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進路特集
私は明日の風になる その16 人を衝き動かす負の力

2002年度 53枚目 2003/1/31


前回は「10年後の私」と題して26歳の伝統職人と27歳のNGO職員の元気あふれる女性二人を紹介し、少しばかり自分の将来のことを想像してもらいました。

ただ、誰もが元気に明るくすこやかに生きていければ良いのでしょうが、なかなかそうはならないのが人生です。

誰かに対する恨みや怒りや屈辱感、自分に対する情けなさや苛立ちや自己嫌悪、ぐっと飲み込んだ痴、声にならない叫び、どこにも振り降ろしようのない、誰もいない部屋の片隅で吐くため息etc.

夢や希望や理想といったプラスのエネルギーを自分の人生の推進力にしていける人は幸せな人です。

その一方で怒りや悲しみと言ったマイナスのエネルギーをバネにし、あるいはそれを表現することで自分の存在を確かなものにしていく人の姿には、他の人が持ち得ない「感受性」と「凄み」を感じることがあります。

この前授業で少しだけ紹介した石川啄木も、そんな一人かもしれません
一度でも我に頭を下げさせし
人みな死ねと
いのりてしこと
あやまちて茶碗をこわし
物をこはす気持ちのよさを
今朝も思へる。
「一握の砂」より 「悲しき玩具」より

で、今回紹介するのは更に先の10年、20年後を「過去」を力に換えつつ生きている二人の女性です。

36歳の大道珠貴さんはこの冬の芥川賞を受賞した作家。その作品を「元気のでない小説」などと批評する人もいます。少女時代にはいじめられっ子で、学校では無表情だった大道さんは「過去に関してはうらみがある。でもそこからパワーをもらった」とおっしゃいます。

46歳の飯島京子さんは15歳だった息子さんを少年達による集団暴行(殺人)事件で失った母親。少年院に送られた加害者の少年達が本気で反省しないまま社会復帰している姿を見て、犯罪被害者の会「アピュイ」を作りました。飯島さんは「手には今も、息子の遺体の冷たさが残っている」といいます。

今回の切り抜きのキーワードは「マイナスのエネルギー」です。
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進路特集
私は明日の風になる その15  10年後の私

2002年度 55枚目 2002/01/28

「そろそろ将来のことを考えろ!」「将来に対して漠然とした不安がある…」などといいますが、いったい「将来」とはいつのことなのか?新明解国語辞典をひくと「将来=これから先〔の時〕」としか書いてありません。

そこで「未来」をひくと「1 〔何が起こるかは全く想像の域を出ない〕これから先の時  2 〔仏教で〕死んでから行くといわれる世界。来世」とあるので、どうやら将来というのは、「どうなっているのかなんとか想像できる程度のそれほど遠くない先の生きてる自分や社会」ということになるのでしょう。では、みんなは何年後までの「将来」を思い描けのでしょうか。


本当は誰もが「明日をも知れぬ身」で、今晩家に帰りつけるかどうかもわからないのです。でも、たいていの人は二度と桜の花吹雪に吹かれることはないなどと、本気で思っていないのです。それはみんなが死に対して鈍感だからなのではなく、生に対して貪欲だからなのでしょう。

  • 1年後の18歳の冬。たぶん全員京女の高3。ただ、このクラスの4分の3以上は進学先が決定していてバイトに明け暮れ、残りの人はいよいよ本番迎える受験生!
  • 2年後の19歳の冬。たぶんクラスの誰もこの高校のキャンパスにはいないでしょうが、女坂のそこにもここにも知った顔が…
  • 3年後の20歳の冬。短大生は卒業目前。晴れ着で彼と成人式出た人もいれば、その日も独りで予備校に通っている浪人生がいたり、バイトが本業になって大学中退した人がいたり…
  • 5年後の22歳の冬。大学進学した人の半数は就職先が決まっているものの、残りの人はフリーター?大学院への進学?結婚せずに子どもを産んだシングルマザーもいたりして…
  • 10年後の27歳の冬。ようやく仕事に慣れてきた人、転職3回パートしながら専門学校通ってますの人、幸せな主婦やってますの人、結婚離婚再婚で2人目がお腹にいますの人、今日本にいませんの人…
みんなも少しはわかってきたと思うけど、「学校」では誰もが等しく児童・生徒で、春が来ればみんないっしょに進級・進学するのがあたりまえでした。でも、そうした世界もそろそろ終りです。

10年後に、どこで何をしていたいのか?そんな「未来」のこと想像できません、か?

