顔のない男
剛しいら
ムービック
★★★★
三木眞一郎×福山潤 中田和宏
うおおおおお〜!!やっぱ三木眞てすげー!!
この作品、実は全然スルーの予定で。他のレビューサイト様の感想を読んでも、ふーん、という感じで、特別聴きたいという感じでもなく。ただ今回、たまたま聴かせていただく機会に恵まれたというか、「どうか原作未読の感想を書いて!」というリクエストを頂戴したもので、ならちょっと聴いてみるか、くらいの気持ちでいたわけだが。
・・・なにこれ、すげー面白かったんですけど!?
原作先読みが仇になったレビュアー様が「微妙・・・?」を連発(笑)する中、ちゃっかり星を4つつけてる女、ここに約1名。だってほんとに面白かったんだもの〜。
それなりにシリアスでありながら、久々に引っ張られました。各レビューを読み漁っていたため、あらすじはそれなりに知っていたのに、それでもぐいぐいと引き込まれてしまう一風変わった設定とストーリー展開。確かに、冒頭がどうしても駆け足な印象が拭えないことや、「BL」という枠で評価するのが非常に微妙な感はあるのだが、それを差し引いても際立つ面白さ。私はめっちゃ楽しめました。察するに、原作未読な方が、より楽しめる作品なのかもしれませんね。
聴きどころとしては、私的に2箇所。まず、強引に迫る飛滝(三木)に対し、初めて「音彦として」拒絶するシーン。早口でまくし立てる飛滝が色っぽいのなんのって、もうメロメロ。音彦に言っているようで本当は自分に言い聞かせているような、その台詞の緩急と抑揚に、三木眞一郎という役者の真髄を見た気がしました。
そしてもうひとつが、完璧な天才俳優であるはずの飛滝が演技に失敗していることに気付いたときの音彦(福山)のモノローグ。「ガラスの仮面」で言えば、行方不明になった母を想い、動かない人形でいなければならないマヤが舞台上で涙を流しちゃった、みたいな?(こんな例えですみません)その隠し切れない飛滝の動揺に、既に思い切り音彦に感情移入していたせいで、私も心の中で「してやったり!」と、ニヤリとしてしまった。
音彦の方は、感情の起伏を感じさせるモノローグより、例えば撮影の、爆破シーン寸前のモノローグみたいに、淡々とした感じの方が、よりせつなくてよかった。自分の撮影が終わり、「音彦の顔」に戻った音彦が、本来の勝気な性格を露にしてからの口の悪さやしぶとさに、なんとも言えない爽快感が漂う。
噂には聞いていたけれど、飛滝の、というか、三木眞の?あの慟哭もすごかった・・・三木眞自体が「顔のない男」という感じだ。いや、やっぱすげーよ、三木眞。


ムービック(キャラCDコレクション)☆顔のない男☆



ボクサーは犬になる
剛しいら
日本コロムビア
★★★★
堀内賢雄×伊藤健太郎 塩沢兼人 石川英郎
まず、なんといっても音楽がすばらしい。せつないモノローグから緊張感漂うシーンまで、見事なまでに背景を物語るそれは、3人目の主人公、と言ってもいいほどに存在感があり。
この作品、(人間の)キャストが少なくて、ほとんどが先生(堀内)と徹(伊藤)、二人のやり取りなのだけれど、これ、すっごく面白かったんですよ。ものすごく簡潔に言ってしまえば、若く美しい変態外科医が、ボクサーの少年に恋するあまり、犬を仕掛けて誘拐、監禁、思いを遂げてしまう、という鬼畜極まりない話であり、本来、そういう身勝手な攻めキャラにはあまり感情移入できないのだけれど、自分勝手な狂気の中にも、紳士的で、なおかつ、徹に好かれたいと願う、あまりに健気な気持ちが混在しており、そのせつなさが先生を許してしまう。そして、そんな先生を演じた賢雄さんがまた、思い切りはまり役で。徹に噛み付かれ、逃げられたあと、試合を観戦した先生の独白、よかったな〜。ウルウルでした。
そして徹。先生が「天使のような」と喩えていたが、彼にとってはまさにそんな少年だろう。純粋で無垢な心を持ち、酷い目にあいながら彼を許し、それどころか彼を愛し、共に生きたいと願う・・うーん、やはり「天使」というよりは「犬」に近いとは思うが。その徹、完全なる飼育を受けながら従順なペットとして飼い馴らされていく。そんな風に表現すると、それってどうなの?という印象を受けるかもしれないが、それはお互いが望んだことであり、結果ーオーライなハッピーエンドなのだ。
似た寂しさを心に擁きながら生きてきた二人が出会い、かなり強引な手段ではあるけれど、お互いを必要としていくまでの過程が、詳細な心理描写と共にドラマティックに描かれており、とても惹き込まれた。
最後の「犬も語る」だが、ご主人様への愛を切々と語るカイン@塩沢氏の正しいドーベルマンの在り方講座(違う)がまた非常に楽しい。ドーベルマンの鏡ともいえる?カインと、そんな兄を訝るアベル@石川氏とが「徹は人間か犬か」を真面目に論じているのは、あまりに馬鹿馬鹿しくて笑えます。


