最後のドアを閉めろ
山田ユギ
ファーストスマイル
★★★☆
森川智之×鈴村健一 遠近孝一
大学時代から思い続けていた斉藤(遠近)の結婚式の帰り、荒れる永井(鈴村)は新婦の元恋人・本田(森川)の前で醜態を曝す。その翌日、斉藤が「嫁に逃げられた」と永井に泣きついてきた。
メインカップルは本田と永井なのだろうけれど、斉藤も、いわゆる当て馬的な感じではなく、三人が三人とも、とっても魅力的。爆笑ではないのだけれど、ニヤリと笑ってしまう部分が随所にちりばめられ、それでいてせつなくもあり、とても楽しんで聴けた。斉藤の遠近くんは、一歩間違えるとヒールにもなりかねない難しい役どころだと思うのだが、厭味なく、可愛いキャラに仕上げているし、本田の森川氏も、それほどインパクトはないものの、せつなさの伝わるいいキャラを演じていたように思う。そして、なんと言っても鈴村くんがイイ!徹底的にボヤきまくっているのだが、そのボヤきがまた上手いんだよね〜。斉藤にメロメロな部分と、本田に悪態をつく部分、女性の前だけの二枚目声も、ドキッとするくらいに男前だし、少し大人チックなムラケンを堪能できて、非常に満足。
キャラのセクシャリティーが不明瞭な作品は少なくはないが、どちらかがイニシアティブをとっているわけではなさそうだし、それはそれでおそらく作品の特徴なのだろうから別にいいのだけれど、原作を読んでいないと解り難いシーンがいくつかあり、少し気になった。特にエロなのだが、性描写は結構多いと思うのだけれど、そうかな?と思いつつも、アナルセックスではなかったことは、最後に判明するまで判らなかった。
でも、ドラマとしてはとても面白かったし、いろいろな意味で曖昧なのだが、その曖昧さがひどく心地よい作品になっているように思う。会話のセンスとキャラの魅力、そのバランスが絶妙な作品。


*

開いてるドアから失礼しますよ
山田ユギ
マリンエンタテイメント
★★★
井上和彦×置鮎龍太郎 森川智之 鈴村健一 小西克幸
前作「最後のドアを閉めろ」の別カップルの話。にしても・・・・
長男・オッキー、次男・カズヒコさん、三男・モリモリ・・・・本田家、濃っ!
税務署に勤務する正一(置鮎)は、仕事先で弟の俊二(井上)と10年ぶりに偶然出会い、動揺する。正一と俊二は、一度だけ身体を重ねた過去を持っていた。10年経った今でも血のつながらない兄を恋い慕う俊二と、兄弟としての関係を守りたい正一。長い時を経た今、二人の距離が微妙に変化していく。
正一の真面目でお堅い一人称モノローグで進んでいくためか、ユギさんの作品にしてはシリアス色が強い印象。それと、攻めキャラの俊二が非常に薄いのも気になった。本田の血を一番感じさせる楽天的な性格なのに、どうしてだろう、あまり魅力的に感じなかった。本田の両親はキャラとして?すごくよかったと思うけど。
正一の気持ちが変化していく過程に、納税を頑なに拒否する三角氏の存在があるのだけれど、そちらもエピソードとしては今ひとつ弱く、<よったん>も、ユギさんお得意の少し変わったキャラであるのだが、私的には「俺は悪くない」の美樹なんかの方がインパクトが強かったなあ。
置鮎氏のせつない系のモノローグは大好物なはずなのだけれど、ただ単に正一だけが意固地になっているための自業自得な気がして、あまり胸に響かず、残念。ストーリー自体は、地味ではあるが、とてもまとまっていたし、正一の仕事先のシーンを含め、悪くない、というか、むしろいい話だったと思うのだけれど、何せメインのキャラがそれぞれ薄くて、作品全体も薄い印象になってしまった。ただ、有川の小西くんは、脇役ながら、ちょっとした物言いのニュアンスだったりがやはりすごく上手くて、耳に残った。
おまけの「あれから・・」だが、「最後のドア・・」の賢三(森川)×永井(鈴村)を絡めた話で、そちらの方は楽しく聴けた。腹を括った?正一が、思いのほか賢三のカミングアウトに理解を示しており、その変化に笑えました。