今日の朝日新聞「ひと」欄の切り抜きのキーワードは「思いもしない私の人生」です。
つづく
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進路特集
私は明日の風になる その14  自由を実現する力

2002年度 54枚目 2002/01/27

先週提出された「進路希望調査用紙」に記入された1組の人々の希望≠右のような一覧表にして見ました。

第一希望と第二希望を合計した表にしてありますので、人数は「のべ人数」になっています。

1組の希望が一番高かったのは京女大の「文学部初等教育(音楽専攻含む)学科」で2番目が京女大の「現代社会学部現代社会学科」、3番目は「家政学部児童科」ということですが、初等教育学科と児童科のどちらかを第一、一方を第二志望にしている人が目立ちました。

また、国公立大学の教育学部を希望している人も合わせると、1組の3分の1近くの人は教育系の勉強をしたり、それを生かした就職を考えているといえるかもしれません。

ただ、「持ってても使わない・使えない免許ベストテン」の中に教員や保育士の免許が入るっていうことは覚えておきましょう。


その次に目立つのは「英文学」を学ぶ希望を持つ人です。ただ、この場合「文学」を勉強したいのか「語学」を勉強したいのか、もっと言えば英語という「道具」を上手に扱えるようになりたいのかといったことをよく考えてみる必要があります。

何にせよ、この「夢を持ちにくい現代社会」でみんなに「希望」があるというのは貴重なことですし、すばらしいことです。それをどう育て実現していくのかが次の課題です。

ただ「自分の夢や希望だと思っているもの」が、実は「知らないうちに誰か(または世間)によってそう思い込まされているもの」なのかもしれないという疑問を、頭のどこかにおいて置きましょうか。

目先の損得や苦楽に惑わされず、常識の罠に陥らないよう自分をしっかり見つめることを忘れませんように。

第1+2大学

学部

学科

のべ人数

京女

家政

児童

8

京女

家政

食栄

5

京女

家政

生活造形

3

京女

現社

現社

11

京女

文学

英文

7

京女

文学

国文

1

京女

文学

史学

3

京女

文学

初教

12

京女

短期

食栄

1

京女

短期

生活

1

京女

短期

初教

2

関西大

社会

社会

2

関西学院

商学

1

関西学院

総合政策

1

関西学院

文学

心理

1

同志社

文学

英文

1

立命館

経営

1

立命館

社会

産業社会

1

立命館

文学

心理

1

立命館

文学

1

京都精華

人文

社会メディア

1

大阪音大

音楽

作曲

1

大阪芸術

音楽

音楽作成

1

龍谷

短期

社会福祉

1

早稲田

法学

1

慶応

商学

商学

1

青山学院

経済

経済

1

京都府立

人間環境

食物保健

1

京都教育

教育

情報造形

1

京都教育

教育

発達教育

1

北海道教育

教育

地域環境

1

金沢

教育

人間

1

のべ合計人数

76

ということで、今日の新聞記事の切り抜きのキーワードは「自由を実現する力」です。
つづく
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進路特集
私は明日の風になる その13  受験生に なる・する・させる

2002年度 53枚目 2003/1/16


今朝の仏参では宗教科の河野先生から「人の心の痛みに敏感であれ」というお話があり、その後校長先生による東京のステージで活躍したオーケストラ部の表彰があり、そして「みんなは受験生である」という宣告がなされました。

さて、今日進路指導科から配布された「進路志望調査用紙」に、みんなはどんな「志望」を書くのでしょうか?そして次の模擬試験(進研模試)の志望校記入欄には、どこを書くのでしょう。

昨日模擬試験の時間割や注意事項を配った時、数学の試験が120分もあるのをみて「数学なかったらいいのに」「わたし数学もういらへんのに……」といったタメイキにも似た声があちこち口々にもれていました。「自分の志望校をしっかり決めて、受験科目を調べるだけじゃなく過去問にも目を通し、何をどれだけやるべきかしっかり確認して受験に備えろ」という掛け声を日頃から聞いている身であれば、「授業は仕方ないにしても、受験科目じゃない数学を、なんでわざわざ模試で受けんなんの?」という思いが口を突いて出てくるのは自然でしょうね。

今回の模擬試験の事前準備シート「今回の模試をきっかけに『受験生』になろう!」を裏面に印刷しましたので、一通り目を通してみてください。
そのタイトルにもありますが、「クラス担任先生用 進研模試活用BOOK」には
  • 「2年1月総合学力記述模試の特長は受験生としての自覚を持たせる模試」
  • 「教科学力アップにつなげるとともに、『もうすぐ受験生である』という意識を高める」
  • 「自分の弱点を自覚させ……受験勉強のスタートのきっかけを作り……生徒を受験生に変える
といった言葉が飛び交っています。「受験生になる・する・させる」と言うのは、自分が今何をすべき(選択すべき)かを「受験でナンタラ大学ホニャララ学部に入学できるようにするにはどうしたらよいか」の一点を基準に考え「いる(必要)・いらん(不要)」を振り分けられるようになる・する・させることです。

