欲望の犬
中原一也
インターコミュニケーションズ
★★★
三宅健太×坪井智浩 子安武人 一条和矢
検事の水上(坪井)が雨の日に拾ったのは、まるで野良犬のような男・大貫(三宅)だった。原作未読。
検事という固い職業なのに、バッヂを付けたまま見知らぬ男をいきなり自宅へたらしこんだり、何も考えずに合鍵を渡したりなど、ありえないほど軽率というか簡単というか、始まり方がとにかく唐突で、その後も元彼が登場したり暴漢が登場したりと、ありがちなエピソード満載なのだが、聴き終ってみれば決して悪くなかった。おそらくキャラだと思う。
まずは水上だが、なかなか正体を明かさない年下の男に気持ちを乱されながらも、ずるずると関係を続けていく中で、大人なくせに妙に可愛い瞬間がいくつも用意されていて、プライドの高いクールビューティー(その上メガネ)なんだけどちょっとおバカさん、みたいな、堅物ゆえの可愛さが魅力的。冒頭に感じた唐突さも、水上自身がもともとゲイであって、性に対しては多少弱く本能的であることを自覚している風もあり、その性急さもなるほどとりたててありえないことでもないかな、と納得できてくるし、何より、理性的でエリート然とした普段の水上が、大貫の前ではなんとも色っぽく艶かしい様子に変貌するのがダイレクトに伝わってきた。
一方、大貫は、自分の欲望に忠実で図々しく横暴な最初の印象が一転、その奔放さすら魅力的な感じで、獰猛な野良犬が人懐こく尻尾を振るワンコに思えてくるから面白い。
更にそれを演じる声の方だが、水上の坪井さんがまたなんとも色気のあるハスキーボイスで。個人的には「ゼーガペイン」でとりこになったシマ指令の声が聴きたくてこの作品を手に取ったわけだが、そういった意味では私的に大成功、大満足だったと言っていい。例えるならば「青の軌跡」のカイ@中原氏を髣髴とさせる美声で、クールな中にも苦悩の滲むハスキーなモノローグがたまらない。そして大貫の三宅さんだが、どうしても任侠っぽさが強くてビジュアルの情報からするとちょっとイメージと違う声な気はするが、終盤はなかなかのワンコっぷりでよかったと思う。もう勝手にやってくれ、なほどの二人のラブラブぶりに口元がゆるむ。
で、Hシーンだが。性描写は結構多く、しかもどれもそれなりにしっかりとした絡みであり、確かに熱演ではあったが、叫び系の坪井さんとフンフン系の三宅さんの絡みがあまりに息も絶え絶えなので(笑)多少聴き辛かったのは事実。しかし、坪井さんは声的には思い切りツボなので、今後に大きく期待してみたい。
最後に、満を持して登場した元カレ君のコヤPだが(笑)思いがけずいい人で終わってしまって、ちょっと拍子抜け。彼の脇役自体、私的には久しぶりに聴いた気がしているのだが、まあ、未遂もまた良し!ってことで。





嫁に来ないか
新也美樹
インターコミュニケーションズ
★★★★
子安武人×森川智之 杉田智和 大西健晴 石井一貴 桑谷夏子 他
まあ、漫才で言えばどこまでもノリつっこみ、嫁が攻めで亭主が受け、嫁がボケで亭主がツッコミ、しかしボケボケしいのはあくまで亭主の方なのだが、そのボケボケしさがたまらない。また、その夫婦漫才を客観的に突っ込むナレーションは、フリートークでも言われていた通り、オイシイところを全部持っていくという、なんともご馳走様なポジションであり、そのラッキーなナレーター(杉田)は主演たちの嫉妬心を軽く煽っていく。しかし、私的にはこのメインカップルをキャスティングしたインターさんのチャレンジャーな心意気に、一抹の微妙に寒い空気を感じつつも、素直に賞賛を送ってみたい。いやー、これがコメディでよかった、いろんな意味で。
さて、あらすじだが。突然目の前に現れた花嫁候補は、料理はプロ級、掃除も完璧、細やかなところまで気配り出来てしかもド級の美形、という、花嫁にはもってこいの相手だった・・・・ただし、男でさえなければ。そんな風に、初っ端から強引な押し掛け花嫁・一美(子安)の常軌を遥かに逸脱した<当たり前さ加減>に、夫?・敬吾(森川)、そしてリスナーもが巻き込まれていくわけだが、気がつけばいつの間にかそのマイペースさに自らの常識をも塗り替えられていく、という、なんとも恐ろしいオハナシ。これがシリアスならばとてつもなくサスペンスに満ちた展開であっただろうが、幸いなことにコメディーであり。策略なのか天然なのか、はたまたこれも愛情なのか、とにかくそんな<花嫁>の手際のよさに、乗せられてはつっこみ、乗せられてはつっこむという序盤の掛け合いから、次第にかけがえのない人になっていくという心温まる?ラブストーリー。そのスピーディーな話運びに笑えます。
が、指輪の件りなど、露骨なアプローチに笑える一方、ちょっとした切なさもこみ上げ、しかもついには、指輪を見たときの一美のリアクションを、敬吾でなくても思わず期待してしまうようなワクワク感に包まれる。これもその運び手であるメインカップルの上手さ、子安氏の堂々とした恥らいっぷりやモリモリの真面目であるがゆえの可笑しさとせつなさ、この二人の名演技に他ならないだろう。
年のせいか、なんかもう、ドロドロとしたものが聴きたくない、そんなアナタに是非聴いてほしい、さくさくとしたコメディ。ていうかアレだね、コメディだとどんなにドリーム全開でも許せるから不思議。むしろ、コメディならここまで徹底的にやって欲しい、そういう類の作品。