広瀬の三右衛門の家へは、毎年秋になると、おさ売りの一家が来て泊まり込んで商いをした。ある日、古川へ商いに出かけたおさ売りが、夕方になっても帰って来ないので、みんなで心配しとると、あくる朝になって戻って来た。

 その様子を見ると、昨日出る時に持ってでた行商こうりをもっとらんし、着ている物は泥まるけで、手足や口のあたりには馬のクソがついとる。そして、ひなたに座っているかっこうが、まるで狐が後足でしゃがんでいるようなんや。
 そしていうことに、「昨日の夕方、大日(だいにち)の森まで来ると、美しい女に会ってな、ええ家へ連れてもらって、えらいごちそうになってきたわいな。」どうも正気ではない。確かに狐つきじゃ。よんべ(昨夜)大日狐に化かされて、一夜さじゅう沼田の中をのたくり廻って、馬フンなどをごちそうになったものらしい。

 そして、またやくたい(むやみ)に山へ行きたがるもんやで、三日町の引き回しへ連れて行ったら、
おさ売りは大喜びで四つんばいになって駆け廻ったもんや。三右衛門さは、見るに見かねて丸太で殴り付けたもんじゃ。おさ売りは、気を失って倒れてしまったが、大分たって気がついた時は、もう狐は落ちとった(正気にもどった)。
(国府のむかし話より)