間の楔 <OVA>
吉原理恵子
マガジンマガジン
★★★★★
塩沢兼人×関俊彦 辻谷耕史 中原茂 田中秀幸 速水奨
まず、映像が非常に綺麗である、ということ。92年にアニメ化された作品なので、既に10年以上もの時を経ているにもかかわらず、<SF>ということもあってか、今観ても全く違和感が感じられない。そして、SFならではのSEもさることながら、音楽もまた素晴らしい。更に特筆すべきは、イアソンの美しさと、そのイアソンを演じる塩沢氏の声、声、声。それはもう、鳥肌もの。確かに<映像だからこそ伝えられるもの>もたくさんあったとは思うけれど、それでも、やはりストーリーの確かさがあればこその名作なのだろう。
リキとイアソンを「反発することでしか引き合えない恋もある」などと、ひとことで語ってしまうにはあまりに不親切かもしれないが、互いの絶対的な立場と運命、ゆえに相容れない、ゆえに言葉や態度で示すことを許されない、そういった二人の苦悩が酷くせつない。
そして、何といってもすごいのがキャラクター。リキ、イアソンは言うに及ばず、ラウール、カッツェ、そしてガイ、と、それぞれの立場ゆえの思惑に、身を裂かれるような思いがする。
一番印象的だったのは、これは思い切りネタバレなので未聴の方には一応断っておくが、最後のダナ・バーンのシーン。リキがイアソンの傍らに座り込み、一呼吸のあと、イアソンがもの凄く幸せそうな顔をするんだよね。もう、それがなんともたまらない。あれは泣くでしょう、いや、絶対に泣くね。どんな愛の告白よりも、100倍は説得力のあるラブだと思う。そしてそこからラストスモーキングへたたみこんでいくあたり、もう、完全にやられます。
リキとイアソン、二人の最期に対しては、ラウールの声にならない叫び、カッツェの嗚咽、ガイの自虐的な前向きさ、という三者三様の姿を曝していくのだが、これがまた、実に上手い。
書きたいことは山ほどあるが、どんな言葉も陳腐になりそうで、これはもう、自分のボキャブラリーのなさを嘆くしかない。まあ、文句は観てから言ってください。



*

間の楔 DARK-EROGENOUS
吉原理恵子
マガジンマガジン
★★★★
塩沢兼人×関俊彦 置鮎龍太郎 辻谷耕史 中原茂 田中秀幸
速水奨
間の楔本編には描かれていなかった、イアソンが人間の端くれに堕ちていく3年間を作品にしたもの。本編のOVAを見ていたので、タナグラやミダスの背景まで、くっきりと頭の中に描くことができた。エオスの出口をせつなく見つめているリキや、イアソンの白い手袋まで目に浮かぶようだった。
とにかく、音楽と音響がすばらしい。さすが岩波氏!一応褒めておこう・・
リキの孤独、イアソンのプライド、そしてダリルの憧れ。無慈悲で絶対的な立場に身をおく三人三様の思いが、身につまされるように痛い。特に、ダリル。誰にも媚びないリキ、という、己の憧れに、彼の持っているすべてをチップにした賭けは、もう、心臓を握りつぶされるほどに、せつなかった。おどおどしていながらも決してよどみのない彼の告白は、酷く胸を打つものであり、そのダリルを演じる置鮎氏がまた凄いの!感動します。
BLと言っていいのかどうかもよくわからないほどの特殊なスケール感だが、いいものはいい、としか言いようがない。回を重ねて聴くほどに、じわじわと広がっていくものもあり、新たな感動もあり。日常から離れて味わいたい、と思える、数少ない作品のひとつかもしれない。





