青の軌跡
久能千明
インターコミュニケーションズ
★★★★☆
森川智之×中原茂 梁田清之 小林優子 真殿光昭
森川氏の出演作品数あれど、私はこの三四郎が一番好きだ。
「DOUBLE CALL」の塔馬、「真夏の被害者」のリュウなど、野性的でちょっと荒々しい感じは、森川氏演じるキャラの中では最もツボなのだが、この三四郎はその中でも最強、不動の一番だ。
これはいわゆるSFもの。スケール感からいって、一歩間違うと、ものすごく陳腐になったりするのだけれど、原作がしっかりしていると、ここまで鮮明に情景が浮かぶものなのか。これだけの世界観を声と音のみで伝えることができるなんて、本当にスゴイ。原作よりは多少展開がスピーディーに運んでいく印象だが、変な違和感は全く感じられない。
一番印象的な部分に触れる。ロード(梁田)がカイ(中原)に骨抜きにされたあと、カイとサンドラ(小林)の会話中にカイの独白があるのだが、思っていた以上にカイが三四郎を理解していたことに驚くとともに、その上で三四郎と対等でありたい、と願うカイの思いが、ことのほかせつない。
プロセスを楽しむ方だ、という三四郎の言葉通り、聴いている私自身も、充分プロセスを楽しませてもらっいているように思う。そして、更なる過程の進行も、楽しませてくれるに違いない。原作の言葉を借りれば、「彼らの旅は始まったばかりだ」ということなのだろう。
それにしても、特筆すべきは何ともセクシーこの上ない中原氏のハスキーボイス。彼の「今、骨抜きにしてやる」にまんまと骨抜きにされてしまうのだ。


インターコミュニケーションCD☆青の軌跡(2枚組)☆

*

青の軌跡 カタルシス・スペル
久能千明
インターコミュニケーションズ
★★★★★
森川智之×中原茂 小林優子 梁田清之 真殿光昭 中村秀利
シリーズ中、私はこの「カタルシス・スペル」が一番好きだ。
未だラブではない、長い長いプロセス、といった段階なのだが、それ自体にじれったさを感じない。自分自身の内面に囚われているカイ、鈍感なようでいて、すべてを見透かしたような三四郎、二人の微妙な感情の揺れは、リスナーとしてひどく心地よい。
私は、個人的に「伏線を効かせたオチ」というのが大好きだ。そういった意味で、とても小気味のよいラストであり、ニヤリ、としてしまう。そして、「カタルシス・スペル」という意味を改めて知るのだ。もちろん、タイトルはストーリー上の「パスワード」という意味でもあるのだろうけれど、決してそれだけではない。自分自身に囚われているカイをその呪縛から解き放ってあげられるのは三四郎だけなのかもしれない・・といった、タイトル自体がその伏線なのではないだろうか。自虐的で頑ななカイの心を開放する本当の呪文を知っているのは三四郎であり、それを手探りで模索するための旅でもあるに違いない。
前作の2枚組みに比べても引けをとらない充実した内容であり、心から満足。
そして最後。あきらめたようにパスワードを口にするカイ・・いや、中原氏の声は、またとてつもなくセクシーであり、今回もやられてしまうわけである。


