むかーし、瓜巣に五郎三郎(ごろうさぶろう)という家があったそうや。ある夜さり(夜)、見たこともないお婆さんが訪ねてきて、「えらいすまんけど、腹がへって腹がへってどもならん。何でもええで、食えるもんがあったら恵んでもらえまいか。」気の毒に思った五郎三郎のばば様が、おひつの底をさらえて残り飯を全部持たせたんやと。

 二、三日過ぎた夜さり、またそのお婆さんが、食べ物をもらいに来た。おかしいと思ったが、まあかわいそうやと思って、そこらにある物を持たしてやったんやと。そしたらまた、二、三日してやって来たので、こりゃおかしい。ただ者ではないぞと思ったが、その時も食べ物を持たせてやったんやと。

 そのあとで、「ありゃ化け物や。ここらに住んでおらん人が何度も来るはずがない。それも、こんな不便な家へ夜さり一人で来るなんて人間ではない。こんな化け物は退治した方がえからず(良い)。」家の者と相談して、トリカブトの根とサンショウの実をすりつぶして、練って団子の中へ入れて待ちこんどったら、ある夜さ、「たびたびでうたてえけど(申し訳ないが)、また飯をもらえんかな」といって、お婆さんがやって来たんや。知らん顔で、その毒入り団子をやると、お婆さんは喜んで、何度も礼をいって帰っていった。

 次の日、釜ヶ淵に化け物みたいなでっかい岩魚が浮いとると、人がさわいでおった。ばば様が行ってみると、なんと三尺のようもある(三尺以上もある)かと思われるでっかい岩魚が死んどるんや。みんなで引き上げて、腹を割いてみると、家でくれた団子がでてきた。

「かわいそうじゃ、ありゃまあ岩魚やったのかよ。そんならそうといってくれりゃえかったね。申し訳なかったな、悪かったな。堪忍してくろよ。そんねでこうなっては、(そんなに大きくなっては)釜ヶ淵のえさで足らなんだはずじゃ。」
五郎三郎のばば様は、そういって泣かさったと。

「国府のむかし話」より
この昔話は、似たような話が飛騨地方にいくつかあるようです。岩魚が化けたのがばば様ではなく、お坊さんだったり、○○の淵だったりと。
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