受験生なのに何してるんや」「そんなことしてて受験生といえるんか」「受験生やったら当然やろ」という脅しのように感じられる励まし≠ェ、学校の中で飛び交うのも、みんなが人間である以前(あるいは以上?)に受験生であることが当然≠セと思われているからでしょう。そこでは「別に受験生にしてくれって誰も頼んでへんのにな」ってつぶやく事すらためらわれます。


では、ここで考えてみましょう。優秀で誠実で高校生≠ェ有能な受験生≠ノなって受験を制覇し栄冠を勝ち取り、そののち望みの大学を卒業した後、今度は何≠ノなるのでしょう?

会社の利益は自分の利益と信じ込み私生活を犠牲にして働く有能なサラリーマン≠ゥ、自分の夢や可能性を一旦どこかにしまい込んで家族のために尽くす貞淑な妻≠ゥ、あるいは飢えや戦乱や差別や弾圧に苦しむ人々に同情しつつ自分の生活を変えることはしたくない善良な市民≠ナしょうか。

自分が人間であることを忘れ、何かの役割≠セけを果たそうとした時に不幸が始まります。

「自分はどんな生き方がしたくて、何をどこで学びたいのか。」
「何を学ぶことでどんな力をつけていきたいのか。」
「自分は一人の人間として社会とどうかかわり、誰とともに生きるのか。」

そんなことを考えることは無駄で無益なこととして、ひたすら勉強(仕事)に打ち込める人から見たら、現国の『教科書』の中で「なにのぞむなくねがうなく/汚れっちまった悲しみは/倦怠のうちに死を夢む」「いたいたしくも怖気づき/汚れっちまった悲しみに/なすところもなく日は暮れる……」と歌う中原中也はアホな負け犬≠ナしかないでしょうね。

2003年の朝日新聞の『ひと』欄で、最初に登場した女性はタイの女性です。みんなも学ぶこと、働くこと、そして人とともに生きることの意味を考え、行動できる受験生になってみませんか?


今回の切り抜きのキーワードは「人として生きること」です。
つづく
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進路特集
私は明日の風になる その12 我が道を行く

2002年度 49枚目 2002/12/06

期末考査も残り一日となりましたが、2年1組は全員そろって受験できない日が続いています。自分の力を出し切り自分の力を試すチャンスを逃さざるを得ないのは、とっても辛く悲しいことです。

さて、先日の合同HRで日本史担当の八木先生が沖縄の歴史を語られたおり、「己の文化を知らぬ者」を厳しく批判され、琉球の武器を持たない接待文化を高く評価されました。

そこで、その話に刺激を受けた人は明日の「国語科講演会」にぜひ参加してください。すでにお知らせしてあるように、うちの学校から歩いて15分ほどにある花街宮川町の舞妓さん(15・17・19歳の三人)が学校に来て舞を見せてくれ、お茶屋組合の女将さん≠ェお話をしてくださいます。(宮川町 芸妓さんのページ

1200年の歴史を誇る日本の都、
洗練された京都の接待文化を守るみんなと同年代の少女の姿を間近に見、直接話をしてみる機会は、京都に住んでいてもめったにありません。彼女たちがどんな思いで舞妓さんになることを決意したのか、それを質問するだけでも値打ちがあると思います。

開演は1:10。マイカメラでの写真撮影可。「この学校だからこそ学べたこと」を記録に留めてみるだけでもいいかもしれません。

さて今回紹介する朝日新聞切り抜きはいつもの「ひと」欄と、もう一つは同じ日の夕刊の社会面の記事。

うちのクラスのことではありませんが、あれこれいろんな事を話をしてなかで「大学進学はしないと決めている」という人に何人か出合います。また、今年の三年生の中には警察への就職を決め、来春から昼間は警察学校(採用試験に合格してから入るのです)に通い、夜間は大学の二部で学ぶことを決めた人もいます。

みんな≠ェ大学に進学していく中で、自分の意思と親の応援をもらいながら、自分ありの道を歩んでいくのはとても勇気がいります。ましてやそれがメジャーな道でないときは、世間≠フ目ばかりを気にして自分の思いを何処かに置き去りにしてしまうこともあるでしょう。

メジャーな人たちは、マイナーなことをしたり言ったりする人をアウトサイダーと呼んで遠ざけたり、時にはドロップアウトした落ちこぼれとさげすんだり、あるいは我がまま勝手な変わり者として排除すらしようとします。

