Top Pageへ戻る

2012年の修羅の行列



二日酔いどれ船


視神経に染み付いた琥珀は

チカチカ震える昼の星

筋繊維を浸す苦い酸味は

ギシギシ錆びたスプリング



瞬き擦れるごとに発火し

火照る体はドンヨリ爛れ

脳はジュクジュク茹で上がり

ネットリ滲む背中の脂



鈍痛 鈍痛 鈍痛

髄から痺れた電気信号は

のろまなモールス



積荷は鉛の置時計

どろりどろりと揺れ傾ぎ

二日酔いどれ船を漕ぐ


       2012年12月18日
もどる









































ひぃふぅみぃで  とおりゃんせ
   
          とおりゃんせ とおりゃんせ

          ここは何処の 細道じゃ



    ひとみひとりで どこへゆく

    ふさえふらふら ふねにのり

    みのりみはてぬ ゆめをみて

    ようこよりみち まわりみち



          とおりゃんせ とおりゃんせ

          ご縁をたどる 細道じゃ



    いづみいつかの いしだたみ

    むつこむかしの むねのうち

    ななみなみだの なみのまに

    やよいさまよう よいのまち



          とおりゃんせ とおりゃんせ

          覚悟のない者 通しゃせぬ



    ここはうきよの かよいみち

    このみふるふる はなふぶき

    とおくながるる ほうきぼし

    ともえゆみひく こいのまと



          いきて帰らぬ 迷い路

          迷いながらも とおりゃんせ

          とおりゃんせ



    2012年12月15日
もどる






















































ひぃふぅみぃのとぉりゃんせ

  とぉりゃんせとぉりゃんせ

  ここはどこのほそみちじゃ

  ごえんをたどるほそみちじゃ

ひとみひとりでどこへゆく

ふさえふらふらふねにのり

みのりみはてぬゆめをみて

ようこよりみちまわりみち

  とぉりゃんせとぉりゃんせ

  ちょっととおしてくだしゃんせ

  かくごのないものとおしゃせぬ

いづみいつかのいしだたみ

むつこむかしのむねのうち

ななみなみだのなみのまに

やよいさまようよいのまち

  とぉりゃんせとぉりゃんせ

  いきてかえらぬまよいみち

  まよいながらもとおりゃんせ

ここはうきよのかよいみち

このみふるふるはなふぶき

とおくながるるほうきぼし

ともえゆみひくこいのまと

  とぉりゃんせとぉりゃんせ

  こわいながらもとぉりゃんせ

  とぉりゃんせ



       2012年12月14日
もどる






















































自慢の鏡


鏡よ鏡よ鏡さん

今日も光っていておくれ

おまえがくすんでいた日には

あたしがきれいに映らない



鏡よ鏡よ鏡さん

あたしがおまえを磨くのは

おまえが可愛いからじゃない

愛しいあたしを映すため



アナタがきれいでいたいなら

アナタはワタシを磨かずに

アナタがアナタを磨いたら



おまえを磨いてばかりいて

固くこわばるあたしの手

指で髪すらとけなくなった


       2012年12月14日
もどる























































花はそうして咲く


させられているとしか思えないでしている人は

せずにすむ方法ばかりを探している

本当に探すべきは自分のしたいことのはずなのに



せねばならないことに追われてばかりいる人は

せずに済むことには目を向けようとしない

本当にすべきことがそこにあるかもしれないのに



したいことを夢中で追い駆けている人は

