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314  教科指導・カリキュラム・学力
紹介記事目録
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記事紹介の留意事項








朝日
2003/05/03
No .N314a030503xxx





シリーズ・特集;  http://www.asahi.com/national/update/0503/005.html
見出し:
通知表に「愛国心」、広がる/11府県で評価項目に
メモ :
小学6年生の通知表の社会科の評価項目に「国」や「日本」を愛する心情を盛り込んでいる公立小学校が、全国で少なくとも11府県28市町の172校にのぼることが朝日新聞社の調べで分かった。2002年度から新学習指導要領が始まり、「国を愛する心情」の育成が教科の学年の目標の一つに加わった影響とみられる。子どもの学習を評価する尺度に「国を愛する心情」が入ることに、教育現場や保護者らから戸惑いや反発もでている。

朝日新聞社が2003年4月上旬から、都道府県や指定市の教育委員会、教職員組合などに取材して集計した。通知表の様式は原則として学校ごとに作るため、教委や教組が把握していないケースも多く、盛り込んでいる学校はより増える可能性がある。

通知表に盛り込んでいる学校があったのは、岩手、福島、埼玉、山梨、静岡、愛知、福井、京都、山口、福岡、長崎各府県の一部の市町。福岡が67校と多く、埼玉37校、愛知15校、福井、山口各11校などとなっている。

これらの学校では、日本の歴史や政治などへの「関心・意欲・態度」をみる小6社会科の評価項目の文中に、国や日本を愛する心情を「持つ」「持とうとする」といった言葉を挿入。「十分満足できる」「おおむね満足できる」「努力を要する」の3段階などで評価していた。

2002年度から始まった新学習指導要領では、小6社会科の目標の一つに「国を愛する心情を育てるようにする」の言葉が加わった。通知表の評価項目に盛り込むことまで求めていないが、学校のほとんどが要領の改訂に伴って通知表を作り替えたとみられる。旧指導要領では「我が国の歴史や伝統を大切にする心情を育てる」という言葉になっていた。

172校の半数以上は指導要領と同じ「国を愛する心情」を使用。「日本を愛する気持ち」「愛国心」と表現している学校もあった。

福岡市では、半数近い63校が昨年度から「国を愛する心情」を記載した。校長会が02年春にモデルを作成し、52校が採用し、ほかの11校は各学校の判断で盛り込んだ。

県弁護士会は今年2月、「思想・良心の自由を定めた憲法19条違反の恐れがある」として、市教委に削除の指導を求める人権救済の勧告書を出した。

静岡市では84校中、3校で採用。2校は「国を愛する心情」だったが、1校は「愛国心」の言葉を用い、「愛国心や世界の人々とともに生きていくことの大切さの自覚をもとうとする」と表現。「3重丸」「◎」「○」で判定していた。同校教頭は「要領の改訂を受け、深く考えずに入れてしまった。愛国心を基準に評価しているわけではないが、戦前を連想させ、今年度から変えるつもり」と話す。

福井県勝山市でも昨年度から、市内全9校で「日本を愛する気持ちと世界の人々と共存する自覚を持とうとする」と表記している。市教育研究会の分科会で原案を決め、教頭会で決定。通知表は教育委員会で印刷した。指導要領にある「国」を「日本」にした理由について、市教委は「児童や親などに意味が分かりやすいと考えた」という。

「愛国心」評価をめぐっては、文部科学省が01年4月、学校に保管する子どもの学習記録「指導要録」のモデル案について通知を出し、小6社会科の「関心・意欲・態度」を評価するときの観点の参考例に「国を愛する心情」を入れている。どう評価に反映するかは各学校に任されているが、通達をもとにした要録は昨年度から始まっている。

中央教育審議会の3月20日の教育基本法見直しの答申では「郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養(かんよう)」を、新たな理念として同法の前文か条文に規定するよう求めている。

■「国を愛する心情」などを通知表に使った小学校のある市町

              採用校  採用校のあった市町
岩手県  4 盛岡市、宮古市、一関市
福島県  8 いわき市、会津若松市
埼玉県 37 熊谷市、行田市、川里町、騎西町
山梨県  3 甲府市
静岡県  3 静岡市
愛知県 15 西枇杷島町、豊山町、師勝町、西春町、新川町
福井県 11 勝山市、坂井町、丸岡町
京都府 10 八幡市、京田辺市、宇治田原町、井手町
山口県 11 防府市、光市
福岡県 67 福岡市、柳川市
長崎県  3 諌早市
合計 172(11府県28市町)