インターコミュニケーションCD☆カタルシス・スペル ―解放の呪文―☆

*

青の軌跡 クリスタル・クラウン
久能千明
インターコミュニケーションズ
★★★★
森川智之×中原茂 小林優子 梁田清之 堀内賢雄
保志総一朗 千葉一伸
ラブ未満な二人の関係が、もう一段階ステップアップするためのプロセス、といった作品。それが、三四郎には苛立ち、カイには不安、というカタチで表現されているのだが、その描写がまた、身悶えるほどにすばらしい。
シップ内のストレス実験という背景、アーイシャ(保志)という新たな登場人物、それに加え、ひと癖もふた癖もある近衛凱(堀内)の出現により、人間関係がより複雑になっていく。また今回、サンドラがとてもいい味のはじけ具合を出しており、彼女の「狼の皮をかぶった狼」という比喩はまさに三四郎で、思わず笑ってしまった。
フェルトナー(千葉)の狂気なマインドコントロールにより瀕死に陥る三四郎に、カイはエムパス能力によるマインドセラピーを彼に施す。死の淵を彷徨う二人の対照的な生、その後の二人の心の距離感、もう、何もかもがよくてよくて倒れそうだ。
アーイシャの「考えるのは頭なのに、痛むのはどうして胸なんでしょうね」という初恋チックなセリフが、メチャメチャ可愛らしかった。保志くんはやはりこうでなければ♪
フェルトナー@一伸氏の熱演、腹を決めた三四郎の男らしさを演じる森川氏の美声、「生理現象と笑っていい」などと、決して笑えない超セクシーな台詞で悩殺してくれた中原氏。シリーズが進むにつれ身体に悪い気すらするのだが、大丈夫だろうか。


インターコミュニケーションCD☆クリスタルクラウン(2枚組)☆

*

バロック・パール
久能千明
インターコミュニケーションズ
★★★★
森川智之×中原茂 梁田清之 小林優子 堀内賢雄
今回は、カイが作業中に事故に遭い、頭を強打し、記憶が退行してしまうところから始まる。目覚めたカイは、カイでなく、13歳のイシスであった。このイシス、まさに月人(ルナン)らしい月人であり、彼自身がエロスなのだった。凱の言葉を借りれば、性の感覚的側面であり、快楽のイメージであるはずのエロスが、人の形をして呼吸し、考え動いている、それがイシスである、と・・・・・うーん、脳みそ三四郎並み?
いや、決してそれだけではないのだが、理解に苦しむ部分がたくさんあった。と、いうのも、多分、カイのモノローグが、とても少なかったからだ。今まで、どれだけカイのモノローグに頼りきっていたかを改めて感じた。
ただ、それもあってか、中盤の遅々とした展開に、少しイライラした。イシスに振り回されているドタバタはわかるが、今ひとつポイントが流されているような気がした。例えば、イシスの瞳から溢れる涙の色であったり、サンドラとの会話、そういった、特に、ラストで何より必要であるはずの「母親」というキーワードを印象付けるための伏線が、少し足りなかったように感じた。三四郎の、「あいつ、逃げやがったな・・・」は、本質を見抜いているようで実はそうではない、私としては最も三四郎らしくて好きな台詞だったのだが、フォローがなく、さらりと流れてしまい、残念であった。
けれど、なんと言ってもすばらしかったのは、13歳のイシスを演じる中原氏。声色を変えずに13歳の少年をも演じ分けているのだが、それはまさに別人格であり、確かにイシスであった。ゆえに、三四郎が麻酔にかかるまでの二人の会話に胸が詰まり、カイに戻ったカイが、イシスと同じ台詞を吐くことにせつなくなる。そして、返ってきたカイを何度も何度も呼ぶ三四郎は、とてつもなくセクシーであり、やはりこの二人のキャスティングが、よりすばらしい作品を作り上げていることに、間違いはないだろう。


インターコミュニケーションCD☆バロック・パール(2枚組)☆

*

青の軌跡 ペルソナ ノングラータ
久能千明
インターコミュニケーションズ
★★★★☆
森川智之×中原茂 小林優子 梁田清之 堀内賢雄
小杉十郎太 森久保祥太郎
まさかのイレギュラーにより、シップはまたも事件に飲み込まれていく。
前4作までの二人の心の描写をメインにしていた作品と違い、アクションを本筋にしたストーリーが展開していく。ただ、ここで何故このような流れが必要だったのか、というその思惑すら、聴けば聴くほど、知れば知るほど心憎い。
初めて味わう恐怖心、それすらも自己分析してしまう己に自嘲し、他人の痛みを介して触れる初めて愛情に戸惑う。そんなカイの独白から知る彼の心の情報は、悔しいほどにリスナーを惹き込んでいくだろう。本来ならラブの前に築くべき「信頼」という関係を、改めて結んでいくカイと三四郎。だいたい、カイの感じている恐怖心さえ死への惧れではなく、信頼を裏切ることへの危惧であるのだ。
そして、二人を取り巻いていくマジェラ、イザク、それぞれの思惑が交差し、せつなさに拍車をかけ、ラストへとたたみこんでいくあたり、まったくもって上手いとしか言いようがない。それに加えSEのすばらしさは、毎回、感嘆に値する。
それにしても、半べそ状態のロードに対して、ロードを片手で持ち上げられる(笑)サンドラの二枚目っぷりは、とてつもなくかっこよかった。