*

ドクターは犬を飼う
剛しいら
日本コロムビア
★★★★
堀内賢雄×伊藤健太郎 岩男潤子 塩沢兼人 石川英郎
いや〜、面白い。サスペンスじみた展開で、BLだということさえ忘れてしまいそうな作品。ほんと、この後味の悪さすら製作側の思惑通りであろう。美保に対する嫌悪感を含め、暗さも、重さも、狂気すら見事に描かれており、否応無しに惹き込まれていく。
今までにも、悪役と呼べるキャラはいくらでもいたけれど、ここまで救えないキャラクターは他にいないかもしれない。その身震いするような、頭のおかしい少女をを、岩男さんが熱演。とにかくすばらしいです。そして、まるで子どものような嫉妬で、厭味ったらしく徹にあたってみたり、美保と自分を比較対照して落ち込んでみたりと、可愛いような可愛くないような先生(笑)の大人っぽさと子どもっぽさのギャップを演じ分ける賢雄さんがさすが。そしてそして、イトケンさんがまたいいんだよね〜。幼くすねる先生を優しく諭す声が、妙に色っぽかったりするからすごい。前作と違い、余裕さえ思わせる徹の変化に、信頼の深さを感じます。刑事役の佐藤氏も、いい味を出していました。
前作に引き続き、番外編の「犬も歌う」だが。「その言い方は・・・ひゃめろ(やめろ)」な塩沢節が耳に沁みます。いろんなパターンで「美味い肉美味い骨」を歌う石川氏も、なんという芸達者。前作同様、お兄ちゃんの真似が上手すぎです。BGMの「犬のおまわりさん」がツボのはまりました。ただ・・先生と徹の歌に大差はない気がするのだけれど、気のせいですか?
この二人、本編ではテレビの声でご出演。なんとなく笑いが漏れます。


*

ライバルも犬を抱く
剛しいら
インターコミュニケーションズ
★★★
堀内賢雄×伊藤健太郎 中井和哉 梁田清之 千葉進歩
まずはじめに。中井和哉と梁田清之というキャストを見て、真っ先に「噂の海賊狩り!さすらいの剣士ゾロ(某アニメの135話サブタイトル)」を思い出したのは私だけだろうか。ごめんね、よい子のみんな・・。
さて。どうやら、心の寂しい人間を惹きつけてしまうという特技があるらしい徹。今回はライバルである東(中井)に、不本意にも、どういうわけかすごい勢いで気に入られてしまう。自分勝手で横暴で超俺様な東だが、実力もあり、可愛いところもある、なかなか魅力的なキャラ。そんな東に振り回されながらも、ボクサーとしてのプライドを見つめなおす徹。単純で短気で、素行も悪い東を、見守り続ける坂本(梁田)。どう考えてもただの脇役っぽくない西崎。変態チックなプレイに磨きがかかっている気がする先生。なんか、キャラがみんな濃いです・・。今回、東を演じた中井氏だけれど、こういった柄の悪い(失礼)役、似合うな〜。
発売元を変えての第3弾なわけだけれど、少しテイストが変わった気がした。音楽はそのまま高野ふじお氏なのだけれど、今回はなぜかあまり印象に残らなかった。前作までのテーマ曲がとてもよかっただけに、すごく残念。あと、始終聴こえていたカインとアベルの声(もしくは息遣い)が少なくて、それは家を離れたストーリーなので仕方がないのだけれど、なんだかとても物足りない気がした。そして、番外編をもう聴くことができないのが、非常に悲しい。フリートークでは埋められない寂しさが残る。
それはそうと、徹を連れて帰った先生が、彼をものすごーく厭味っぽく罵るのだが、あれはプレイの一環なのだろうか?(余計なお世話です)