<佐藤学・東京大学大学院教授(学校教育学)の話> 地域の広がりや採用校の多さに驚いている。愛国心や道徳心といった個人の内面を国家がコントロールする「心の管理社会」がまさに教育現場から始まりつつある。上からの強制ではなく、評価で子どもの心を操作していくのが巧妙な点だ。今後は教育基本法の改正で愛国心に法的根拠が与えられ、さらに統制が進む危険性がある。思想信条の自由や民主主義を根底から覆す問題なのに、多くの教師や市民が無感覚に受け流している。そんな時代のムードが恐ろしい。


<文部科学省・初等中等教育局教育課程課の話> 学習指導要領に定めた「国を愛する心情」はあくまで大枠の目標で、実際の指導や評価方法は各学校が特色を生かして研究し、実践されるものだ。通知表は、どんな文言を盛り込むかも含め学校長の自主的な判断で作成される。また、通知で示した指導要録の評価内容例はあくまで参考で、実際は各教育委員会や学校で定めるものである。


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朝日
2001/08/17
朝刊 2
No .N314a010817m2
ジュネーブ



国連人権小委員会
シリーズ・特集;
見出し:
慰安婦問題「歴史事実を教えて」/人権小委が決議採択/国連
メモ :
国連人権小委員会は2001年8月16日、性的奴隷問題について、教育課程で歴史の事実を正確に教え、人権侵害の再発を防ぐよう促す決議を採択した。
名指しは避けているが、審議の過程では、旧日本軍による従軍慰安婦問題が教科書でどう扱われているかが集中的に取り上げられており、日本の教科書問題を強く意識した内容になっている。
「新しい歴史教科書をつくる会」主導で編集された歴史・公民教科書について、韓国と朝鮮民主主義人民共和国の代表やNGOのメンバーは、従軍慰安婦問題などの記述が欠落しているのは「歴史の歪曲だ」と批判した。
日本政府は「記述している教科書もある。検閲制度のない日本では、教科書は執筆者の責任で作られており、教科書の記述と政府の立場は同じでない」と反論していた。

決議案は当初、「教科書」という文言を入れて正確な記述を求める内容だったが、同小委の日本人委員が難色を示し、「教育課程」という表現に変えるなどいくつかの修正を加えて採択された。

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朝日
2001/08/09
朝刊 1
No .N314a010809m1
愛媛県




シリーズ・特集;
見出し:
「つくる会」教科書/愛媛県教委も採択/公立で2例目/養護・ろう5校分
メモ :
愛媛県教委は2001年8月8日、愛媛県立の養護学校2校と1分校、ろう学校2校の計5校で「新しい歴史教科書をつくる会」主導でできた中学校の歴史教科書(扶桑社発行)を採用することを、全会一致(委員6人)で決定した。

同県教委によると採択したのは県内に13ある盲、ろう、養護の県立学校のうちの5校。そのうち松山ろう学校と第一養護学校は来年度の入学予定者がいないため、教科書を使うことになる生徒は3校計5人。

県教委になどによると、県教委障害児教育課などが7月末、対象になった学校の校長4人から聞き取り調査をしたところ、特に反対意見は出なかった。

土居教育委員長
「わが国の文化と伝統の特色を広い立場から考えさせ、わが国の歴史に対する愛情を深め、国民としての自覚を深めるという、学習指導要領の目標に最も添った教科書だと判断した」


関連記事 :同日朝日朝刊31面

見出し:「つくる会」教科書採択/愛媛県教組が猛反発/知事「見識を評価」

内容:
関係者によれば、採択について6人の教育委員が話し合ったのは7月2日の県教委の協議会と、この日の会議だけ。教科書以外の案件も含めて1時間半の議論をしたという。

愛媛県教職員組合の山本宏充書記長
「何としても公教育の場で採択するため、採択しやすいところを探したとしか思えない」

岡村茂・愛媛大学教育学部教授
「愛媛県は戦後、全国で初めて教職員の勤務評定を導入したり、靖国神社などへの玉ぐし料の公費支出を長年続けたりした政治的風土がある。今回の採択もその延長線上にある。この教科書で学ぶ生徒数が少ないということがあったにしても、問題性は薄まりはしない」


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朝日
2001/08/08
朝刊 29
No .N314a0010808m29
東京都
作家


東京都教育委員会/大江健三郎
シリーズ・特集;
見出し:
「つくる会」教科書採択/教育現場の声届かず/意見聴取なく「反対」、3000件越える/弱い部分狙う  むごい御都合主義/大江健三郎氏に聞く
メモ :
「新しい歴史教科書をつくる会」主導の扶桑社版の教科書が東京都立養護学校の一部で採択されることが、2001年8月7日の都教委で決った。
今回は事前に学校側から意向の聞き取りがなかったのが従来との大きな違い。採択を前に石原慎太郎都知事が教育委員会主体の判断を強く求めていた。