する理由など自らに問うことなどしない

我を忘れていても自分を失うことはない



天と地の熱と光と潤いの恵みを受けてその花は

咲く意味など知らぬまま

その花なりに花開きその花なりの実を付ける

青い青い空のもと

数限りなく惜しみなく花は命に恵みを与える


       2012年10月29日
もどる





























































こぼれた残骸


アタシがボロボロこぼした言葉は

ワラワラ四方に転がって

床に吸われてしぼんでいった

それはアナタに届かない



アタシはオロオロ言葉を拾い

まみれたほこりを払おうと

息吹きかけたら崩れて消えた

それはアナタに届かない



胸元で湧いて渦巻く何や彼やが

喉元に詰り奥歯に引っ掛かり

口元から漏れる切れ切れの言葉の残骸



込み上げたこぼれかけをすすっては呑み込み

呑み込んでは逆流する言葉にならない何や彼やに

アタシはえずき続けている


       2012年9月15日
もどる






















































鎮めるものは


あの人に分かってもらえぬ怒りを

そんな風にぶつけても

その人には伝わらない

怒りは新たな怒りを呼ぶだけ



あの人から受けた痛みを

そんな風に投げつけても

その痛みは和らがない

憎しみは憎しみを掻き立てるだけ



繋がらない寂しさ

受け止めてもらえない苛立ち

空回りに焼け焦げ引きつれた心臓



黄色くはしゃぐ笑い声の奥の

白けた無表情の裏の

沸き立つ闇を鎮められるものは誰だ


       2012年9月6日
もどる

























































呼び声



辛さの真ん中にいた私には

私を呑みこむ辛さのせいで

あの人の辛さが見えなかった

なんで私ばっかりって思ってばかりいた



辛さの真ん中にいた私には

私が受け止められなかった

あの人の優しさに気付けなかった

あんな冷たい奴信じられないって罵った



私は独りで空回り渇いてカラカラ空回り

怒りと恨みの熱い渦が私をキリキリ締め付けた

痛みに遠のく意識の底で誰かが私を呼んでいた



仄かな明かりに包まれて蜜の香りを嗅いだとき

あの人の辛さと優しさを知った

私の拙さとなすべきことを知った


       2012年6月9日
もどる



























































ねぇ、どっち?



ねぇパパ、トラとライオンとどっちが強い?

トラに決まってるさ、昨日の交流戦で阪神は六対一の大勝だぞ

ねぇママ、トラとライオンはどっちが強い?

トラとライオンは住んでるところが違うから闘わないのよ



ねぇママ、ブタ玉とねぎ焼きとどっちがおいしい?

このところキャベツが高いから、今夜はねぎ焼きにしようかしら

ねぇパパ、ブタ玉とねぎ焼きとどっちがおいしい?

そんなの人それぞれの「お好みです」なんてね、座布団一枚



ねぇパパ、国語と英語とどっちが大事?

アメリカ人にはどっちも同じさ

ねぇママ、国語と英語とどっちが大事?

英語が話せる人ってかっこよく見えるのよねえ



ねぇママ、掛け算と割り算とどっちが難しい?

ママ昔から数字が苦手なの、家計簿付けるの大っ嫌い

ねぇパパ、掛け算と割り算とどっちが難しい?

人生、賭けるのも割り切るのも難しいもんさ



ねぇパパ、子どもと大人とどっちが楽しい?

パパは永遠の少年さ

ねぇママ、子どもと大人とどっちがステキ?

夢のある子どもと思い出のある大人ならどっちもステキよ



ねぇママ、生きるのと死ぬのとどっちがつらい?

生きている辛さの中に死ぬ辛さがあるのよ

ねぇパパ、生きるのと死ぬのとどっちがつらい?