ポスターコンクールで最優秀賞をとった稲岡由衣さんが通う「京都芸術高校」は世間の評価≠ナはマイナーです。大阪の映画塾に飛び込んだ安福奈津子さんを無鉄砲で行き当たりばったりと笑う人もいるでしょう。

でも、僕は彼女たちの前向きな意欲と勇気と行動を心の底から応援したいと思います。

そこで今回紹介する朝日新聞切り抜きのキーワードは「我が道を行く」です。

つづく
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進路特集
私は明日の風になる その11  プランナー

2002年度 48枚目 2002/11/28

漱石の『こころ』を学んでいるみんなは工事用の足場に囲われた校舎を見て、「学校は格子の中の世界であることをシンボライズ(象徴的に表現)しているようだ」って思うことはないでしょうか。

さて、昨日の終礼後、西校舎の西側全面が赤紫がかったピンク色に塗り込められているのを確認≠オた人々から、「校舎全部がピンクになるなんて耐えられへん」「誰が色を決めたんですか」「色を変えられないんですか」etc.
と口々に批難・疑問・要望の声が噴出。

カーテンがピンクに替わった時も、教室や廊下の壁や本棚までスミレ色に塗られたときも、「気持ち悪い」「趣味悪い」「女子校じゃなくってラブホテル」と言う声が続出しましたが、今回の外壁塗装はその比ではないようです。

そこで、みんなの声に押されて昨日の職員会議で事務長さんに質問しました。


    Q.「校舎全部をあのピンク≠ノ塗るのですか?」

    A.「一部分を白抜きにしますが基本的に全部同じ色になります

で、学校の環境や学校がいつも気にする世間の目≠熹z慮して再考してほしいと強く要望しましたが……

特に、家族に京女の卒業生がいる家では、一度話題にしてみてはどうでしょう。従業員≠フ声よりお客様の方が「力」があると思います。


何かを選び決定するには、そのものの性質を見極め、それ求める人の心理を推理し、外からどう見えるのかを客観的に分析し、まわりとの調和に配慮する気配りが不可欠です。

いくら建物を作っても、人をひきつけるものがなければ誰も集まらないのは言うまでもありませんが、例え良いものがあってもそのパッケージがアレハチョットナンボナンデモでは買い手もつかないでしょう。

校舎の色を赤紫ピンクに決めた人は、スミレの花咲く宝塚≠ノ対抗するつもりではなく、多分「京女の建学の精神」と重ねられた生徒心得にある「温雅貞淑な女性≒知識や教養や品格が高くともおごりたかぶらない謙虚な女性」を象徴する藤の花の色に校舎を染めているんでしょう。(ちなみに校章だけでなく本願寺の紋も藤の花です)

やがて足場が解かれて出現する校舎が真っ赤な夕陽に照らし出された様子を思い浮かべ、「学校がつぶれた暁には『HOTEL アルハンブラ 京女』として開業し、東山の夜空に赤紫のネオンが輝くのかも」などと言ったら、また不謹慎だと叱られそうです。でも、「京女の評判を傷つけないよう服装≠ノ気をつけろ」というならば……


世の中には様々な才能を持った人や、新たな商品を作り出す人がいて、その作品や商品を求めて集まる人々もいます。その人々が集う場を作る仕事≠ヘとても魅力的な仕事です。

また、街には商品や情報があふれていて、何にどんな値打ちがあるのかわからなくなっている人も大勢います。そんな中で
本物を発掘できる人≠ェ求められています。

「人やモノの出会いの場を作る仕事をするために必要なことを学んでみよう」というような自分なりの目的意識≠もって日々の授業を受け、勉強してみるのも良いかもしれません。

そんなわけで、今回紹介する朝日新聞「ひと」欄のキーワードは「企画」です。
つづく
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進路特集
私は明日の風になる その10  三本の木

2002年度 47枚目 2002/11/26

期末考査一週間前だというのに、「やる気が出えへん!」「やる気はあるんやけど気が付いたら寝ててん……」
それでも何とか試験を乗り切っていくのでしょうし、これから先も何とか生きていければよいのでしょうが、何かを願って生きるなら、何かと力をつけねばなりません。

かつてお招きを受けて出席した二組の結婚式の披露宴で、同じスピーチを聞きました。

「これから始まるお二人の人生には幾多の困難が待ちうけていると思いますが、お二人でやる気・元気・根気≠フ三本の木をしっかり育てて幸せなご家庭を築いていってください。」