都教委は6人の委員で構成されている。このうち石原知事就任後に任命した委員は3人。教育委員人事は知事が都議会に提案し、了承される。
2人は石原知事が作った有識者による会議「東京の問題を考える懇談会」のメンバーで、1人は知事が就任した直後から約1年間、都総務局長を務めている。

今回の都教委の判断に、教師や保護者から「養護学校の現場を見ていない」と声があがる。従来は行っていた事前の学校側への聞き取りが省かれたためだ。

●健常な子にも記述難解
近藤原理・長崎純心大学客員教授(障害児教育)
「扶桑社版の歴史教科書の記述は、健常な中学生にも難解だ。そうした評価などから各地で採択されていないにもかかわらず、様々なハンディを持つ養護学校の生徒用に採択した東京都教委の判断は理解しがたい。
他国から問題視される教科書を選ぶのもおかしい。
強者、国家の視点が貫かれた教科書であり、戦争を容認するような記述もある。
戦時中障害者ら弱者は迫害された。戦争の教訓は「平和なくして福祉なし」だが、それを意識した採択とは思えない。

●弱い部分狙う  むごい御都合主義/大江健三郎氏に聞く
知的障害のある息子と歩んできた作家の大江健三郎氏は、次のように語った。

「つくる会」の教科書は、市販されベストセラーになりました。
「日本は優れている」「誇りと自信がいる」と思い詰める大人に空元気をつける癒し系の本だからでしょう。
子どものためによく考えられた本ではありません。

でも、教科書の実物をこれほど多くの大人が読んで、考えたことはない。
その結果、公立で採択したと公表した教育委員会はこれまで一つもなかった。
父親や母親の反省が、日本人の世論として、力を持ったのです。
東京都教委の結論は、これに真っ向から対立しています。

沖縄や広島、長崎でこの教科書が使われたら、教師は子どもらの話し合いが、歴史の真実を逆に照らし出すでしょう。

しかし、養護学校とは……。
私の息子は知的障害で養護学校に通いました。
身体の障害を持つ子どもにも健常児より困難な勉強の場なのです。

一人当たり、障害を持つ生徒に使われる税金は健常児より多い。
そこに付け込んで影響力を示す都知事は国際的な感覚からズレています。

検定を通った以上、どんな考え方の教科書にしろ、採用する公立学校が出るのは仕方がない。そこで教室での、教え方、学び方に工夫がいります。
養護学校に使わせるのは、抵抗の弱い相手への狙い撃ちです。
権力を持った者と、その意を体する者らの、勘定合わせにすぎません。
どこに障害者への教育的配慮がありますか?

東京都教委のやったことは、もっとも弱い部分に向けられた、むごい御都合主義です。


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   東京都教育委員会ホームページプレス資料「都立盲・ろう・養護学校(小・中学部)用教科書及び都立高等学校(都立盲・ろう・養護学校高等部を含む)用教科書の採択結果についてはこちらからどうぞ

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朝日
2001/08/04
夕刊 1
No .N3140010804e1
東京都




シリーズ・特集;  窓  論説委員室から
見出し:
なんで?
メモ :
「え、なんで?」つい口をついて出た。「つくる会」主導の歴史・公民教科書を、東京都教育委員会が都立養護学校の一部で使う方針を固めた。そんな記事を見た時だ。
この教科書の採択を公表した教委は、まだない。一般の中学校であまり採用されない教科書を、なぜ選ぶのか。
障害者や人権尊重の記述が多いというなら、わかる。
障害者への差別は依然厳しい。子どもも「ハンディを持つ自分が悪い」と後ずさりしがちだ。そんな彼らに生きる権利を意識させ、自信を持たせたい、と先生たちは言う。
だが、都教委がまとめた教科書調査研究資料では、逆である。

「つくる会」教科書は、歴史だと、人権を取り上げた個所が最も少ない。公民では自由・権利の記述が2番目に多いが、これは権利の制限に触れたところが多いからだ。
そうと知りながら選ぶ理由は何か。教委の教義は非公開だから余計わからない。

区立中学校の教科書は、区教委で選ぶ。石原晋太郎知事のおひざ元のと教委が自ら採択できるのは、都立の障害児の学校しかない。
知的障害と病弱の養護学校で使うというが、知的障害は重度の子が多く、障害の程度に合わせて別の教材を使う。

「とにかく採択できればよかったのでは?」「人数が少ないから文句が出ないと踏んだ?」。
関係者の間では、そんな推測さえ飛び交っている。
都教委は7日に正式決定するという。子どものことを考えた議論を期待する。


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