俺は悪くない
山田ユギ
インターコミュニケーションズ
★★★☆
松本保典×櫻井孝宏 緑川光 宮田幸季 小杉十郎太
堀内賢雄 渕崎ゆり子
いやー、いいね〜。鯨井さん、サイコー!!これはそう、あれだ、「お金」シリーズのぎょんちゃん、「SOLID LOVE」の王子沢、「真綿の王国」の岩近に続くヒットとも呼ぶべき強烈な脇キャラだ。もう、好き好き大好き鯨井さん。こんな緑川光を聴けたことが本当に幸せ。緑川氏、ほんとに上手いな〜♪
さて、本編。大学の入学式の日、電車の中で気分が悪くなり倒れた中村(櫻井)を助けた青年は、中村が目を覚ましたとき、もう既にいなかった。もう逢えないだろうと思っていたあるとき、所属するサークルに現れたのは、あの日の青年、梶(松本)だった。中村の臆病で純粋な恋が、映研を舞台にして展開されていく。
「最後のドア・・」のときも思ったけれど、脇キャラも含め、とにかくキャラがいいんだよね。確かに中村はネクラなメソメソくんなのだけれど、心理描写がすごく明解で、そのせつなさが見事に伝わってくるし、梶も真っ直ぐでいいヤツなんだよね。そして、脇を固めるキャラたちがもう、ワンダホー!鯨井をはじめ、美樹(渕崎)や土屋(小杉)が、とてもいい味を出していてスバラシイ。
高校生ではなく大学生という設定だけで、ストーリーもせつなさもリアリティーを増す。おバカっぽさがなく、ちゃんと大人のラブストーリーになっているところがステキ。
冒頭は誠(宮田)のモノローグから始まり、このまま誠の一人称で進められていくのかと思いきや、前半は中村@櫻井くんの一人称で描かれ、後半は梶@松本氏の一人称で語られていく。立場を入れ替えたそれは、手法として、ものすごく成功していて、作品自体の魅力に、ひどく貢献していると思う。作品中、8年もの時間経過があるにもかかわらず、それがとても自然で、それすらもせつない。
「最後のドア・・」の方は続編が決まっているが、私的にはこちらの方がよかったので、次回作があれば是非とも聴きたい。できれば鯨井メインで。原作、それまで読まずに待っていられるかな〜?


インターコミュニケーションCD☆俺は悪くない☆



我らの水はどこにある
山田ユギ
マリンエンタテイメント
★★★★
小西克幸×千葉進歩 岸尾大輔 成田剣 藤原啓治 
もう、何から書こう、面白すぎて。
とにかくまず、ドラマとして非常に面白かった、ということ。ストーリーの展開、キャラクター、キャスト、すべてが填っていたと言えるだろう。特に、ユギさんの作品は、いつも脇キャラが主役以上に魅力的だったりするのだが、それをより魅力的に魅せてくれている藤原啓治が超ブラボー。私的には彼が主役と言ってもいいほどの濃い存在感。三の線でありながら、シリアスとの演じわけ、そのメリハリには感動すら覚える。とりわけ千葉氏演じる阿部との掛け合いは、とても愉快なものだった。
そして、これまた脇キャラの真治@岸尾くんだが。そのつかみ所の無さといい、過去のトラウマに囚われた少年の動揺と錯乱、また、少年の少年らしい弱さ、脆さ、こちらもなんとも言えず聴き応えがあり、それに加え竜彦の子供時代、7歳と12歳をも演じているのも見事。
さらに、真治のトラウマの原因ともなった広重(成田)が、5年の歳月を経て、またもその引き金を引いてしまうわけだが、狂気と暴力、そして、我に返ったあとの、しぼり出すようなつぶやきがひどくせつない。
真治の姉・雪恵だが、ここでもまた女性キャストに恵まれたユギ作品。淵崎ゆり子さん、瀧本富士子さん、と来て今回がサエキトモさん。しかし、それもキャラの魅力ゆえの名脇役なのだろう、ドラマのドラマたる要所にこの作品でも一役買っている。
ここでようやくメインカップルに触れるが、これがなんと10歳の年の差カップル、しかも年下攻め。小西克幸に17歳ってどうなの、という当然の疑問はともかく、でもこの際どうでもいいか、と思わせるその声がスゴイ。千葉氏の意外にとぼけたキャラっぷりも非常によかった。絡み自体は短いが、かなり大人な色気漂うシーンになっている。コニタンの吐息遣いは、本気でヤバイ、萌え萌えです。
ただ、以下は蛇足になりそうだが、まったく違うストーリーでありながら、年の差年下攻めカップル、少年のトラウマと錯乱、そして、せつなさを一手に担う、その少年の告白、というキーワードは、否応無く「水の記憶」を思わせた。もちろん、千葉受けなこともあるだろうが。
それでも、面白い。とにかく面白い。エピソードや台詞のひとつひとつが計算され、ストーリーは、ドラマティック且つ繊細、状況がわかりにくい不親切さも見当たらない。ユギさんの原作を一度も読んだことはないが、その引き出しの多さに、改めて感服する。
フリートークは藤原氏のせいでぐだぐだなのだが(笑)、それも返って笑えるので全然オッケーです。


