第624話 未熟な厭世家
第624話 未熟な厭世家
私は厭世的な人間でありまして。何か厄介なことがあるたびにこの世を忌々しく感じるのです。こんな世間は大便など食してくださればと。
とはいうものの。困ったことに私もこの世間に生きる社会人の端くれなんですよ。ですから厄介事をそれと知りつつ引き受けざるを得ない場面がしばしばあります。
しょうがねぇなあとウンザリしながらしょうがねぇことに目鼻を付けてお給料を頂戴しているのです。いくらこの世はアホらしいと感じてみたところでこの社会で生きる者のお約束は厳然としてあるのです。ですからこの社会に身を置く限りはツベコベ言っても詮無いことばかりであるわけでして。
そのようにアホらしいと感じつつもそのアホらしい社会の中で衣食住を得ているアホらしいこの身です。この身も含めてつくづく何もかもアホらしいのですからアホらしいと書くことさえアホらしいことなのです。アホらしいアホらしいと嘆いたところでこの自分自身がアホの一味なのですからいかんともできません。
私はこの忌々しい社会に対して部外者でも傍観者でもないのです。まさに渦中の当事者なのです。アホらしいと一方的に言うばかりではどうにもこうにも立つ瀬がないのです。
まあそんなことで。以前でしたらこの世はウンコだと一方的に断罪していたのですが。このごろは妙に物分りの良いオヤジになりつつありますな。
ではこの世を嫌いつつも物分りの良いオヤジになりつつある私にとって改めて厭世とはいかなることか。おそらく。厭世の極北においては否定と肯定とは同じものなのであろうと。観察者の立ち位置によって違う相を見せるかもしれませんが非であれ是であれ異なるものではなかろうと。それは即であり不異であろうと。そのような処に至ってようやく真に厭世家と呼べるのであろうと。
この世を忌々しいと断じて否定するばかりではまだまだですわな。厭世家かもしれませんがすこぶる未熟な厭世家ですわ。そんなふうに感じさせられる亭主なのであります。
ついでに一言
う! 牛丼屋さんのクーポンが期限切れになっているじゃないですか! とっても悔しいじゃないですか!
おまけにもう一言
なんてね。たかがクーポン1枚捨て置けずに悔しがるわけですよ。実に未練がましいアホな厭世家がいたもんだと。