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2005年の修羅の行列

また逢うためのさよなら



悪くもないのに「すみません」と反射的に答えてしまうこともあれば、

力で負けて「ごめんなさい」と不承不承に答えるときもある。

でも、悪いと思いつつ謝れないままの「ごめんね」がここにある。

迷惑掛けてごめんね。迷惑掛けてでなければ、ここに居られなかった。



何かをもらって「ありがとう」と言う礼儀もわきまえ、

助けてもらって「ありがとう」と答える謙虚さもある。

でも、ただそこに居てくれるだけのことに「ありがとう」とつぶやくのは難しい。

居てくれてありがとう。それでやっと僕も、ここに居られた。



昨夜「オヤスミ」と言って別れた人と、

今朝「オハヨウ」と挨拶した。

誰もそれを最後のサヨナラだと思わずに声を交わす。



でも、今日「さよなら」を言えないまま、二度と会うことのない人がいる。

それも一時のさよなら。

いつかどこかで僕は君と知らず、君は僕と知らずにめぐり逢う。



2005/03/16

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君と旅に



昔、このくにの言葉は

いろではじまる美しい言葉だった

色は匂いたつすべてのものの形

うつろう恋のはかなさ



今、このくにの言葉は

あいではじまる優しい言葉だ

愛は飢えたる魂の糧

頬に伝う涙の一筋



だが、そこにかすれて消えかかる言葉がある

冒険と夢

そして勇気



さあ、このくにの明日につながる言葉を

探す旅に出よう

裸の手と手を重ね合わせて



2005/03/12

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焼け棒杭の記憶


頭を叩かれ、脚は地にめり込み

背丈を揃えられ、腹を横木で留められ

身じろぎもできず一列に居並び

自由を奪った柵の杭



雨に脚が腐り、風に細った胴は浮き

ぶら下がるお荷物となり、くくる縄から外され

名もなく道端に打ち捨てられ

自由を手にした一本の棒



梃子として岩を起こし、杖として盲を導き

ぼきりと折れて焚き木となり

娘の凍えた手を暖めた焼け棒杭



断片を被う白い灰の静寂を娘の息が破り

裂目に一息あかあかと火が点り

娘の瞳に宿った灯りは瞼の闇に溶けてゆく



2005/03/03

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ありがとう


無視してくれてありがとう
 
それで私は自分と深く向き合うきっかけを得た



馬鹿にしてくれてありがとう

それで私は自分が何を大切にすべきか確信できた



傷つけてくれてありがとう

それで私は自分が思いのほか強いことを悟った



疲れさせてくれてありがとう

それで私は自分がここに居た意味が分かった



溜め息つかせてくれてありがとう

それで私は自分にもまだ執着するものがあることに気付いた



泣かしてくれてありがとう

それで私は自分の涙が涸れていないことを知った



皮肉じゃなくてありがとう

袖擦り合ったほころびを繕う春にさようなら



2005/02/28

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願いがあるから生きられる


君がどんなに愛にくるまれて

この世に生まれて来たにせよ

立って歩いていく先に

責任持つのは君自身。



それを知っていながらも

君が生きて行けるのは

時を過ぎ行く虚しさよりも

限りあればこそある掛け替えなさを

慈しみたいからなのでしょうか。



君がどんな道をたどろうと

誰とどんなに愛し合おうと

最後に必ず待っているのは

いとしい人との哀しい別れ。



それを知っていながらも

君が生きて行けるのは

裂かれる痛みと引き換えても良い

出会いの歓びが得られると

信じてみたいからなのでしょうか。



2005/02/18

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