12月19日
四日市からスタートでは、潮岬へ行くと明日じゅうに西千葉に帰れなくなるおそれがある、と思い、潮岬は諦める。あらためてルートを検討する。伊賀上野まで行き、お城等を見て、それから奈良県内のひなびた国道をたらたら走り、志摩を見て、フェリーに乗り、浜松あたりで今日は泊まろう。そして明日は御前崎をまわって、のんびり帰ろう。というプランを立てた。ん〜、われながらgoodである。…ということで、四日市からまずは伊賀上野へ。寒い。途中の温度計で、「只今の気温:2度」という表示をみつけ、びびる。2度ってちょっとおい…。今朝出掛けるときに、合羽のオーバーパンツをはいてきて、正解であった。…ていうか、それをはいてても寒い。真冬モードの装備をしてこなかったことを後悔する。上野に到着する。上野市内でちょっと迷った後、上野公園へ。伊賀上野は、芭蕉の生誕の地であったり、歴史的にもなかなか興味深い場所であったりする。とりあえず、上野城を見る。城を見るのはけっこう好きだ。別に城フリークというわけではないが、行った先にお城があれば、だいたい見に行く。相変わらず寒い。ここは盆地だけあって、やはり冬は寒いらしい。城を見た後、昼飯でも食って、R422〜R165〜県道29あたりを南下して、さて楽しくなって来るぞ、と思ってヘルメットをかぶろうとした瞬間、事件は起こった。
カシャーン。
あ。
通常、ヘルメットをかぶる時には、ぼくのように眼鏡をかけているバイク乗りは、一度眼鏡を外し、ヘルメットを被った後、シールドから眼鏡をかける。ぼくの場合、タンクバッグという、タンクの上に固定するバッグの上に通常眼鏡を一旦置く。また、ヘルメットのあごひもをしめる関係で、ヘルメットをかぶってからグローブをはめる、という順番なので、タンクバッグの上にはグローブも置いてある。手がかじかんでいたせいで、眼鏡を置いた場所が悪かったのであろう、被ろうとした瞬間、眼鏡が落ちたのである。
予想通り、眼鏡は道路に落ちていた。しかもないことに、フレームの下端が両側とも、1cmほどなくなっている。さいわいレンズは両方とも無事である。かがみ込んでレンズ2枚とフレームを手に取り、フレームの残りの破片を探そうとする。その瞬間、
ぱりーん。
うげ。
寒くて手が上手く動かない、レンズを1枚落としてしまった。レンズは真っ二つ。「ネコ真っ二つ」なんていうギャグを飛ばしている場合ではない。これは大変なことになった。北海道へのロングツーリングの際には、大事をとって、古いほうの眼鏡(ちょっと度が弱い)も持っていったのであるが、今日は持ってきていない。これはピンチである。昆布君始まって以来の大ピンチである。とりあえず、無事なレンズと割れたレンズ、フレームとを回収し、近くの観光案内所へ。眼鏡屋の場所を訊く。徒歩5分くらいである、とのこと。しかし、裸眼のぼくは、歩くのがやっとである。眼鏡屋まで歩いていける自信はないが、仕方ないので云われたように歩く。上野市の裁判所前の交差点まで来て、このまま歩いても眼鏡屋までたどり着けるかどうかわからないことに気づいた。とりあえず信号を渡り、適当なお土産屋さんとおぼしき店に入り、事情を説明する。そこは、滅多に人が入ってこないようなお土産屋さんで、店員は、ぼくより若干年上と見られる女性一人である。…といっても、店の様子も、彼女の顔も、うすぼんやりとしか見えないので、果たしてどんなお店だったのか、どんな女性だったのか、全体像がわからない。近視眼的に(まったくその通りだが)、何が置いてあるのかはわかるのだが…。とりあえずその店員さんに事情を説明すると、眼鏡屋はこの近くにはないらしい。あれ、さっきの話と違うぞ。歩いて行くには少々遠い、とのこと。眼鏡屋さんに電話してみてくれたが、すると、ぼくのような強めの度のレンズは、取り寄せになってしまうとのこと。…伊賀上野でそう何日も過ごすわけには行かないので、とりあえず接着剤で修復を試みる。店員さんが、近くのお店まで行って、接着剤を買ってきて下さった。感謝感謝。眼鏡に比べれば、525円なんて安い安い。とりあえず接着し、落ち着くまで1時間半ほど待つ。その間に、近くに大きな郵便局があったので、お金をおろし、ほかほか弁当を食す。はぁぁ…。