背筋も凍るオヤジギャグ的語路合せスピーチですが、ギャグの影には真実あり。この三本の木≠育てることの難しさは、そこで結ばれたペアが二組とも離婚したことで証明されています。

やる気も元気もあるけれど、何かに打ち込みやり続けるだけのねばりがなくって、いつでも中途半端に終る私は、お気楽そうに見えてはいても、内心とっても焦ってしまって、充実感も得られなくって、不安に駆られて辛いんです!
軒裏の雫ながめる雨宿り
どこも病気じゃないはずなのに、やる気も元気も出ないまま、やらなきゃならないことだけはとにかく続けてやってる私は、義務感ばかりが強すぎて、夢も希望もみえなくて、そんな自分が嫌なんです!
雨降りにそっと差し出す傘一本持ってる幸せに気付く嬉しさ

目に見える・見えない、生まれつき・大きくなるにつれて、誰かのせいで・自分のせいでetc.と分ければきりがありませんが、誰もが自分の内や外に何かしら障害≠抱えながら生きているのではないでしょうか。

それをどう自分で引き受け乗り越えていくのか、まわりがそれをどう理解しどう援助できるのかという問題の答えは、「励ましと愛情」だけで片付くほど簡単ではないかもしれません。



車椅子バスケットボール全日本チーム主将の高林美香さんは生まれつきの脊椎障害で両足が動きません。でもその障害は「眼鏡をかけるのと一緒。深刻に悩んだことはない」とのこと。

「NPO法人 大人のADD-ADHDの会」のホームページで「ずっと続いてきた失敗や計画の未完了からすっかり自身をなくし自尊心も傷つけてしまい、私はこの数年、ひどい鬱状態と人嫌いになっていました」と語る 「Society of Adult ADHD(注意欠陥・多動性障害) SOAA(ソア)」代表の白井由佳さんは、つらさを抜け出た後に 「自分を知り、やり方をみつければ『ダメ人間』から脱出できる」と語っていらっしゃいます。

そんなわけで、今回紹介する朝日新聞「ひと」欄のキーワードは「元気」です。
つづく
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進路特集
私は明日の風になる その9  大いなる力を信じる

2002年度 46枚目 2002/11/21


今日のHRの時間に行なわれた宗教講演会は、僕にとっては予想と違ったインパクトがありました。
一つは人の「成長」について、もう一つは「信仰」の力についてです。

15年ほど前まで京女の修学旅行は長崎を中心とした北九州だったのですが、20年ほど前の修学旅行の準備で、事前学習を兼ねた平和学習のために被爆体験を語ってくださる方を探そうということになりました。


その時、永井博士の娘であることを隠しておられた筒井茅野さんが八幡に住んでいることを知り、無理を承知で講演の願いをしたのです。

その時京女に来られた筒井茅野さんは40歳ぐらいでしたが、弱々しくて恥ずかしがり屋の女性が一所懸命に言葉を探しながら話していらっしゃるように見えました。それが、60歳になった今日の講演では、ずっとしなやかで力強く生きていらっしゃるように見えたのです。


ああ、いくつになっても成長していけるんだ」というのが僕の第一の感想でした。

今回永井博士の絵が紹介され、博士の奥さんに対する思いが語られました。その茅野さんのお母さんは敬虔なクリスチャンで、いつもロザリオを割烹着のポケットに入れ、ロザリオの珠を数えて神に祈りをささげていたという話が紹介されました。


※ その時、『こころ』(下20-P183)で、いつも手首に数珠を掛けていたが、その珠を日に何度も数えている姿が描かれていたことを思い出せたら、かなり『こころ』にはまっている証拠。


茅野さんのお母さんのロザリオは、故藤山一郎さんが1949年に歌って大ヒットした名曲『長崎の鐘』(サトウハチロー作詞、古関裕而作曲)の次の歌詞(2番)に登場します


          召されて妻は 天国へ 別れて一人 旅立ちぬ
          かたみに残る ロザリオの 鎖に白き 我が涙
          なぐさめ はげまし 長崎の あゝ 長崎の鐘が鳴る


この『長崎の鐘』は、茅野さんの父の永井隆博士が1949年に出版した被爆体験記「長崎の鐘」をもとに作られ、今も「平和への祈りの歌」として歌い継がれています。

自分以外は信じられない」と言う人は人間不信の可哀想な人のようですが、ひょっとするとまだ絶望や挫折に出合っていない幸せな人なのかもしれません。


悲惨な状況や大切なものを失った苦しみを、たった一人で乗り越えていくことは難しいことを知った人は、自分を支えてもらい自分が支えてあげられる仲間を求めると同時に、人間を超えた大いなる力の存在を信じようとします。