お前が元気でいてくれれば、それが一番さ



今日と明日とどっちが楽しい?ねぇ……

見えるものと見えないものとどっちが大切?ねぇ、ねぇ……

どっちかなぁ、おやすみなさい

どっちかなぁ……おやすみなさい


       2012年6月9日
もどる


























































花ガラ摘み



いつからだろう、そうなったのは  咲き初めの生の喜び

咲きかけるつぼみの一つ一つに明日を夢み

咲きそろう鉢の一輪一輪に語りかけ

漂う花の吐息を嗅ぐ喜びを知ったのは



いつからだろう、そうなったのは  散り際の死の切なさ

咲き誇る鉢の一輪一輪に心惹かれず

花ガラを一つ一つ摘む手触りに心奪われ

まだ摘めぬ花に意地悪く失望し始めたのは



花ガラ摘みは人の身勝手

摘まれるほどに花芽を付け続けた鉢も

時が来れば種を結べぬまま透けていく



花は未来の花のために咲いているのに

人は人が満ち足りるために

今日も花ガラを摘んでいる


       2012年6月5日
もどる




























































ちっちゃな独楽



僕らの銀河は秒速600qで宇宙を漂い

僕らの太陽系は秒速217qで銀河を巡り

僕らの地球は秒速30qで公転し

僕らは秒速500mで自転する地球に乗っかっている



僕らの銀河は250万光年隣にある

アンドロメダと惹き合っていて

40億年後にキスをして

60億年後に体を重ねる約束をしている



僕らは寝ても覚めてもおならをこいても

毎日宇宙を5000万qぶっ飛びながらクルクル回り

やがて一つの銀河に淡く溶け合うのだ



僕らの未来の伴侶はアンドロメダからこっちを眺め

自分中心にクルクル回ってぶつかり合ってる

僕らを慈しんでいるのだ


       2012年6月7日
もどる



























































同じ命のそれぞれが



僕らは何処に居ても

一人ぼっちにはなれないんだ

命を育む水と光と風に

今も助けられている



僕らは此処にいる限り

互いに僕であり君であり続ける

命の素の水と光と風に

僕らが還って行く日まで



生はしばしの出会い

同じ命のそれぞれとして

此処で共に交わる



死はしばしの別れ

同じ命のそれぞれが

其処で一つに溶け合う


       2012年4月21日
もどる


























































なまめく命


桜の木を眺めて思う

桜がこんなにもなまめかしいのは

微かに淡いピンクのせい

吹雪いて散り敷く舞のせい



桜の花を見つめると気づく

中心に屹立した一本の雌蕊(めしべ)

競うように取り巻き花粉を掲げ

伸びあがる数十本の雄蕊(おしべ)



