あるがままに・そのままに

—鬱陶しい亭主の場合—

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第768話 ネガティブを背負って生きる者

第768話 ネガティブを背負って生きる者
 
 実に人生とはくだらないものです。そう思いませんか?
 ……ごめんなさいね。のっけから投げた言い方で。人生は素晴らしいものだとお考えの諸兄には不快千万な表現かも知れません。でもね。人生はくだらない。すこぶるくだらないものだと。私はそう考えます。
 見えるものは目の前にあるものだけ。吸える空気はそこにある空気だけ。触れるものは手の届く範囲にあるものだけ。聞こえるものは聞こえてくるものだけ。味わえるものは口に入ってくるものだけ。なんでしょうね。この人生とは。実に不自由なことばかり。どうにもこうにもどうしようもないことばかり。受け取ることになっていることをただ受け取るしかないこの人生。そんなものにいったいどんな意味があるというのでしょうか。
 わかりますよ。流サレルンジャナイ! 努力ダ根性ダ! 頑張レ! モットモット我ヲ貫イテイケ! ってのは。そんなの百も承知。でもね。この身にやってくる未来はもうどうしようもなく決まり切った未来なのですよ。
 決まり切った未来がものすごい勢いでこの身にやってきてどうにもしようがないうちにどんどん過去になっていく。この強烈なスピード感といったらもう本当にどうしようもないわけですよ。こんな未来はゴメンだと泣こうが呪おうが音を上げようがどうにも介入できないのです。
 人生は思いどおりにならないから面白いとか。人生は一寸先が読めないからワクワクするとか。そういう言い回しを好む人がいらっしゃるようですが。余裕綽々でよろしゅうございますわな。思いどおりにならないものが本当に面白いのですかね。一寸先の暗黒に本当にワクワクできるのですかね。とても信じられません。正気じゃないと思いますよ。
 私はこの世に生まれたからしかたなく生きていますけど。でも私は生きるのにつくづく向いていないと感じます。私は実にネガティブです。ごめんなさいね。ネガティブでごめんなさい。でもね。ようやく最近わかったのですよ。私はネガティブを背負って生きる者なのだと。
 ネガティブこそわが我が人生。ネガティブに徹して生きていく。そして陰極まって陽となる。その転換のときが来るのを何をするでもなくただじっと狙い待つ--そんな感じで生きていくのがこの私であるのだと。
 ハッハッハ! いやーオイラは実に暗い暗い。暗くてたまらんよ。実にネガティブきわまりなくて面白いじゃないですか! ワクワクしますよ! ね! ……あれれ? うん。オイラもどうやら正気じゃないようです。
 
 

2015/08/26

ついでに一言
 
 受け取ることになっている未来を受け取るのです。ただそれだけです。
 


おまけにもう一言
 
 不自由きわまりないからこそそれができるわけでして。自由にやれたらおそらく糸が切れた凧でしょうね。