死の詩の部屋へもどる |
死にたまふ母 より六首 みちのくの母の命を一目見ん 一目みんとぞただにいそげる 死に近き母に添ひ寝のしんしんと 遠田(とほだ)のかはず天に聞こゆる 我が母よ死にたまひゆく我が母よ 我(わ)を生まし乳足(ちた)らひし母よ のど赤き玄鳥(つばくらめ)ふたつ屋梁(はり)にゐて 足乳根(たらちね)の母は死にたまふなり 星のゐる夜ぞらのもとに赤赤と ははそはの母は燃えゆきにけり どくだみも薊(あざみ)の花も焼けゐたり 人葬所(ひとはふりど)の天(あま)明けぬれば 「日本詩人全集10 斎藤茂吉/『赤光』」新潮社より ページのはじめに戻る |