渇愛
吉原理恵子
インターコミュニケーションズ
★★★★★
子安武人×松本保典 堀内賢雄 田中秀幸 成田剣 小野健一 松井菜桜子
これこそ本当のカリスマ、これこそ本物のエゴイスト、いやはや、すごいキャラです、高見玲二。聴いているだけで、こんなに目に浮かぶほどインパクトのあるキャラを、私は他に思いつかない。ビジュアル的な情報を一切排除しているにもかかわらず、いや、情報がないからこそ、想像が掻き立てられるのかもしれないが。
しかし、これはキャラクター本来の持つ要素だけで惹き出せる魅力ではない、と私は思う。高見玲二というキャラに子安武人の声が重なってこその魅力なのだろう。子安武人の声あっての名作だ、と、声を大にして言いたい。
それにしても子安氏、いいところで響いてたな〜、今回。人称も話し方も、特別好みのキャラではないはずなのに、それを覆すほどによかった。子安氏演じる萌えキャラに関しては「言葉遣いは丁寧で」などという、これまで守り抜いてきた?概念を、根本から吹っ飛ばし、翻し、もうどうでもいいや、とさえ思わせられるだけの衝撃が、この玲二にはあった。誓って言うが、私は鬼畜萌えではない。なのにどうだろう、今回、いかに自分がマゾヒストなのかを思い知らされた気分だ。この渇き具合に、もうしびれまくりであり。
そして、和也を演じた松本氏がまた素晴らしい〜!玲二とタメをはれる唯一の常識人、それだけで、もう、すごいキャラなのだが、男らしくて、深くて、彼がまたとにかく魅力的。弟に力尽くで陵辱されながらも、プライドを失わず、当たり前に対等であろうとする様がひどくカッコいい。それに、低い声なのだが、震えるような受け声がまた非常にツボ。妙にリアルなんだよね〜。
そしてそして、高志(堀内)、立花(小野)、黒崎(成田)、森島(田中)と、脇を固める声が全部大人、中でも27歳という年齢設定にもかかわらず、まるで初老の紳士を思わせる田中氏の、尋常ではない落ち着きっぷりがスゴイ。その森島、一見穏やかに見えるクールビューティーの心の奥底にある実父への憎悪、それに付随する冷たく不気味な思惑、さらには、飄々としているようでいて、まったくつかみ所のない男、黒崎、と、周囲も胡散臭さ120%、強烈です。
ドラマとして、キャラの魅力として、キャストとして、もうひたすら幸せが臓腑に染み渡る3枚組。これで5900円なら安い買い物、しばらくは他のBLCDを聴けないかもしれない、そのくらい、半端じゃなく面白い作品、傑作です。


インターコミュニケーションCD☆渇愛(3枚組)☆

*

縛恋
吉原理恵子
インターコミュニケーションズ
★★★★★
子安武人×松本保典 堀内賢雄 田中秀幸 成田剣 辻谷耕史 松井菜桜子
まったく期待を裏切らない、すばらしい作品。約3時間半の子安武人イリュージョン、俺様パラダイス。私的には、前作を更に上回ったね、ブラボ〜〜〜!!
和也が、玲二のすべてを受け止める覚悟を決めて、より懐の深さを見せ、黒崎、森島に高藤を加え、その怪しさ(妖しさ?)も倍増。何より、玲二が・・・・可愛くなってきた!(笑)
玲二が刺されたあとのシーンで、和也が玲二の身を案ずる言葉を口にするのだが、その際の玲二の動揺といったら。思いつく限りのカリスマ像を冷徹と身勝手でこねて丸めてエゴイズムで固めたようなあの玲二が見せた一瞬の激しい狼狽。そして、「俺とお前は対等なんかじゃない」以下の件り・・・超俺様ぶりは健在なのに、「俺をもっと欲しがれ」と言う玲二は、何かを強請って駄々をこねる子どものようで、いたいけで、せつなくて、愛しくて、もう、きゅ〜〜〜ん であり。その後のモノローグも、玲二にしては、妙にしおらしく可愛いらしいもので、3枚目の最後まで自分の子宮が持つかどうか、本気で心配になってくる。
しかし、この、どこまでもシリアスでヘビーなストーリー、しかも3枚組みであるにもかかわらず、一気に聴けてしまう、この面白さはなんなのだろう。もちろん、聴き終わったあとに多少の脱力感は伴うとして、それでも、この病み付き加減は、自分でも異常と言わざるを得ないヤバさだ。恐ろしきはこの男、高見玲二。独占欲丸出しの化け物、究極のブラコン、フェロモン垂れ流しの超俺様、まさに無敵のキャラだろう。そして、子安武人、やはりこの人であり。ギャグ一切無しの彼に、いったい誰が抗えるだろうか。でね、でね、その子安氏がまた、絡みシーンでめちゃくちゃセクシーな声を出しやがるんですよ!反則だ、反則!!(泣)
玲二が流し目一発で女を想像妊娠させるというのなら、子安はそのセリフひとつで本当に妊娠させそうだ。麻美でなくても、責任とれ!と言いたくなる。
そして和也だが。玲二が、「一癖も二癖もある野郎どもを無自覚でたらしこむ天性のたらし・・」と言っているように、和也本人の意識の及ばないところで、彼をめぐる男同士の争いが水面下で勃発。玲二ですら焦燥感を煽られるほどに、周囲の人間を惹き付けて已まない和也の、玲二とは対照的な魅力が露わになっていくわけなのだが、これがまたたまらない。和也にしてみれば、ただただ不本意で不必要な天性の才能をもてあまし、苦悩することになるのだけれど、しかし、その胡散臭い男たちとさえ、対等に渡り歩く度量を持ち合わせているところがまた、男らしくてカッコいいんだよね〜。
玲二は玲二で、切れ者と称される森島と駆け引きできるだけの策士でもあり、ただのたらしなだけのバカではなく、一見、森島の子飼いに見えるエッジや、遊び人のボンボン然としているようで、決してそれだけではなさそうな高藤、そして、明人だけではない、森島一族の存在、と、それぞれの思惑が交錯していく。
とにかく、縛る(縛られる?)恋も、思い切り堪能、ご馳走様でした、合掌。
ていうか、早く続編出してください、全編書下ろしでもいいから!!←ありえないけど渇望


