れない」と細かい規則を作り、それに反した生徒を「問題生徒」として厳しく指導していきました。その後、それが行き過ぎ指導として是正された経緯があるのです。

教師が指導する場合に、常に念頭に置いておかなければならないことは、「学校は人を育てる場であり、子どもたちが希望を持って出かける場でなくてはならない」ということです。そこには当然、人権を大切にする教師の心構えがなくてはなりません。

果たして、娘さんが通う学校ではどんな「人育て」の目標を掲げているのでしょうか。子どもたちをどう育てようと教師は話し合ってきたのでしょうか。服装や髪形などの異常なまでの検査状況をうかがうと、おそらく「子どもたちも一人の人間として、人権はしっかり守られるべきだ」という認識が欠けているように思えてなりません。子どもたちが一様に不快感を訴えるほどの検査は尋常ではありません。

この問題は教師任せにせず、PTAでも話し合い、生徒・PTA合同で話し合いの場を持つなどして、一つの場で十分議論し合う必要があります。「教育委員会に訴えれば」と発想する保護者もいますが、それでは問題は解決せず、かえって話はこじれてしまうでしょう。疑問を抱いているのはあなただけではないはずです。ぜひ仲間に呼びかけ、こうした疑問点について議論や検討の場を持とうと働きかけて下さい。


回答者略歴  やまだ・あきお。
東京都内の公立中教師、NHKラジオの電話相談番組のアドバイザーなどを経験。父母と教師の相互理解、中学生の理解と指導などが専門。著書に「万策尽きたとあきらめずに」(山田中学生問題研究所)ほか。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/20/20031007wm01.htm
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  生徒の指導方法
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         よみうり教育メール                  発行日:2003.06.11(vol.669)
                    発行者:読売新聞社     http://www.yomiuri.co.jp/ ============================================================================
=相談コーナー=

生徒の指導方法

【相談】  山形県、高校教諭、男性

◆勤務している高校は服装や頭髪の指導にうるさく、頻繁に服装検査があります。保護者や教員の中にも茶髪が多い時代。個人的に「茶髪ぐらい」という気持ちが強く、生徒につじつまの合わないことを押しつけている気がして、厳しく指導することができません。こんな考え方は教員としてふさわしくないのでしょうか。


【回答】  教育評論家 尾木直樹

●なんとやわらかな感性で優しい心の持ち主でしょう。久々に「先生らしい先生」に出会ってうれしくなりました。

 それにしても、なんとつらい毎日でしょうか。学校側に立てば、生徒と無益な敵対関係にならざるを得ませんし、自分の教育理念や価値観を前面に出せば、「共通理解」「共同歩調」という美名のもと、「平等主義」を押しつけられて職員室での居心地が悪くなる。かといって黙っていると自己分裂しそうになり、教師そのものを続けていけるのだろうかとストレスがたまり、不安にもなります。

 現場の状況だけに振り回されず、考える視点や判断基準を、客観性の強い教育本来の視点にしっかり据え直してみることが大切だと思われます。茶髪に対するあなたの考えは、全く正しいと思います。まずご自分の考えや感じ方に自信を持つことです。

 髪の問題は服装と違って、身体の一部分に関することです。制服のように脱ぐことはできません。ですから、髪に対する強制は、他の校則と異なって明白な人権侵害に当たります。生徒指導の問題と絡めるべきではなく、即刻、単独で認めるべきことです。

 とはいっても、それがすんなり受け入れられるような職員室や地域の文化、あるいは企業、保護者ではないことも「現実」です。そこで、次の段階は、これらの周囲の人々にどのように人権尊重の感性を広げていくのかが課題になります。職員室の同僚にも、話せば必ず共感してくれる人がいるはずです。そこにしっかりとした足場を築きながら、最終的には生徒とこのような悩みをいかに共有できるのかが問題になります。