「私は何処から来て、これから何処へ行くのか。私は何者で何故ここに居るのか」は、居眠りしていては見つからないでしょう。

「進路とは何か」を今日の講演やの生き方や孤独や絶望や死から考えてみてはどうでしょう。


さて、今回紹介する朝日新聞「ひと」欄のキーワードは「宗教」です。
つづく
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進路特集
私は明日の風になる その8  造る道具と闘う武器

2002年度 45枚目 2002/11/20


「この前の実力テスト(進研模試)の結果はいつかえってくるの?」という質問があったので教務で確かめてみると、どうやら期末考査(12/3〜7)の最中のようです。あと何日かと思ってカレンダーを確かめると、テストまで2週間ないことに気がつきました。はたして『こころ』は終れるのか……

さて、みんなは何のために、誰のために学んでいるのでしょう?


「勉強は自分のため」と親も教師もよく言いますが、それだけのことなら「勉強しなくて損するのは私なんだからほっといてよ」という子どもの言い分もそのとおりと言うことになるのでしょうか?

鎖国が解かれた明治時代以降、夏目漱石を始め多くの知識人がヨーロッパへ留学に行きました。その多くは自分=「個人」の興味や利益のための勉強というだけではなく、みんな=「国家」建設のために勉強をしているのだと言う意識を持っていました。

近代的な国家を建設するための法律や制度を学び、世界の列強に負けぬよう産業を起こし強い軍隊を作るために科学を学び、西欧人にバカにされぬように文化・芸術も学び……近代的自我や個人の尊厳、自由と平等の精神も学びました。

しかし大日本帝国は、自由や人権は国家の発展にとって有害なものとして弾圧し、朝鮮や中国への侵略を経て第二次大戦へと突き進み、何100万人もの命とともに崩壊していったのです。



それから半世紀経った今、文部科学省を中心に教育基本法の見直しが進められていて、再び「愛国心」や「公共心」が盛んに強調されています。

そんな中で自分の勉強の意味を見つけるためのキーワードは「社会」かもしれません。

いくら知識を得ても、いくら技術を磨いても、いくら資格免許を取ったとしても、それを役立たせる場=自分の力を生かせる場がなければつまりません。

逆に自分が、どれだけ誰かの助けになりたい、何かの役に立ちたいと思っても、それができるだけの知識や技術や力を持っていなければ、願いはかなわず無力感にさいなまれます。

自分が足りないところを誰かに補ってもらいながら、自分の力を発揮することのできる人間関係=社会を造っていきたいものです。


そのために不条理や不正と闘い、その困難や障害を乗り越えていくために仲間どうし手を繋ぐ道具や武器がいる。その最も重要なものが言葉でしょう。

進学のためでも就職のためでもなく、生きるために言葉を磨いていきせんか?


今回紹介する朝日新聞「ひと」欄のキーワードは「ことば」です。
つづく
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進路特集
私は明日の風になる その7   たった一つ、だけどもうひとつ

2002年度 43枚目 2002/11/15

全員が来年の選択科目の調査用紙を提出しました。

誰に言われてしたのでもなく、最後まで迷って自分で決めたことだから、それを自分で大切に育ててください。

とはいうものの、「本当は違うのを選びたかったのに組み合わせの関係でそれしかなかった」「別にやりたいわけじゃないけど、受験のことを考えたら取らないとダメみたいだからとっただけ」という人もいるようです。

実際、今も含めて今までの高校3年生の演習や特講でも、「お前が選んだんとちゃうのか?!」といいたくなる(言ってしまった)ような授業態度の人も少なからずいました。

だからこそ、というわけではありませんが、ここらでもう一度「自分が勉強する意味」を考えなおしてみてはどうでしょう。本当は、友だちや親や教師など、身近にいる人と議論するのがいいのでしょうが、なかなか正面切って「勉強って何のため?」と話を切り出すチャンスを持てない人もいるでしょう。
そうした人にとって本≠ヘ大切な思考のパートナーとなるのではないでしょうか。

そこでお薦めの一冊が『10代の真ん中で』という岩波ジュニア新書。著者は村瀬学さんで1949年の京都生まれ。同志社大学文学部を卒業後、心身障害児の施設職員を経て、現在同志社女子大学生活科学部の教授をされています。
今年の1月に出たばかりの本なので、取り上げられている例もなじみやすいものばかりです。

