私たちが小さな頃あそんだ、美しくそして楽しかった里山を後世に残したい。

山をきれいにし、山に住む生き物たちに住みやすい環境を提供、そして世界共通の問題であるCO2(二酸化炭素)の削減にも協力したい。

人間が作り出した2次的森林環境を維持し、豊かな里山やスギ林の生態系を守りたい。

そんなさまざまな思いと取り組みにより、次世代へ有用な森林を残す事ができます。

生物多様性の森づくり

* 森林生物の現状

田舎で育った私は子供の頃カブトムシやクワガタの採取地としてスギ林には入らなかった、大人になった今でもキノコ取りや山菜取りは広葉樹の森へ赴く。

スギ林の中は日中でも暗くジメジメした多様性の寂しい林のイメージがある。

わが国の森林の約40%に相当する約1,000万haはスギ・ヒノキ等の人工林(単純一斉林造林地)である。

これら人工造林地スギ林の生物多様性は、天然林に比べると劣るといわれる。スギ以外の木は少なく花もあまり見られず林床植生はシダが生えている程度ですが、その環境を一部改善することによりスギ林を立派な生物多様性の森にすることが出来ないのだろうか。

同様に、過去に山村住民との生活のかかわりの中で維持・管理されてきた里山林も人々の生活様式の変化により利用されなくなり、若い林から成熟した林へと徐々にその姿を変え明るい林を好む動植物が減少、一方でクマが暗い森を通り人里近くまで活動域を広げています。「生物多様性の保全や野生生物との共生」それも一つの課題となっています

*スギ林を生物多様性の森にすることができるのか?

手入れされたスギ林は林床が明るいので生物多様性があるのでは?

しかし一般的な管理(除伐・間伐・つる切等)を適切に行うだけでは生物多様性の大幅な増加は見込めないと思う。

なぜならスギ林は生物たちにとって単純すぎる場所と思えるからだ。生物達の間に「食う・食われる・利益を受ける・利益を与える」という相互ネットワークがなければ多様化は進まない。

スギ林で見られる野ネズミは森林管理から見て害獣と言われるが、森林生態系においては植生遷移や森林動物の繁殖にかかわる生物間相互作用系のキーストン種といわれる。しかし食物連鎖の頂点に立つ食う側の猛禽類等のすがたは見られない。この偏った生態系ピラミッドでは多様化は進まないと思う。

そのほか「表土が生態系をささえる」この観点からの問題だ。その点でスギ林の林床は広葉樹林に対して圧倒的に不利です。(一般的には、そのように言われてますが、田中淳夫さんの著書「森林の新常識」の中の「人工林と天然林の林床比較の考察」は興味ぶかく必読です。)

上記を基に考えるとスギ林に必要なのは一部の広葉樹のエリアだ。しかも近隣のスギ林と不連続な場合はコリドーで繋がってなければならない。

森林の新常識

*  地域レベルでの緑の回廊の提案

国有林野事業では原生的な天然林や貴重な野生動植物の生息・生育地等を保全・管理するため保護林を従来から設定しておりそれらを相互に連結して「緑の回廊」とし、野生動植物の移動経路を確保することで、より広範かつ効果的な森林生態系の保全を図ることとしています。

また都市公園や都会の街造りの中でも緑の回廊の考え方が増えてきています。

本来ならば民有林や里山もその趣旨に賛同しなければ意味が無い。なぜならば国有林のコリドーと都市部のコリドーの中間地点に在るのが民有林や里山のためコリドーが中間で寸断されてしまいます。

手入れが行き届かない人工造林地が増える中で、スギ林の一部を広葉樹林へ変える試みが出来ないかと思います。

野生動物の多様性の保全には移動経路を確保が大切です。隣の里山から向かいのスギ林へスギ林の中にスポットで広葉樹林が点在しているだけで、野生生物の相互交流を促すことが出来ます。

緑の回廊をつなぐ事に因り「分断された個体群の保全・個体群の遺伝的多様性の確保・生物多様性保全」などの効果があります。

*これからの森づくり

緑の回廊を実現する為には森林所有者の協力が必要です。所有山林の総面積の1%でも5%でも広葉樹の部分を造ってもらう。当然、行政の援助も必要でしょう。

従来の林業では、邪魔者とされた広葉樹を少し残すだけで、生物多様性の森に近づいてくれます。それによってスギ林も人間にとって必要な大切な自然へと変わるのではないでしょうか。