| 富士見二丁目交響楽団 寒冷前線コンダクター |
| 秋月こお |
| マガジンマガジン |
| ★★★★★ |
| 増谷康紀×置鮎龍太郎 梅津秀行 勝木真砂子 浅田葉子 |
| 聴き始めて、すぐにわかった。私は、この作品に出会いたかったのだ。 そして、キャスト買いでは決して出会えなかったであろう幸運に感謝した。はじめてこの作品を聴き終えたときの興奮と感動を、私は未だに忘れない。 町の小さな素人オーケストラでコン・マスを務める悠季(置鮎)。そこへ桐ノ院(増谷)という天才コンダクターが常任指揮者としてやってくる。この桐ノ院、見上げるばかりの長身で、しかも二枚目。悠季は、様々な意味で彼に敵意を抱くのだが、それが嫉妬だと知り、自らを苛む。一方桐ノ院は、そんな内気でありながらプライドが高いコンサートマスターに恋をしてしまっていた。彼は誤解から、悠季を押しの一手で和姦に持ち込んだつもりが、実は強姦だった、という大失敗をやらかす。 これは長い長い「フジミ」シリーズの、序章も序章、ほんの始まりである。どんなに悠季が桐ノ院を疎ましく思おうとも、無視できないその感情こそが、すべての始まりなのだろう。 ごく個人的に言わせていただくと、当初、キャラ的にもキャスト的にも、特に惹かれるような要素は見当たらなかった。増谷氏の声は、特別嫌いではなかったが、あの演技くさい演技が気になって仕方がなかったし、繊細といえば聞こえはいいが、ひどく内向的な悠季の性格は、好み、という点で、大いに魅力に欠ける・・・はずであった。ところがどうだ。たった70分そこそこの物語に、ここまで惹き込まれようとは。そして、そこまで惹きつけられた魅力の正体は、悠季のあの長い、しかし誠実な、彼の独白に他ならないのだった。 私は、とても気に入っている作品のレビューを書くとき、いつも以上に自己嫌悪に陥る。その作品が好きであれば好きであるほど、自分のボキャブラリーの貧困さを呪う。そういった意味で、これほど私を落ち込ませるシリーズは、他にはないだろう。 |
| 富士見二丁目交響楽団 D線上のアリア |
| 秋月こお |
| マガジンマガジン |
| ★★★★☆ |
| 増谷康紀×置鮎龍太郎 石田彰 梅津秀行 勝木真砂子 浅田葉子 矢尾一樹 |
| 富士見二丁目交響楽団 さまよえるバイオリニスト |
| 秋月こお |
| マガジンマガジン |
| ★★★★★ |
| 富士見二丁目交響楽団 コンサートはお好き? |
| 秋月こお |
| マガジンマガジン |
| ★★★★★ |
| 富士見二丁目交響楽団 赤い靴ワルツ |
| 秋月こお |
| マガジンマガジン |
| ★★★★★ |
| 富士見二丁目交響楽団 マンハッタン・ソナタ |
| 秋月こお |
| マガジンマガジン |
| ★★★★☆ |
| 富士見二丁目交響楽団 リサイタル狂騒曲 |
| 秋月こお |
| マガジンマガジン |
| ★★★★★ |
| 富士見二丁目交響楽団 外伝 野生のアマデウス |
| 秋月こお |
| マガジンマガジン |
| ★★★☆ |
| 富士見二丁目交響楽団 桐ノ院圭はかく語りき |
| 秋月こお |
| マガジンマガジン |
| ★★★★★ |
| 富士見二丁目交響楽団 悠季のためのパヴァーヌ |
| 秋月こお |
| マガジンマガジン |
| ★★★★★ |
| 富士見二丁目交響楽団 富士見ハイランドへ、みんなでいこう |
| 秋月こお |
| マガジンマガジン |
| ★★★☆ |
| 富士見二丁目交響楽団 まじめコン・マスはコンダクターの夢を見るか |
| 秋月こお |
| マガジンマガジン |
| ★★★★ |
| 富士見二丁目交響楽団 八月十二日(晴れ) |
| 秋月こお |
| マガジンマガジン |
| ★★★★ |
| 富士見二丁目交響楽団 ファンキー・モンキー・ギャングS |
| 秋月こお |
| マガジンマガジン |
| ★★★ |
| 増谷康紀×置鮎龍太郎 矢尾一樹 山口勝平 宮田幸季 星野充昭 中村秀利 |
| 「フジミ」のJUNE版はこれで14作目。正直、原作的にはここら辺から私自身のテンションが下がり気味なことと、やはりどう考えても間があきすぎて、前作のテンションをなかなか保てないこともあり、実際に聴くまでは、ちょっと意地悪な気持ちにすらなる。が、しかし。私はどうしてこうも置鮎龍太郎のモノローグが好きなのだろう。単に過去の紆余曲折を簡潔に語るだけのそれに、毎回毎回、どうしてこんなにも心躍らされるのか。 多少台詞がカットされていることを除けば、今回は概ね原作に忠実に作られていると言っていいだろう。でも、私のポイントは、どれだけ原作に忠実に作られているか、ではなく、ドラマCDとしてどれだけ楽しめるか、なので、そういった意味では少し物足りなくは感じた。というのも、「桐ノ院圭はかく語りき」や「悠季のためのパヴァーヌ」が、かなりオイシイとこ取りの濃さだっただけに、返って拍子抜けな気がした。それに、これは賛否あるところだとは思うが、ドラマよりもトークに目先をすりかえられているような気がして、私的にはひどく不愉快であった。トークはどこまでもオマケであり、ドラマの物足りなさを補うものではない。確かに最初のうちは楽しめたこともあったが、ここまで下品かつ下衆な話が延々続くと、いささか本末転倒、いい加減嫌気がさす。もちろんトーク目当てな人もいるだろう。ゆえに、これはあくまで私が感じていることであり、トーク自体を否定するものではない。ただ、私が楽しみたいのも、あくまで「ドラマ」であって、決してトークではない。もちろん、収録時間に対しても憤慨しているのは事実だ。 ドラマ部分だが。聴きどころとしては、「ふじみ」でサリエリの話になる件り、この小谷(星野)の本音は「フジミ」の本質に疑問を持つ、かなり核心に触れた言葉であり、こういう脇の面々が放つ台詞はいつも魅力的で、つい惹き込まれてしまう。酔いに任せたその愚痴は、とても味のあるものだったと思う。 更に、悠季のこととなると、他人に対してはどこまでも冷徹になれる圭、そして、冷蔵庫で見た衝撃に、本来のお人好しが一変、激しい内面を、否応なく露呈していく悠季。こういう熱い部分、時折しか垣間見せないその情熱的な内面こそが、悠季の魅力でもあるのだろう。 何より、悠季の苦労性ゆえのドタバタの中に見え隠れする温かな人柄、真っ直ぐでいて複雑なモノローグのいちいちが誠実で、いつも胸に来る。やはりこの作品は、特別に秀逸なのだろう。 絡みは、原作ではひとことで終わってしまう未遂なシーンも、CDだからこそのサービス的な部分もあり、しかもそのオッキーがあまりに色っぽくて困る。 更にまた何年か待たねばならないのかと思うとため息は出るが、それでも、次回作を待ちたいと思う、心から。 |