 歴史を振り返ると、時代の先駆者は常に異端児扱いを受けてきたものです。生徒と共感でき、信頼関係が築けていればいるほど、現実の圧力は強くなります。しかし今、焦りは禁物です。教師の中に共感を広げながら、生徒たちとも共感し合える関係を崩さないことが大切でしょう。時には、自分のつらさを吐露してもいいのではないでしょうか。

 少なくとも生徒が「心に制服」を着ないで学校生活を送れることを目指しましょう。生徒も、教員と正面からぶつかるのでなく、今日の学校文化の矛盾として、理性的に分かってくれるはずです。一気に解決できないのがもどかしいのですが、そういう状況そのものを理解し、乗り越えていく子どもの可能性を信じて下さい。

回答者 おぎ・なおき。
東京都内の公立中教諭、東京大教育学部講師などを経て、1994年4月から臨床教育研究所「虹」所長。教育臨床学が専門。「子どもの危機をどう見るか」(岩波新書)など著書多数。

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  「再登校」指導について
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         よみうり教育メール                  発行日:2003.05.05(vol.642)
                    発行者:読売新聞社     http://www.yomiuri.co.jp/ ============================================================================
=相談コーナー=

「再登校」指導について

【相談】  中学校教諭、男性

担任している中3男子は昨年、服装違反などを繰り返し、直してから「再登校」するよう何度も指導されました。新年度に入ってから、服装を正してきましたが、「髪の色がおかしい」と再登校を命じられました。しかし、前の担任も髪の色はおかしくないと言っており、私には生徒指導部が色眼鏡で見ているようでなりません。以前の写真と比較するなど客観的証拠で本人に納得させないと、授業を受ける権利を奪っていることになると思います。


【回答】  大阪学院大流通科学部助教授 加茂英司

再登校の必要性を相談者が感じていないなら、生徒指導部に自信を持って主張してください。担任の先生が誰より生徒のことを一番理解しているし、前の担任も同意しています。何よりも相談者の「客観的証拠を」という一貫した論旨に説得力があるので、ちゅうちょせずに主張してください。そのうえで生徒に授業を受けさせればいいと思います。

相談者がこの簡単な解決方法を採れない理由は、二つあると思います。

一つは、問題の生徒が本当に心を入れ替えたかどうか、相談者の心の奥に判断の迷いがあるからです。担任になったばかりで過去の経緯をよく知らないし、生徒の心が分からないことに相談者自身が不安になっているのです。

もう一つの点ですが、相談者が主張しにくい雰囲気が学校の中にあるのだろうと文面から感じました。生徒指導部と対立すると、学校内での相談者の立場が悪くなるという「組織の問題」でしょうか。それとも頻繁に顔を合わせる同僚と対立したくないという「個人の問題」でしょうか。

いずれにせよ、葛藤(かっとう)にかかわりたくないという姿勢が見え隠れします。この相談は、一見すると生徒の処分の問題に見えますが、実は相談者自身の仕事や生き方に対する問題なのです。

この生徒は、相談者自身にそんな大事なことを気付かせてくれているのです。生徒に授業を受けさせるためというよりも、相談者が一人前の教員になっていくために、勇気を持って生徒指導部に主張してください。生徒指導部も当面はこの生徒に多少の問題を感じても、熱心な担任が付いているのなら後の指導は任せてくれるでしょう。


回答者 かも・えいじ。
松下電器産業国際部門、神戸大非常勤講師などを経て、現職。社会人として大学院で学んだ経験を生かし、社会人の進学相談や留学相談も。マーケティングの研究に携わりながら教育、ボランティアなどについて執筆、講演活動に取り組む。主な著書に「社会人大学院入学・活用ガイド」(日本実業出版社)。
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   学校が、長女にひどい「ぬれぎぬ」
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         よみうり教育メール                  発行日:2001.02.05(vol.80)
                    発行者:読売新聞社   http://www.yomiuri.co.jp/ ============================================================================
【相談】  主婦(41)

