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死の詩の部屋へもどる



    また来ん春……



また来ん春と人は云ふ

しかし私は辛いのだ

春が来たつて何になる

あの子が返つて来るぢやない



おもへば今年の五月には

おまへを抱いて動物園

象を見せても猫(にゃあ)といひ

鳥を見せても猫(にゃあ)だった



最後に見せた鹿だけは

角によつぽど惹かれてか

何とも云はず 眺めてた



ほんにおまへもあの時は

此の世の光のただ中に

立って眺めてゐたつけが……




  「日本詩人全集22 中原中也/『在りし日の歌』」新潮社より

  1936年11月長男文也二歳で急死。中也30歳。激しい衝撃を受け、中也は神経衰弱となり、常に強迫観念にとらわれるようになる。

同年12月次男愛雅誕生。翌1937年1月、中也は強度のノイローゼで精神病院に入院。

翌月退院するも、病状思わしくなく、10月22日急性脳膜炎で永眠。31歳。翌年1月、次男愛雅も死亡。



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