一輪の花に激しい恋が宿り

一本の木に何万もの恋が群れ

噴き出す桜の命の営みに人は酔うのだ




       2012年4月14日
もどる


























































知りたくって



花曇りの空を見上げて溜め息ついた



この天(そら)は果てしなく広いのに

自分はこんなにも小っちゃくって

あの人の心の闇は底知れず深いのに

自分はほんの上っ面しか見られなくって

それでも何かが分かりかけた気がして

ときめいて

何にも分かっちゃいないことに気付いて

落ち込んで

それでもくじけず知ろうとし続けて



枝先で、バッカみたいって笑う君が眩(まぶ)しい


       2012年4月9日
もどる

































































熟させたいなら


未熟な実は青々として

艶やかな夢を秘めてはいても

青い実は固くて小さい

青い実は鳥も食わない



青く固い実の半ばは

ふくよかに色付く時を待たず

吹き荒れる風に払われ

降り止まぬ雨に腐れる



あるがままにあるものは

あるがままに生を受け

あるがままに死を受け入れる



君がその実を熟させたいなら

君はその実のあるものとなり

君の力を振り分けよ



その実が求めている分だけの

君の力を振り分けよ


       2012年3月10日
もどる


























































旅は道連れ


困ったあなたは困ったことを

困ったまんま投げ出す人

困ったあなたは困ったことを

アイツやコイツのせいにする



困ったことは困ったあなたを

困り者だと投げ出すこと

困ったことは困ったあなたを

助ける手立てが見つからないこと



困ったあなたの前に立ったら

困ったわたしにいつもなるけど

しらんぷりぷりしらんぷり

できるかな



困ったあなたを責めないで

困ったわたしを嘆かずに

重荷は分けて背負いましょ

ご同胞



       2012年3月09日
もどる


























































見えないけれどありがとう


愛の重みをもらったモノでしか

量れない人もいるものだから

チョコにバッグにワインにリング

いつでもわたしはあなたへの愛を

あなたにあげるモノで告げた



愛の深さをしてもらったコトでしか

測れない人もいるものだから

ハグしてキスしてシチューを煮込み

いつしかわたしはあなたへの愛を

してあげるコトで繋ぎはじめた



不安な愛は形をほしがるものだから

指に触れるモノがあれば

言葉以上のコトをすれば



くれなくたって逢えたらいい

してくれなくても居てくれたらいい

出会えたあなたにありがとう



不安な愛は形をほしがるものだけど

指に触れるモノはなくても

浮かぶ微笑み交わす眼差し

言葉以上のコトはなくても

静かに流れる二人の時間



出会えたあなたにありがとう



       2012年3月09日
もどる
























































哀しい輪っか


中学は高校への通過点

高校は大学への通過点

大学は就職への通過点

就職は結婚への通過点に過ぎなかった



家庭を持って子が産まれ

幼稚園に入れ学校に上げ

中学は高校への通過点

高校は大学への通過点と尻を叩く



通過中に恋をして

通過中に愛を育み

通過中に死を看取る



死も再生への通過点

巡るよ巡れ因果の迷路

回すよ回せ独楽鼠



       2012年2月28日
もどる



























































再生志


腐ったトマトは生ゴミだから

庭に穴掘り埋めましょう

忘れたころに気が付けば

小さな芽の出ることもある



湿ったココロは燃えないゴミ

春の光を浴びながら

大きく一つ深呼吸

風を通せばよみがえる



捨てたいものと捨てられないもの

捨ててはならない大切なもの

春の陽射しに透かせば見える



切れた絆は繋ぎ直して

古びた記憶は塗り替えて

(しぼ)んだ希望に息吹き込みましょう



       2012年2月24日
もどる





























































豊かの居場所


(つつ)ましさに宿る豊かさ

風にさやぐ若葉

月にきらめく波の穂

雨に湿る土の香り



欲に付き纏(まと)う貧しさ

闇に震える携帯

壁に垂れるポスター

夜明け前の生ゴミ



歩けば聞こえるシジュウカラの歌

立ち止まれば見つかるホトケノザ

寝そべれば知る大地の確かさ天の高さ



罵声は耳を突き抜ける

(ささや)きは胸に沁み入る

微笑みは六方を照らす



       2012年2月19日
もどる
































































マッチ一本分の愛


淋しいから恋しいの

それはわたしの我儘(わがまま)

(いと)しいから切ないの

それはあなたの重荷



寒いから温め合う

温め合って燃え上がる

燃えて白い灰になる

灰になったら冷たいの



マッチ一本擦るように

今日も一日生きました

マッチは一本減りました



灯す蝋燭(ろうそく)ないままに

今夜も一本擦るでしょう

マッチは一本減るでしょう



       2012年2月19日
もどる


































































此処にいるのに


頂に立って海を見つめるあなたは

海の深さを知らない

波間に揺られて山を眺めるわたしは

山の高さに溜め息を付く



あなたは何時も其処にいるのに

何処かに自分を探している

わたしは何時も此処にいながら

流れの渦に漂っている



何処にでも行ける人は此処にもいられる

何処かに行った人は何処にもいない

いるのは何時も此処だけだから



あなたもわたしも此処にいるのに

あなたはあなたを探してばかり

わたしはあなたを探してばかり



       2012年2月18日
もどる





























































翼はいらない


飛べない羽のペンギンを

カモメは空から見下(くだ)して

憐れな奴だと蔑(さげす)みました

あれでも鳥かと罵(ののし)りました



カモメがギャオギャオ喚(わめ)くのも

気にせず岩場のペンギンは

波の頃合い見つめては

飛び込む機会を計っていました



地上が思うにまかせぬように

空にも自由はありません

空では卵を産めません



ないものねだりは子供の夢

苦労を厭(いと)わず大事なものを

産んで守って育てていくのが大人の夢



       2012年2月11日
もどる






























































風の誘い


風が不意に柔らかさを帯び

張り詰めた空を微かに緩め

昨日まで凛と冴えていた山を

何気なく霞ませてさえいる



春はもうそこまで来てしまったのに

私はオロオロ行き惑うばかりで

進まぬ己を罰する訳にもいかず

何とも落ち着かないのだ



陽の明るさに眩む私の前で

菜の花は蕾を膨らませ

蜜蜂は細かく羽を振るわせる



ぼんやり佇む稜線と

さざめく川面の煌めきに

何とかするさと呟いてみる



       2012年2月5日
もどる































































静かなる動

― 片山ゑみ 作  「静」に寄せて

  君の慎(つつ)ましい口元から

  仄(ほの)かに漏れる甘い吐息(といき)

  昨日への別れにではなく

  明日咲く夢を想って



  君は柔らかな眼差しを

  遥かに霞む地平に注ぐ

  歩いた道程(みちのり)ではなく

  進むべき彼方を辿(たど)って



  また来る悲しみの過去を背に

  君はゆっくり片膝を立て

  命の重心を未来に掛ける



  すべての刹那(せつな)