インターコミュニケーションCD☆ライバルも犬を抱く DOCTOR×BOXER ☆



はめてやるっ!
剛しいら
インタ−コミュニケーションズ
★★☆
小西克幸×成田剣 石川英郎×松野太紀 飯塚昭三 中原茂 小野健一 他 
ヤクザもの、原作既読。原作がそこそこ面白かった上、かなり原作イメージに近いナイスなキャスティングにもかかわらず、いや、原作が面白くてナイスなキャスティングだったからこそむしろ聴くのを避けていたというか、まあ、私の場合、原作先読みだとどうしてもCDに対しては気持ちが萎えてしまうこともあって、ぶっちゃけインターさんのポイントが溜まっていなかったら敢えて手に取る作品ではなかったのだが、ポイント消滅の危機を機に聴いてみた。が、やっぱり聴かなくてもよかったかもね、な印象。
ただでさえメインカップルがメインカップルとして弱い(ちなみにブックレットの二人もメインカップルではありません)のに、二人の馴れ初めとその回想がすっぽり省略されているので、安藤(小西)の辰巳(成田)に対する犬っぷりが今ひとつ解りにくい。ストーリーの中心にいるのは専らコージ(石川)な印象で、<さお師>のインパクトだけがめちゃめちゃ強い。ただ、それでも辰巳の妖艶さだけは必要以上によく醸し出されており、石川×成田を含む3回の絡みシーンも、短いながら「やりすぎじゃーねーの?」と思わずにはいられないほど、成田氏の熱演ぷりがスゴイ。エロいです、かなり。しかし、がんばって凄みのある声を出しまくっているにもかかわらず、その相方であるはずの安藤の印象はあまりに薄く、どう考えても脇役に成り下がっているのは、やはり脚本のせいではあるまいか。そのせいで、ストーリーの中心がズレまくっているように感じられた。
が、1枚を聴いた満足感はそこそこで、というのも、コージのイマドキっぽいチャラさの中に見える1本通った筋のようなもの、その微妙さの入り混じったキャラクターを石川氏が好演だったこと、それに尽きるような気がする。そして、純愛なのか、はたまたストックホルム症候群なのか、その後の<マミアナロード>は原作でも気になったところだが、やはり描かれてはおらず、しかしそういうリスナーの想像に任せる的な切ないラストは、決して嫌いではない。
原作ではこのあと、「おとしてやるっ!」・「やってやるっ!」と続くのだが、CD化はこれ1本のみ。決して軽くない、むしろ暑苦しい系の任侠ものとしては、原作がそれなりにしっかりしている分、男っぽい絡みシーンも含め、聴き応えはあると思う。





水の記憶
剛しいら
ムービック
★★★★
伊藤健太郎×千葉進歩 松野太紀 神奈延年 吉野裕行
風間勇刀 
美しい容姿にもかかわらず、自分に対しては無頓着で少し天然な精神科医・如月(千葉)と、元患者で、ひそかに如月を思い続けてきた青年・佐々木(伊藤)。佐々木は、如月のそばにいたいがために、近隣の熱帯魚店に勤め、上手く如月を丸め込み、同居に漕ぎ付ける。
メインカップルのプロセスよりは、如月の元を訪れたクライアント・炯を中心にした展開なのだけれど、その緊張感漂うストーリーの一角にも、メインカップルの甘々でほのぼのとしたやり取りが随所にちりばめられ、重いだけの話では終わらない。その如月と佐々木は、謎解きをする探偵と、思いがけずヒントをくれるアシスタントのような印象で、多重人格の少年・炯の本意に迫っていく。
こういった精神的な話は、個人的に大好きだし、その描写もいちいち丁寧でせつなく、文句なしの作品だった。そして、あらゆるシーンの一景を、間違いなく担っているであろう音楽がまた素晴らしい。
如月は、まるで榎田さんの作品によく出てくるような、生活能力に欠けた子どもみたいな大人で、その不器用さが非常に可愛く、私的に好きな設定の受けキャラであり、千葉氏はまさにはまり役。その如月を徹底的に甘やかす佐々木は、約10歳もの年齢差を感じさせない包容力ぶりで、如月の精神的な支えになっていく。過去に曰くがありながらも、明るい好青年を、これまたイトケンさんが好演。この二人、確かにプロセスとしては多少唐突な成り行きを感じさせはするのだが、佐々木が初めて思いを遂げる絡みのシーン、正直、思ったより、全然濃く、最初から最後まで、しっとりと聴かせてくれ、これは嬉しい誤算。めちゃ萌えです。
そして、解離性同一性障害を患う少年を演じる松野さんが、また素晴らしい熱演であり。日記のような手紙と回想のモノローグから、17歳になってやっと現れた自我が求めた父性の象徴、魂の同化、それゆえの性行為、と、キーワードがせつなく明かされていく。オレンジのフリースの件りからはもう、痛いほどで、かなりウルウルでした。
原作は続編が刊行されているが、読まずに待っているので(笑)CDの続編もぜひお願いしたい。とにかくいい作品。今のところ、今年一番のお薦めかもしれません。


ムービック(ドラマティックCDコレクション)☆水の記憶☆