あるがままに・そのままに

—鬱陶しい亭主の場合—

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第766話 嫌われない勇気

第766話 嫌われない勇気
 
 先日のこと新幹線の車中で焼身自殺した人の報道がありました。もらっていた年金が月に14万円くらいでしたっけ? それじゃ食っていけないからと。その死に方の是非はおいておくとして。いろいろと考えさせられる事件ではあります。
 もしも。もしも独り暮らしではなく配偶者がいてその年金が月にあと6万円でもあれば。もしも。子供がいて気持ちばかりであっても生活を援助してやれていれば。何らかのほんの少しの支えが足されてあれば。あの人は油をかぶって我が身に火をつけるなんてことはしなかっただろうなと。
 生活費が云々ということが報道の正面に出ていたようですが。それはもちろん大きな要因だったのでしょうけれど。それに加えて身近に支えてくれる人がいないこと。老いた身を気にしてくれる人がいないこと。それがその人のこの世間で生きていこうとする気持ちを土台から掘り崩してしまったのだろうなと感じさせられました。
 孤立。人にとってこの二文字より怖いものはこの世にないのではないでしょうか。世間はうるさいとか放っておいてくれとか。世間で生きる煩わしさはあるにせよ。でも根本のところで人はおサルさんの近縁種。群れて生きるのが宿命の生き物ですからね。
 そして老後破産という言葉。皆様も聞いたことがありますよね? このごろの私はこの老後破産という言葉が身につまされておりまして。もしも。自分のことを気にしてくれる人が周囲にいない状態でたった一人で貧窮したら。これほどの恐怖は他にないでしょうよ。孤立と老後破産の合わせ技は老いた身と心にさぞや効くことでしょうね。
 そんなわけで。
 最近はアドラー心理学が流行っているようでありまして。「嫌われる勇気」なんて言葉を書店で目にします。『偽物語』の八九寺真宵(はちくじ・まよい)かよと思いますが。しかしなぜそんな勇気をわざわざ持つ必要があるのだろうかと。元来が偏屈で何をしても人に嫌われるタイプの私はそう思うのであります。私にとってはむしろ「嫌われない勇気」が老いては必要なのだよなと考えさせられた事件だったのであります。
 

2015/08/03

ついでに一言
 
 この人は市議会議員さんに相談していたようですからね。油をかぶる前に生活保護を受けるなりどうにかなりようがあったのではないのかとも思うのですが。
 


おまけにもう一言
 
 でもどうにもならなかった。人生はなるようにしかならないもの。人生は苦なり。