ストロベリーデカダンT
本橋馨子
インターコミュニケーションズ
★★★★★
子安武人×三木眞一郎 塩沢兼人 古澤徹
私が初めて出会ったBLCD。そういう意味で、私はラッキーだったのだと思う。ボーイズラブではないドラマCDしか聴いたことがなく、しかも決してBLファンではない私が初めて手にするのに、これほどふさわしい作品もなかっただろう。原作の通り、露骨で余計な性描写はなく、古き善き「耽美」の世界を心地よく聴かせてくれる名作だ。
内容は原作の「兼次おじさまシリーズ」第3巻の「ストロベリー・デカダン」をほぼ忠実にトレース。コメディー色が強く、概ねコミカルである一方、ひどくせつない背景を見事に再現している。
とにかく笑える。でも、笑えるけど、せつない。兼次(子安)が式を目前にした太郎(三木)に、オスカーワイルドの詩を暗唱する件りや、教会での兼次のモノローグなど、もう、かなりせつない。原作の性質上、役者である兼次のセリフ自体がとても芝居臭いものなのだが、そういった意味でも子安氏はこれ以上ないキャスティングだっただろう。そして太郎を演じる三木氏がまた、イメージそのままのはまりっぷりであり、この二人の熱演が、可笑しくもせつないこの物語を、ただの「BL」で終わらせない。
あと、これはぜひ書いておきたいのだが、少年時代の兼次の声も子安氏本人が演じており、それがまたスゴイ。それと、このシリーズになくてはならない存在である兼次の父を、今は亡き塩沢氏が演じているのだけれど、そのコミカル且つ渋い演技は、印象深く刻まれている。
最後にひとつ言わせてもらえれば、初めて出会った作品が、これでよかった、と、今つくづく思う。そして、未だにこのシリーズを超えるBL作品は私の中にはない。



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ストロベリーデカダンU
本橋馨子
インターコミュニケーションズ
★★★★★
子安武人×三木眞一郎 塩沢兼人 山崎たくみ
前作とは、打って変わってどシリアスな内容。「兼次おじさまシリーズ」第4・5巻「ストロベリー・デカダン2」から「ストロベリー・デカダン3」を、忠実且つコンパクトにまとめ上げた作品。原作に描かれている柚以子の死と、太郎がゲイに対して激しい嫌悪感を持つようになった経緯については省かれており、ここでは兼次がゲイであるという事実を太郎が知るところから始まる。
とにかく太郎ちゃんがスゴイ。もちろん、以前から三木氏は名優さんだと思ってはいたが、これほどの熱演を私は他に知らない。息を呑みつつ感嘆する意外できないほどに、その声とすばらしい演技に、ただ、ただ、聴き惚れてしまう。もう、三木氏サイコー、ビバ、眞一郎!
錯乱し柚以子の幻覚を追いかける太郎と、その彼を現実に呼び戻そうとする兼次。中盤のこのシーンの迫力は本当に凄まじいばかりであり。その両氏の演技に圧倒されるのも束の間、その直後に用意されているシーンが、また、ことのほかせつない。遊びなら出会ったその夜にでも平気で言える台詞を、太郎には18年もかかってしまった、と、玉砕覚悟の兼次の告白は、もう痛いほどであった。
そして、あまりに短すぎる蜜月と絶対的な決別。とにかくそのセリフのすべてが儚くとも美しく、ひたすら耽美であり、最初から最後まで、何処も彼処もがラブであり。まさに「ボーイズラブ」と呼ぶにふさわしい名作。感動します。