あるがままに・そのままに

—鬱陶しい亭主の場合—

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第140話 無知は甘美

第140話 無知は甘美
 
 世界は虚妄であると以前書きました。前言撤回。どうやら世界は虚妄であると断言できるようなものではないと感じるこのごろです。
 世界はあるのでもなくないのでもない。実であるかと思えば実でもなく虚であるかと思えば虚でもない。そんなところでしょうか。何かしらがそこにあると感 じることはできるもののその何かしらが実は何なのかを確実に捕らえる能力もなければ確実に表現する能力も私にはない。そして何よりもまずいことに確証が確 証であることを確証することが私にはできません。
 そんな有様で何事かを断言して公言するのはおこがましいのかなと思っています。「世界は虚妄です(キッパリ!)」とか言っていたときが懐かしいです。無知は罪なのでしょうが無知は甘美なものでもあります。
 さて。近況報告をしておきます。
 「あるがまま・そのまま」の訓練を積むと「思い」が「思い」にコロッと入る体験をするとのことです。
 私にはまだ確たるそれはないのですがそれらしい瞬間がやってくることがあるようになりました。ほんの一瞬のことですが。自分の内側に沸きあがるあれやこ れやを冷ややかに見ている自分をさえあれやこれやの一つとして放り出す一瞬です。長続きはしません。ほんの一瞬にそれはやって来てすぐに去ります。
 今はほんの一瞬なのですがそれが常態となればまさに無敵であると思わざるを得ません。しかしそれが常態となることが果たして慶賀すべきことなのかどうか分かりません。
 「あるがまま・そのまま」の訓練は確かに効果があります。その効果は抜群です。しかし誰彼かまわずお勧めできるものではないのかもしれません。にっちも さっちも行かなくなって毒食らわば皿までとなってしまった人の最期の手段のような気もします。断言はできませんが。
 

2006/07/05

ついでに一言
 
 この先ひょっとすると前言撤回がゾロゾロ続くかもしれません。ご容赦ください。
 


おまけにもう一言
 
 あまり過去の文章を読み返したくないこのごろ。