◆長女は県立高校の1年生です。髪はもともと栗色で、「服装容疑」と言う検査で毎回 注意を受けています。入学当初、担任に相談したところ、小さいころの写真など地毛で あることがわかるよう文書につけて、持たせてくださいと言われました。4歳ごろの写 真をつけ、地毛であること、何か不明点があったら連絡をいただきたいと書いた届け出 用紙を持たせました。

3学期の検査で、髪が赤すぎるとまた注意され、再検査すると別室で4人の教師に囲 まれ、「日の当たる場所で根元から見るから」と、散々髪をいじくられました。その間 も「ちょっと赤すぎるわね」とか、「髪自体も薄いわよね」(これは本人が特に気にし ていることです)とか言い続けられたそうです。届出用紙を見せているのに。そして、 「今回はいいけど、これ以上悪くなったら、黒く染めてもらう」と言い渡されました。

これ以上悪くなったら、と言うのは、今現在悪いと決め付けられたことです。自然の ままの今の自分が悪いと言われた長女は、かなり傷ついています。

今時の子供で、髪が墨のように真っ黒な人が、いるのでしょうか? 日を当てて、赤 く反射しない人がいるのでしょうか? 我が家は全員栗毛です。二女はもっと赤いので す。

一番はっきりしない、教師の思い込みで、黒い赤いと決め付けられ、理不尽な言いが かりで傷ついた長女を見ていると怒りがこみあげます。自然のままの状態を、はっきり 規定を設けていないことで変えさせるというのは、黒く染めろと無理強いするのは、虐 待ではないのでしょうか。

 教師という地位をかさにきて、言葉の暴力で子供を傷つける児童虐待だと思う私が、 おかしいのでしょうか。


【回答】  私立大学講師 佐藤允彦

●まず、「服装容疑」という言葉に驚きます。最初から生徒を疑ってかかる学校の姿勢 が感じられます。なぜ「服装指導」といわないのでしょう。髪型と服装指導が中・高校 での生徒指導で一番問題の多いものの一つですが、とくに髪型は体の一部であり、人格 の象徴ともいえるもので、これを規制することは基本的人権にもかかわることで、規制 を正当化するだけの合理的根拠が必要です。

 茶髪、ピアス、異装などが非行化の前兆であるとして、強く指導する学校の心配は理 解できますが、生来栗毛色であることを写真まで添えて届けているにもかかわらず、染 めていると疑い、4人の教諭による「取調べ」をしたのは行き過ぎと感じます。なぜ、 1人の教諭による親身な対応ができないのでしょう。

 とりわけ高圧的な言葉遣いには、当事者でなくても反発を感じます。不登校になる生 徒が増えていますが、教師による心理的圧力もあると言われています。教師はもっと生 徒の心の内を理解するよう、教育相談の技法を学ぶべきです。

 もし、度重なる指導で染めていないのに染めていると疑われ、登校意欲がなくなった ら、だれの責任になるのでしょう。不登校にならないうちに問題の解決を図らねばなり ません。

 ご両親でことの次第を校長に伝え、善処するように申し入れすべきでしょう。その際、 学校と対決するという姿勢ではなく、学校の指導のあり方に疑問を感じるので説明を求 めるという態度に徹するのがよいでしょう。大切なのは、子どもが楽しく充実した学校 生活を過ごすことです。不合理な扱いを排除することは親として当然です。

 ある女子生徒が「おもしろくもない授業に耐えている代償として、茶髪くらい許して もいいのでは……」と言った言葉が印象的でした。学校は茶髪だけではなく、携帯電話 やアルバイトなどの問題を生徒・保護者と十分話し合う機会を持たねばなりません。

回答者 さとう・のぶひこ。
1936年生まれ。長野県出身。元東京都立高校校長。生 徒指導、進路指導、教育相談、学校経営などを専門としている。
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