三人称単数の死は、彼女の死。
訃報が掻き立てる、遠い記憶の香り。
二人称単数の死は、あなたの死。
意味を失った世界に昇る、灰色の太陽。
一人称単数の死は、私の死。
見つめられた私だけが知らぬ、冷たい静寂。
人間の死亡率もまた、カゲロウと同じ百%のはずなのに
私の死を怖れ、あなたの死を悲しむ生の不可解。
三人称複数の死は、彼らの死。
理想ではなく絶望が、死への怖れを痺れさせ
墓標代わりの正義の旗を、色とりどりに翻す。
二人称複数の死は、君たちの死。
くたびれて継ぎのあたった私が、身代わりになることなど
一つとして許さなかった、命のかたくなさ。
一人称複数の死は、私達の死。
二人一緒であればこそ、私達の死のはずなのに
あなた一人が死に連れ去られた瞬間、「私達」は消え去った。
失うものを失って、あなたの後を私が追おうと
それはもう、私の死でしかない死の不条理。
2004.11.06
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