泣かないでと
貴方へ向ける声が、掠れ行く
伝えたい事は数え切れぬ程あるのに
届かない、届かない
もどかしさに気が触れそうで





刃が血肉を引き裂き、朱色が肌に境界線を生む
どろりと艶めかしく流れる血と、鈍痛に耐え切れずだらしなく流れた唾液が混じり、
穢れた色がぼとりと地面へと華を咲かせた
人々はまるで命無き駒
其れを操るは心無き王
愚かな人の過ちの螺旋に身を投げた魔と妖は、
其の純真な心に赤い涙を零す



、くだらぬ冗談はよせ」

普段と変わらない、低く落ち着いた声が心地良く感じた
頭を直接揺さぶられる様な感覚が瞼を上げる事を許さない
直ぐ其処に在る温もりが、今は余りにも遠く
身体の力は既に抜け切り、
突き立てられた無数の槍と僅かに感覚の残る足元だけで己の身体を支えていた
ぐちゅ、と
水音と共に僅か身体が沈めば、胸に刺さる槍達が其の風穴をより大きくする

「返事をしろ…」

懸命に其の身体を自由にしようとするも、絡み合う槍は容易くは抜けず
痛々しさと焦りに手元は震え巧く対処出来ない
空を仰ぐ其の顔を僅かにずらし、相手へと柔く笑みを向ける
最早痛み等解らなかった

「黄昏が、」

終末(おわり)色に染まり行く、と
の口から零れた口癖が、酷く心に突き刺さる

雨が堕ちそうな空色を、は何時も終末色と呼んだ
其の意味も解らず、唯相手が言う言葉は何処か深く深い意味が有るのではと
泣き出しそうな空を見れば此の意味もまた遠くより知悉の事の様で
己の腕で抱く事も出来ない事実に打ちひしがれ、
僅かに動く乾いた唇からは既に吐息の音しか吐き出されず
消え行くとろ火が大きく揺らめき、降り出した雨粒に音も無く溶けて消えた



餓狼の咆哮が如く
蛮声と嗚咽の交る叫びが血溜まりの戦場に響き渡る
雨音だけが支配する其処では余りにも無力で、無意味で
それでも止められる事等出来る筈が無く
消えてしまった
乱され、壊され、穢され
触れる事すら、叶わない

「何故、」

答え等無いと知りながら、其れでも問う事しか知らぬ子供の様に
正解(こたえ)を捜す
溶けた泉から一滴を探し出すかの様な、あまりにも途方も無い其れを
手を伸ばしても、触れるは血色の混じる雨で



白黒の世界の中、未来も過去も無い空隙で
どうやって生きて行けと
触れる小さな其の手に、もう温もりは無かった





「小太郎様、あの空を御覧下さい」

「泣き出しそうな空…此の闇色を、は終末色と呼んで居ります」

「世の終わりはきっと、こんな色だと思うのです…」

「…小太郎様、は最後まで…」


「貴方様の、御傍に…」



『お慕いしております』










記憶の中の其の声も、色褪せて










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まさかの二話続けての悲恋(しかも死ネタ)物!
これには深い訳がありまして…此の話の前にもう一つSS書いていたのですが、
色々な事情が重なり此方を先に完成させました、ので連続悲恋物になってしまいました;;
話の内容的にはこた夢の狐の〜の続きっぽい感じです
狐設定全く無いので別ヒロインでも良いのですが、狐ヒロイン設定の性格が良いと思い…
しかし此の話の一番の謎はさんの死に方ですよね、どんな格好だよ!と(笑)
イメージ的にはデメ○トのダニ○ラさんの最後な感じでお願いします←
死ぬ其の瞬間すら美しく!(待て)



08.12.2