きつねの嫁どり 

 昔、まだ石川の谷に電灯のつかなかった頃のことです。遠く東京の空にはネオンが明るくとてもキレイにうつって見えることがありました。大和村に電灯が付いたのは大正六年のことでしたから、とても珍しくて「あれが東京だべ」と空を眺めたものでした。 

 その頃、「きつねの火が通るでみろやみろや」といわれて貯水池の方向を見ると、丘陵の尾根をポーッと赤い火がついたり消えたり、いくつもいくつも並んで動いていくことがあったそうです。まるで嫁どりの時のちょうちん行列が歩いてくるように見えるのです。そしてふっと消えてしまうというのです。こんな現象は村の人たちは「きつねの嫁どり」とか「きつねの行列」といっていました。山の尾根や原などによく見られました。 
 

          きつねの嫁入り
 
 むかし、新堀の土橋のところに「お伊勢山」という松山がありました。石塔が建っていたので、そう呼んでいたということです。
 このあたりには、きつねがたくさんいて、雨降りの夕方などには、ちょうちんの灯が点々とつき、行列を作って土橋の方に進んで行ったそうです。 
 「ああ、あれは、きつねの嫁入り行列だ。」 
しばらくしてフッと灯が消え、元の闇に戻るということです。