10歳からの旅立ち-ドラえもんは門みたいだ、名探偵コナンにはまる
13歳「わからなさ」のはじまり-歌と旅人
「学ぶこと」との出会い-映画『バトルロワイヤル』は中学生が殺し合いをする映画なのか、「ガンダムの歴史」
家からの旅立ち-携帯文化の中で
「明日」があるさ-ひとり成人式へ向けて
といった目次の見出しを見たら、何となくどんな本か想像がつきませんか?
職員室においてありますので、興味がある人は手にとって見てください。(多分図書館にもあります)

でも読書はやっぱり苦手という人は、ぜひ明日の「先輩との懇談会」に参加しましょう。
出欠表を出していない人も参加OK、途中参加・早退もOKです。
クラブで忙しい人も、せめて1:30から50分間の講演だけでも聞いてみましょう。

講師の大島麻子さんは大学の社会学部を卒業後生協の職員をしたのち、どうしても人々の権利を守る仕事がしたくて弁護士を志し、司法試験に7回目のチャレンジで合格した経歴の持ち主です。

人生はたった一度きり、選択できることは一度に一つ。でも、一つのことをひたむきに求めていったその先には、新たな可能性が無数に広がっているっていう事を信じてみませんか?

今回紹介する朝日新聞の「ひと」のキーワードは「もう一つの人生」です。
つづく
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進路特集
私は明日の風になる その6   生と死

2002年度 42枚目 2002/11/14

科目選択の〆切りは明日なのにまだ調査書を出せていない人は、まだ迷っているから?あるいは提出する=決定してしまうことが怖いのか?それとも単なるルーズなのか?
明日持ってくるのを忘れた人は取りに返ってもらいます。

1. 今の自分を見つめて、将来の設計図を自分なりに描いてみること
2. 目標に到達するための地図を描いてみること


この二つが今回の科目選択の課題でした。二年後どこでどうしていたい?そのために何をどんだけするの?ということを確かめられた今から、意識的かつ自主的な勉強≠ェ始まるわけです。

でもね、そんなこと今さら言われなくても着々と努力を重ね結果を出していく人もいれば、期末考査まで3週間しかないと分かっていながら昨日の宿題もちゃんとやり切れていないみんなの笑顔を見ていると、なんだか切なくなります。

さて、今日の読書会は森鴎外の『山椒太夫』でした。きっと深い感動を受けた人もいたのだと思います。が、読書会≠ナ報告されてた発言を聞いていて淋しいものがありました。
と同時に引き裂かれることの痛みや取り残されて生きる苦しさを、身を切るように想像できなくって幸せだね、とも思いました。

ブッシュ大統領とアメリカ議会はイラク攻撃の準備を進めています。昨日の新聞にはイラクとの戦争では24兆円かかり、日本もその費用を分担することになるだろうと報じられていました。
24兆円あったら、地球上の飢えに苦しむ難民をどれだけ救うことができるか!

今朝のラジオのニュースでは、戦争が始まったらイラクの子どもや老人、女性、難民を中心に30万人以上の死者が出るかもしれないとのことです。
たった一人の命を救うことの難しさに対して、何万人の命を奪うことがいかにたやすいか!

「イスラム過激派のテロの対象になる地域や施設へ近付くことに対する警戒」をアメリカだけでなく日本政府も呼びかけているようです。そんな中、アフガニスタンに「軍艦」を送っている私たちは、日本の米軍基地の70%が集まっている沖縄へ修学旅行に行くのです。

みんなにはありますか?生と死の境界に足を踏み入れ、戦争≠ヘ誰が起こし、平和≠ニは自分が今なにをすることで守られるのかを確かめる覚悟が。
毎日の学校生活の中で、自分が戦争に荷担していく人間なのか、そうでないのかを知る覚悟が。
そうした選択も自分の進路です。

今日紹介する朝日新聞の「ひと」のキーワードは「沖縄で生き抜く」です。
つづく
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進路特集
私は明日の風になる その5  志と利と義

2002年度 41枚目 2002/11/13

科目選択の〆切り(明後日)がせまるにつれ、駆け込み相談に来る人が目立ってきました。その中で多かった質問は次の二つです。

@ 「演習」より「特講」を取った方が推薦に有利か

「京女大向けの演習といっても結局問題集が中心だし、中間や期末も結構難しいテストが出ると聞く。下手に演習を選択して2や3を増やすより、レポートを出すだけで4や5をもらえる特講を取った方が得なのではないか」という質問です。こうした迷いの多くは「先輩から聞いた話」によるもののようです。
ここで忘れてならないのは、例え同じように内部推薦を目標にし、同じ講座を取っていても、一人ひとり、授業を受ける姿勢も、将来に向けて身につけていきたい力も、人生観も違うということです。