インターコミュニケーションCD☆ペルソナ ノングラータ(2枚組)☆

*

青の軌跡 ファントム ペイン
久能千明
インターコミュニケーションズ
★★★★★
森川智之×中原茂 小林優子 梁田清之 堀内賢雄
もう、すばらしい、としか、言いようがない。
シリーズもここまで進んでくると、中だるみというか、飽きというか、そういったものが出てくるのではないか、聴く前のそんな危惧が一瞬に翻る。特に、最初のチャプター3ですべてが吹き飛んでしまった。そして、今までのシリーズで私自身が「見えていた」と思って疑わなかった三四郎とカイの関係が、実は意外にも見えていなかったことに初めて気付かされる。二人の関係を、より複雑にしているのは、カイの方だとばかり思っていた。カイの一方的な防壁こそがそうさせているのだと、しかし。
カイの「卑怯な男だな・・」という台詞に続く「酷い男だ」という独白の意味が、初めて解かったような気がして、身震いがした。三四郎のような男と深く関わったら、こちらの方がボロボロにされてしまう、そういった「恐怖」を改めて知った思いだった。怖い、本当に怖い。
真意を見せずにはぐらかしているのは三四郎の方で、しかもそれが無意識だと知っているから苛立つ。しかし、プライドの高さゆえ自分の中に封じ込め、考え込み、突き放されたような感覚に落ち込む。なのに、何ものにも執着しないと言い放ったそばから子供のように拗ね、放っておいてくれればよいものを、時折、信じられないほどの鋭さで核心を突き、引き戻され、揺れる。そして、それもまた彼の無意識な言動や行動であると知り、傷付く。自分との比較対照物として、また、向かい合う一個の人間としての三四郎に、自らをまたも追い込んでいく、そんなカイの感情が、リスナーとの防壁を超え、こちらに流れ込んでくるようだった。
更に更に、その先にも何ともすごい展開が待っていた。いや、ここまでキャラクターの心理描写に引きずられてしまう自分の単純な頭を今回はつくづく有り難いと感じたし、我慢して原作を後回しにして本当によかったと思った。そしていつもながら、タイトルのネーミングセンスに、すばらしい!と感嘆するのだ。
カイをあそこまでの狂気に煽る過去、それに対する憎悪たるや凄まじいばかりで、その激しさには恐ろしいほどの緊張感に襲われるとともにせつなさでいっぱいになる。
キャラクターの魅力とストーリー展開、特に細部に行き渡る伏線とトラップには、今更ながら驚かされるばかりだし、それを演じるキャストの素晴らしさは、やはり類を見ないだろう。何度も繰り返すようだが、森川氏演じる数多のキャラクターの中でも、三四郎はやはり不動の一番であると思うし、中原氏の狂気と混乱の演技、更にあの「つかまえた・・」という台詞には、私自身、身も心も捕縛された心地であり、その色っぽさに床を叩きながら転がってしまう。
もちろん根底に流れるラブの要素も、その速度を巧みに変えながらじわじわと魅せてくれるあたり、満足度この上ない。事件が事件として恋愛と切り離されたものではなく、それ自体がすべてプロセスになっているという見事さに、改めて感服するのだ。
最後のカイの画策も含め先がものすごく気になるところではあるが、このシリーズに限っては「CDを聴いてから原作を読む」という自分のスタンスを守ろうと心に誓う。これは、私の最大の賞賛だと思ってもらっていい。


インターコミュニケーションCD☆ファントム ペイン☆