コルセーア T
水壬楓子
サイバーフェイズ
★★★
森川智之×鈴木千尋 鳥海浩輔 岸尾大輔 堀江由衣
モレア海を制する海賊・プレヴェーサの作戦参謀であるカナーレ(鈴木)は盲目の美青年。プレヴェーサの艦隊司令官、アヤース(森川)は、その剛腕から「悪魔殺し」の勇名を各地にとどろかす男・・・・と、人物設定はもちろん、世界設定すべてが架空の丸ごとファンタジー。ゆえに、キャラクターの名前、地名、宗教やそれに付随する組織の名前、と、原作未読の場合はまず、カタカナの多さに閉口するだろう。せめて、ブックレットに簡単な相関図または地図などがあれば親切だったかもしれない。ファンタジーということで、好き嫌いが大きく分かれるところだろうが、魔法を使ったり式神を召還したりする類ではないので、ファンタジーが苦手という人にも受け入れ易いかもしれない。
現在、カナーレがおかれている状況、彼を脅かす何か、それを知る人物との遭遇、それにより明かされる凄惨な過去、と、カナーレの過去を紐解きながら展開していくのだが、さすがファンタジー、大胆なエピソードが盛りだくさんであるにもかかわらず、流れがとても自然。互いに心が通じているわけでもないのに身体を重ねるその過程も、それゆえの心理描写も、簡潔ななりに納得のいくものであり。海戦の様子なども非常に迫真で、CDならではの臨場感を味わうことが出来た。
キャスティングについては、私的にはメインの二人が概ねイメージ通りで、特にカナーレの声は、あまり女性的では台無しであっただろうこともあり、鈴木くんのカナーレは、キャスト発表の際からぴったりだと思っていた。森川氏も、さすがの安定感、と言っては月並みかもしれないが、彼以上にアヤースの声をイメージできる役者は、他にはいないだろう。
しかし今作、最後まで聴いた第一印象を端的に言うならば、可もなく不可もなく、といったところ。作品自体は、エピソードそのものを大きくカットしているというわけではなく、全体的に削ぎ落とした、という印象で、もしかしたら上手くまとまっているのかもしれない。プレヴェーサでのカナーレの微妙な立場、人間関係など、つじつまの合わない部分もなければ、大きな違和感もないだろう。ナレーションがあるだろうことは容易に想像できたし、不自然に感じる部分もない。ただ、ならば面白かったか、と訊かれれば、それほど面白くはなかった。何しろ、メインの二人が、もともと面白みのあるキャラクターではない上に、それをより魅力的に描くべき詳細が、見事に省かれてしまっているからだ。エピソードの流れには忠実、でも細部はカット、という、まさにダイジェスト版な様相。要は、「雰囲気を味わえ」ということか。ファンタジーなだけあって、ドラマティックさには事欠かないが、これだけ駆け足なストーリーを、果たして一つの作品として楽しむことができるのか、原作未読な場合ならば殊更に、正直言って疑問。これだけボリュームのある作品を、一枚にまとめ上げたことは見事だと思うが、満足感はそれほど高いものではなかった。
それにしても、続編が決まっている作品の感想は、本当に難しい。あらかじめ「前編」と謳っているものを、一枚でどう評価したらいいのか。しかし、その後編は2枚組みということもあり、今回の物足りなさを補っても余りある出来であると、信じてはいるけれど。


サイバーフェイズCD☆コルセーア(1)☆



コルセーア U
水壬楓子
サイバーフェイズ




ムーンリット・ハンティング
水壬楓子
サイバーフェイズ
★★★☆
子安武人×近藤隆 三宅健太 福山潤 平川大輔
どちらかと言うと苦手なファンタジーであったわけだが、とてもすんなりと聴くことができた。というのも、ストーリーが非常に明解だということ。まあ、悪く言えば、ファンタジーとしてはストーリー自体が陳腐と言えなくもないのだが、そのたいした世界観じゃないところがむしろ魅力的とも言え、更に、国や登場人物の名前が和名チックなところも分かり易さに拍車を掛け、最後まではてなマーク無しに聴き進むことが出来る。ファンタジーのスケールとしてはかなりこじんまりとした印象だが、そこは演者とSEがすべて上手くフォローしており、物足りなさも感じない。多少の緊迫感も帯びながら、中にもほのぼのとした空気が随時流れており、とても好感が持てた。イイお話です。
キャラクターは、まあ言ってみればありがちな個性というか、それすらもあまりに解り易く、お世辞にも魅力的とはいえないが、設定にはとても上手く填り込んでおり、本来、もっと語られてもいいであろう衣織(子安)と月鹿(近藤)の深層心理に触れるべき部分や、それを取り巻く人間対人間のドロドロとした確執など、そういう情報すらさっぱりと捨てて、潔く物語の展開のみに重点を置き、その進展と同時進行で描かれる衣織自身の心の変化は、聴いていてとても心地よく、決して悪くない。そこそこの存在感を持たせながらも脇役が脇役として出しゃばらず、それに徹しているのもよい。
キャストだが、近藤くんに関しては個人的にはもっと低い二枚目声が好きなので、この役柄で特筆するべきことはないが、子安氏はさすがの銀狼っぷりで、傲慢かつ粗野な暴君は「まさに」という感じ。その狼が飼い主?に対して次第に従順に、仕舞いには千切れるほどに尻尾を振るワンコに成り下がっていく様はなかなかほほえましい。いつものS全開な攻めもいいけど、犬系も悪くないぞ、コヤP!
更に、雪那の三宅さんは、そのキャラクターと声のまま、どのRPGでも通用するような「必ず一人はいるよね」的填りキャラ。
続編があったら鬱陶しいなあ、と思っていたが、このシリーズはどうやら同一世界の別ストーリーらしく、ひとまずは安心・・なはずだったのだけれど、どうやら次にリリースが予定されているのは番外編の雪那×怜夜だそうで。別ストーリーの方でこのこじんまりさならば、キャスト次第では次も聴いてみてもいいかな、とは思ったが・・番外編の方はとりあえず遠慮しておくことにしよう。