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2004年の修羅の行列  挽歌集 T

生の不可解  死の不条理

三人称単数の死は、彼女の死。

訃報が掻き立てる、遠い記憶の香り。



二人称単数の死は、あなたの死。

意味を失った世界に昇る、灰色の太陽。



一人称単数の死は、私の死。

見つめられた私だけが知らぬ、冷たい静寂。


人間の死亡率もまた、カゲロウと同じ百%のはずなのに

私の死を怖れ、あなたの死を悲しむ生の不可解。



三人称複数の死は、彼らの死。

理想ではなく絶望が、死への怖れを痺れさせ

墓標代わりの正義の旗を、色とりどりに翻す。



二人称複数の死は、君たちの死。

くたびれて継ぎのあたった私が、身代わりになることなど

一つとして許さなかった、命のかたくなさ。



一人称複数の死は、私達の死。

二人一緒であればこそ、私達の死のはずなのに

あなた一人が死に連れ去られた瞬間、「私達」は消え去った。


失うものを失って、あなたの後を私が追おうと

それはもう、私の死でしかない死の不条理。



        2004.11.06
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さくら咲く日を夢にみて     最後の引越し

私の死んだその骨は

桜の根方に撒いといて

白いベッドの病室で

そう言い君は旅立った



静かに眠る地を求め

部屋にたたずむ白布の

白木の箱の白壷の

君の残した白い骨



君の悲しい思いつき

かなえることはできぬけど

花の名のつく霊苑に

小さなお墓を建てました



冷たい石の下に居て

寒くないかと気がかりで

桜の板で組み立てた

木箱に納めてあげました



静かに眠るその夢が

ふんわり楽しくなるように

桜の花のハンカチで

小箱を包んであげました



私や子どもの死んだ時

君とそろいになるように

桜の箱とハンカチを

四組作っておきました



散ることのない桜とて

いつかは土にかえるもの

幾千年の時を越え

やがて野に咲く花となれ



        2004.10.22
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不思議なハッピーバースデー       死んだ妻の誕生日

そんなにも白く

冷たい塊になってしまうんだったら

温かいうちに食べちゃえばよかった

アグアグアグアグかぶりつき



そんなにも白く

小さな骨になってしまうんだったら

柔らかなうちに食べちゃえばよかった

モゴモゴモゴモゴほおばって



今日は君にとってはじめての

年も取らなきゃ苦しみもない

不思議なハッピーバースデー



バラを供えた写真横目に

アップルタルトを丸ごと一つ

アグアグモゴモゴアグアグモゴモゴ



        2004.10.19
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挽歌     君は小さな骨になり

大丈夫

大丈夫だよと手を握り

途切れる息の君を見送る


        2004.07.03





つついても

ドライアイスに冷やされた

君の笑顔は変ることなし


        2004.07.04





叔父の持つ

箸がかき出す白き骨

はまる指輪に独りときめく

       2004.07.06





黙々と

妻の遺品を片付けて

片付けていた自分の荷物

       2004.08.01





コツコツとたたけば哀し

骨箱の硬さに知る

死の確かさを



       2004.09.23





君の骨収める箱を注文し

大仕事せし

安らかさ満つ


       2004.09.26





週末は花を買い来て飾る癖

少し身に付く

秋の夕暮れ

       2004.10.02





骨箱を包む

桜のハンカチをデパートで買う

不慣れ不似合い


       2004.10.17





シャリシャリと

君をかじって食べようか

お誕生日のケーキの代わりに


       2004.10.19





納骨を終えて帰れる寝室の

寒さ身に沁み

毛布引き出す


       2004.10.24


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