それほど期待していなかったのが功を奏したのか、個人的には、思いのほかよかったこの作品。きっと、そろそろちょっとドロドロした話が聴きたい、と思っていたからかもしれない。
母に捨てられて以来、ずっと療養所で暮らしてきた瑞樹(野島)だったが、その母が死に、名門貴族である父親・グラムスコート伯爵の奨めでイギリスに渡ることに。入学したパブリックスクールで、瑞樹は異母兄のエドワード(森久保)と義理の兄・アルフレッド(鳥海)と出会う。しかし、なぜかひどく父親に疎まれている瑞樹は、その原因を自分の母親の醜聞とともに知ることになる。それを理由に、周囲から執拗ないじめに遭う瑞樹だったが、そんな自分を何かと気遣ってくれるアルフレッドを、知らず知らず、心のよりどころにしていく。
「いじめ」と聞いて真っ先に思い出すのは「少年四景」だったりするわけだが、あの陰湿さに比べると、いじめ方が非常にストレートでわかりやすい。「いじめ」と言うからには、確かに陰湿は陰湿なのだろうけれど、「痛い」という印象は、それほど受けなかった。
瑞樹に惹かれていくアルフレッドに危機を感じたエドワード(森久保)が二人に仕掛けた罠も、悪意というよりは「アルフレッドの将来性を案じて」のことであって、決して褒められるべきことでは確かにないが、瑞樹の母親に対する憎悪と、それによる偏見も理解できる気がして、何となく憎めない。そして一方、まんまと策略にはまり、誤解から一変したアルフレッドを加え、瑞樹へのいじめは、更に加速していくわけだが、とにかく、ラブストーリー的なドラマティックさと言うよりは、その「いじめ」にひたすら耐えて耐えて耐えまくる主人公のいじめられっぷりが最大の聴きどころだろう。しかし、がゆえに賛否の分かれるところかもしれない。ヘビーはヘビーだが、私的には、それほど嫌いな類の作品ではなかったけれど。
ただ、話の展開にのみ重点が置かれており、残念ながらキャラの魅力があまり見えてこないのが惜しい。瑞樹やアルフレッドの心理描写が、もっと詳細に描かれていたならば、或いはもっと感情移入できたのではないだろうか。瑞樹が、暴力に対して免疫がなかったための自分の弱さを恥じ、嫌悪する件りなど、かなり気の毒には感じたが、それほど同調できないのも、エピソードの組み立てが大雑把で、今ひとつリンクしきれないからだろう。それゆえ、「耐え系の野島健児」という、あまりに美味しいキャスティングにも、萌えきれず、非常に残念。
あとは、時代背景や時間経過が解かり辛かったことと、多少強引なハッピーエンド、特にアルフレッドの心理変化がもっと丁寧に描かれていたならば、ここまでの唐突感はなかったかもしれない。
意地悪な鳥さんとか意地悪な祥ちゃんとか意地悪なモッキーとか、Mにとってはなかなか心地のよい、いや、むしろ野島弟の泣きのシーンも満載なので、Sにとっても快感に打ち震える作品と言えなくもなく、いやいや、もっと言えば、宝亀氏による鬼畜変態オヤジ攻めなんかも聴けちゃうので、そういうのがウハウハな方にはたまらない・・・・・・ただ、そういう嗜好が皆無な場合は、くれぐれもご注意くださるように。
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