店員さんとは色々な話をしたり、今後のルーティングを再検討。とりあえず、うまく眼鏡が補修できれば、このまま最速ルートで西千葉まで帰ってしまうことにする。無理っぽければ、仕方ない、伊賀上野で眼鏡を作るまでだ。そうなったら、あさって提出の課題は無理だな、すると単位をひとつ落とすな…などと考える。接着剤によりレンズはかなり汚くなってしまったが、なんとかなりそうである。但し、右側は、レンズが真ん中から真っ二つに割れているのを接着剤でくっつけているので、右目は正面がまったく見えない。また、割れ目の左右3mmくらいは、接着剤のために、非常に見づらい状態である。しかも、接着剤が白いため、見た目も非常に悪い。が、そんなことを云っている場合ではない。なんとか西千葉までもってくれれば…。
店員さんにお礼を言い、午後2時半、出発。午後5時40分鳥羽発のフェリーに乗り、伊良湖まで行き、浜松から東名で帰ることにする。とりあえず最速ルートということで、名阪国道から伊勢道へ。…この道路が、異様に流れが速い。名阪国道は、制限速度が60kmの筈であるが、そんなのお構いなしに流れている。しかも伊勢道も、クルマは少なく、かなり流れる。このままなら午後4時25分発の、予定より一つ早いフェリーに乗れるかも知れない、と思い、急ぐ。ぼくの愛車は本当に頑張ってくれた。ぼくが「行け」というと、「よし来た」と加速してくれるのである。はっきり言って危ない。なんてったってぼくは、右目のレンズは真っ二つ、80%は左目で見ているのだ。しかも、接着剤がまだ安定していないので、安易に眼鏡を拭くわけにはいかない。だから、高速道路のように、対向車を気にせず走れる場所のほうが数段楽である。それでも、首をちょっと右に向け、若干左を見る感じで正面を見ると大丈夫なので、特に緊張する場面、追い抜きや合流時には首をちょっと右に向ける。4時ジャスト、鳥羽のフェリーターミナル着。手続きをして、すぐに乗船。乗船してからの約1時間、ぼんやり過ごす。眼鏡の様子を見たり。うん、このままだとなんとか走行中に落下、なんてことはなさそうだ。伊良湖まではほんの1時間である。ぼんやりしているとすぐに着いてしまう。暗くなってきてしまい、神島も見られなかった。伊良湖から豊橋くらいまでは、同じフェリーに乗ってきたトラックの列のどまんなか、大変だった。しかもここは一般国道。少ないとはいえ、対向車がくるとちょっと緊張する。しかし、走っていて気づいたのであるが、このような見づらい眼鏡にとっては、むしろ夜間の方が楽である。昼間は、周囲からの光の影響で視界はかなり悪いのであるが、夜だと少しは楽である。まさか約24時間前に通った浜名バイパスを、再び通ることになるとは思っても見なかった。浜松市街でコンビニへ入り、休憩。貼るタイプの懐炉を買い、トイレでTシャツの上に貼る。おなかの部分に懐炉を貼るのは、けっこう効果的である。さて、これから一気に東名〜首都高〜東関道で西千葉である。体力的にはまだ大丈夫、心配なのは眼鏡と寒さ。SAごとに休憩し、身体をあたためる。流石にこの時期は、日曜の夜とはいえ、東名の東京付近も渋滞はしてなさそうである。足柄SAでは、温度計が0.0度を示しており、ぞっとする。寒い、寒い。海老名SAで最後の休憩をし、一気に西千葉へ。眼鏡のお陰で、目が疲れる。苦行のようなライディングである。首都高も、目立った渋滞もなく、スムース。午前0時ジャスト、西千葉に到着。風呂を沸かすもはいる気力はなく、途中で沸かすのをやめ、寝る。
本日の走行距離、540km。高速料金を沢山払った割には、行った先で楽しむ前に悲劇が起こった、そんなツーリングだった。でも、大型はやっぱり楽だね。