  明るく微笑み

  深く静かに立ち上がる




       2012年2月4日 立春
もどる



























































千切れかけの世界


ギリギリと引き合う地殻の上で

キリキリと引き千切れ掛けた大気は

朝の風景を歪ませ

子供らの神経は敏感に反応する



張り詰めたトランポリンの空気に

跳びはねて騒ぐ子らがいる

怯えて蹲る子がいる

出口を求めてうろつく子がいる



三次元の空間から逃げ出す術を

持たない

追い詰められた不安



「口を閉じなさい」

「席に着きなさい」

鈍感な大人達が声を張り上げている



       2012年2月1日
もどる




























































金と共に去りぬ


掛け替えのない出会いで結ばれたのに

金で買える夢のために

仕事に疲れ家事に埋もれて

労わり合えない二人がいる



掛け替えのない出会いから産まれたのに

金を産む夢のために

出世に追われ世評に流され

慈しみ合えない家族がいる



金で量る夢のために

金が繋ぐ愛のために

命を削る私がいる



二人で居ても別々

みんなで居てもバラバラ

繋ぐはずのものが切っていく



       2012年2月1日
もどる


























































堅い物差し



なんで早く言わへんの?って

私はあなたを責めてしまった

言えない事情があなたにあって

言えなくしたのは私なのに



なんで同じ事ばっかり!って

私はあなたをまた責めた

できぬ弱さがあなたにあって

できる助けを私はせずに



アナタの握った物差しが

丸いアタシを四角く測る

まるまるアタシをピシリとはたく



あなたをしっかり抱き留めたいのに

邪魔をする私の物差しを

それでも私は手放せない



       2012年1月31日
もどる





























































涙の中の愛


(あふ)れた涙をスポイトで集めて

蛍光灯に透かしても

目薬見るのとどこも変わらず

悲しみなんかどこにも見えない



(こぼ)れた涙を蒸発皿に垂らして

ガスバーナーで炙(あぶ)っても

乾いた白い塩粒が

わずかに底にへばり付くだけ



NAMIDAの中にはAMIDAがおわし

AMIDAはAIを両手に抱く

涙の中に悲しみはない



涙の愛は誰への愛

可愛い自分が可哀そう

それとも愛(いと)しい人への愛おしさ



       2012年1月29日
もどる






























































切ないごまかし


ごまかしているのは

したこと

してないこと

あなたが知りたくないこと



ごまかすのは

逃げたいから

逃げられないから

あなたに逃げられたくないから



あなたが好きなのは

厚化粧できちんと服を着て

あなた好みに演ずる私



ごまかすことで助かるのは

ごまかされているあなた

救われないのが私



       2012年1月28日
もどる




























































鬼さんこちら


鬼ごっこで歓声をあげて

一目散に逃げた

だけど鬼は追って来なかった

鬼はあの子を追って行った



隠れん坊でとおの間に

息を凝らして隠れた

だけど鬼は見付けに来なかった

鬼はあの子を探しに行った



鬼は外、福は内

追われた鬼さんこっちにおいで

私は一人で待っている



目隠し鬼さん手の鳴る方へ

あなたの前に立っている

私を早く捕まえて



       2012年1月27日
もどる




























































暮らし向き


挨拶の一つも言えぬ人の

貧しさ



おはよう  も

いってきます  も

ただいま  も

いただきます  も

ごちそうさま  も

おやすみなさい  も



ないままに終わる一日の

哀しさ



ありがとう

ごめんなさい

ごくろうさま

おかげさまで

どういたしまして

ありがとう



素直に挨拶を交わせる人の

豊かさ



       2012年1月25日
もどる




























































ありがたや


朝日に向かって手を合わす人は幸いです

地球は45億年前から虚空に浮かんで

同じように憮然と回り続けていても

ここに立つ人が朝と出会えるとは限らなかったのですから



夕日を見つめて立ち尽くす人は幸いです

地球に70億人がへばりついて

同じように息をし屁をこいていても

誰もが静かな夜を迎えられたわけではなかったのですから



夜と昼との境界が

地球のどこかにいつもある

一つは光に一つは闇へと人を引き込んでいく



あたりまえの夜明けと夕暮れが

奇跡の生と必然の死に重なって

ありがたやうらめしやうらめしやありがたや



       2012年1月2日
もどる