マリンエンターテイメントCD☆我らの水はどこにある☆

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どうして涙が出るのかな
山田ユギ
インターコミュニケーションズ
★★★☆
森川智之×檜山修之 高木渉 遊佐浩二 
全国数千万の「ビーストR」ファンの皆様、こんにちは。いや〜、もう、チータスの校長先生が聴けただけで幸せな気持ちになっちゃったよね。ていうか、ガヤ、悪乗りしすぎだろ、高木渉!(笑)
さて、本編だが。いや〜面白かったね〜!!やっぱりユギさんは引き出し多いな〜。キャストが填っていたかどうかはとりあえず措いておくとして、最初から最後まで、とにかく楽しめた。長い年月をスピーディーに展開させているにもかかわらず、コミックス派生の作品に有りがちな解り辛さも違和感も全く感じさせることなく、シナリオの上手さが際立っている。キャラクター個々の魅力もさることながら、そのバランスも絶妙だし、脇を固めるキャラがそれぞれ個性的なのも、いつもながらさすがだ。エロ部分も、とってつけたようなおまけチックなモノではなく、しっかりストーリーに絡ませた導入のさせ方がまた心憎いし、それを演じる森川・檜山両氏の切羽詰った感もたまらない。ほんと、あらゆる意味で上手い、いや、美味い作品だな〜、と感嘆。これだけシリーズではなくCD化されているのに、これまでハズレが一度もない、というのは、ほんとにスゴイことだと思う。
で、その愛すべきキャラクターたちだが。上記の掛け算表記は、一応「森川×檜山」としたが、これは臨機応変にリバーシブルであり。ゆえに、どちらが受けだとか攻めだとか、ていうか、もう、そんなことを超えたラブ、とでも言うのかな、とにかく泉谷(檜山)を好きで好きで好きで仕方がない早川(森川)のあまりのバカさと可愛さには、とことん胸を締め付けられつつ、大笑いさせてもらったし、泉谷の常識然とした中にも、妙な度胸と開き直りと気弱さがせめぎあっている様にまた、なんとも言えず心揺さぶられた。いつもかも泣いてばかりいる早川の涙にも女々しさを感じることはなく、ただただ、その純粋さに胸を打たれる。だいたい、何かとすぐエロに走りがちな昨今の「ボーイズラブ」で、ここまで甘酸っぱい気持ちになれる作品など、ひどく稀だと言っていいだろう。
そしてキャストだが、私は原作未読なので、このキャスティングがすっぽり填っているかどうかの判断はしかねるが、時間の経過から考えて、まず、上手い役者さんでなければ無理なことは確かであり、そういった意味で全く文句のつけようがない好演だったのではなかろうか。キャラクターのいっぱいいっぱい加減が手に取るような巧みさで、そのいちいちに顔がにやけてしまう。
とにかく、せつなさと可笑しさと、いろんな感動が詰まったオイシイ作品。絶対に聴いて損はないと思います。


インターコミュニケーションCD☆どうして涙が出るのかな☆