A どの演習を取った方が大学進学に有利か

「選択科目は志望の進路に応じて選択する」という前提からすればすごく自然な質問のように聞こえます。
でも中には選択科目で取ろうと取るまいと、「受験に必要な科目は自分で勉強するしかない」という自覚に乏しい人もいます。

ここで忘れてならないのは、「先生に教えてもらわないと一人ではどうしようもないもの」と、「これまで教えてもらったことを自分で繰り返し覚え直したり、応用も含めて反復練習するしかないもの」とがあり、自分がそれらをいつどこでするかという問題です。

進路志望≠ニは「自分が進むことを志し、歩むことを望む路」です。いつどこにたどり着くのかという到達点=結果も気になるけれど、どこをどう歩んでいくのかという道のりそのものにこそ意味がある。誰であっても人生の最後に待ちうけているのは死≠ナす。死に方でその人の値打ちが決まると思っている人もいるでしょう。

しかし、未来の死ではなく現在の生に目を向けたい。自分が今、どんな志しを持ってどう生きようとするのか。それを誰とどう実現していこうとしているのかで自分の値打ちを測りたいと思いませんか?

誰かに僕の生きる姿勢を問われた時、論語に言う「義を見てせざるは勇なき」と答えることがあります。
自分の判断が揺らぎそうになった時、論語に言う「君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩(さと)る」という言葉を思い起こします。

「損得」にこだわることが常であればこそ、ここぞという時には自分が大切にしたいものを見失わないようにしたいものです。それが本当の意味で自分を大切にするということだと思います。

今日紹介する朝日新聞の「ひと」のキーワードは「志し」です。
つづく
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進路特集
私は明日の風になる その4  未来ではなく、今ある自分を見つける営み

2002年度 40枚目 2002/11/11

(前略)

進路を考えるというのは「当面の進学先や将来の職業のことを考えること」のように思いがちですが、本当は「今ある自分を真っ直ぐに見つめてみるということ」です。

昨日までの私にとらわれるべきではありません。

でも、今日の私が何をしているのかを抜きにして、明日の私は考えられません。

今回紹介する朝日新聞の「ひと」欄の切り抜きのキーワードは「自分を見つける」です。
つづく
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進路特集
私は明日の風になる その3  進路ではなく覚悟≠決めるとき

2002年度 39枚目 2002/11/07

1ヵ月後には修学旅行を迎えます。『修学旅行』と言う名にしては時期が早すぎるような気もしますが、高校3年生の授業は2学期いっぱいで終了するため、高校生活も残すところ14ヵ月です。その間に、多分このクラスの3分の2以上の人は、卒業後の進路が決定しているはずです。

さて、高3の科目選択〆切まで一週間となりましたが、こんなを聞いたことありませんか?

進路を決めたところでその通りになるとは限らへんし、決められへんからといってどっちみちこのままではいられへん。どうせなるようにしからならへんのやから、楽そうなんにしといたらええわ」

「自分が何にむいてるかよう分からへんし、やりたいことはいろいろあるけど『これにかけよっ!』て言うほどのもんでもないし、とりあえずはいれる大学はいって、そこで考えるしかないんちゃうの

「何か資格でも取れへんかったら大学出た意味ないし、別に特別興味があるわけでも勉強したいわけでもないけど、就職に有利かもしれへんしそこにしとく

「将来のことも自分なりに考えてるし、勉強せなあかんてこともわかってるんやけど時間ないし、宿題やるだけでも大変やし、それ以上はしんどいし、遊ばれへんのは嫌やし

いろいろあると思います。ただね、「科目」は一覧表から選択するものですが、「進路」は誰かに用意してもらったものの中から選ぶもんじゃないってことを覚えておいてほしい。

「進路を決める」って言うのは
自分の可能性を信じて夢を持つこと。
そして、夢を実現させるのに必要な努力を続ける覚悟を決めるということ。
誰かの支えをもらいながら、地を這う努力と飛ぶ勇気≠自分のものにしていきませんか?

さて、今回から朝日新聞の「ひと」欄に掲載された様々な女性の姿を切り抜いて紹介していきます。

今回紹介する二つの記事に共通するキーワードは親です。

工事現場と化している京女でも多くのトビ職人さんが働いていますが、17歳の女子高生がそうした世界に飛び込んでいこうとしています。

ブッシュ大統領はイラクを攻撃しようとしているのは石油がらみという人もいますが、日本に輸入される石油の4分の1を仕切っているのは40歳の女性です。

世間の目≠竍作られた常識≠ノとらわれている限り、自分は見つけられないっていうことを実感できるチャンスがあると良いですね。

今回紹介する「ひと」は次のお二人です。キーワードは「親」の意味を考えてみてください。
つづく
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