インターコミュニケーションCD☆縛恋(3枚組) ☆

*

渇愛&縛恋 ショートストーリー 〜睦言(ラバーズ・トーク)/蜜淫(MI・DA・RA)
吉原理恵子
花丸全サ
★★★
子安武人×松本保典
うーん・・・・さて、どうだろう。まあ、結論から言ってしまえば、ただ、ただ、本編の続きを聴きたい、という欲望を、更に掻き立てられた、という現状に追いやられただけの煽りCD。つーか、マジでそろそろ続き出してください。
全サ及び番外編などで有りがちな、いわゆるシチュエーションドラマなわけだが、そこは吉原恵理子、これでもか、な描写をひたすら朗読させているわけで、会話もほとんどなく、その少ない会話のどれもが、これまでに聴いた覚えのあるものばかりであり、玲二のサド声を一番楽しみにしていた私にとっては、かなり物足りなかったことは大いに否めない。更に今回、会話のみに関して言えば、玲二のどことなくソフトな印象に、正直「老けた?」と突っ込みたくなるくらいの抑え目なテンションと迫力の無さ加減に、あれ?と思ってしまったのも事実。でなければ、子安氏が「囁き攻め」という技に改めて磨きをかけるべく挑戦してるのかのどちらかだろう。
それでも、本来、独白は抑揚のない淡々としたものが好ましいと常々思っている私からしてみれば、互いの吐息をバックに語られるそれは、行間で思わず止めていた息を一気に吐き出さなければならないような緊張感のあるもので、引き込まれていくほどに、何度も生唾を飲まされてしまう。
しかし、極個人的な、というか、もしかしたら、原作を読まない私ならではなのかもしれないが、今回、このCDを手に取るにあたっては、ジャケット絵を極力見ないよう細心の注意を払うに努めた。というのも、決して挿画がどう、ということではなく、本編のレビューにもあるように、私の脳裏には既に確固たる玲二がおり、そのイメージを今更塗り替えられることを嫌ったまでで、ただ、それほど、私にとって最も思い入れの強い作品であるのだろう。つーか、いい加減続き出してください、ほんと。




銀の鎮魂歌
吉原理恵子
マガジンマガジン
★★★★
森川智之×石田彰 松本保典 飛田展男 増谷康紀
弱冠17歳の帝王、ルシアン(森川)と彼の乳兄弟であるキラ(石田)の、悲しい恋を描いた悲劇。ファンタジー。
感想を書くにあたって、さくさくと書いてしまえるものと、反対になかなか気が進まぬものとがあり、そうした中、これは思い切り後者。ハッピーエンド推奨派と自称するわりには、私はこういった作品の評価が高い。「ストロベリーデカダンU」であり、「幸運男子」であり、「美しい男」であり、「間の楔」であり、そしてこの「銀レク」もそのひとつだろう。絶対的な運命に飲み込まれていくやるせなさと後味の悪ささえ感動と言うのなら、まさにそう。確かに何度も繰り返して聴きたい作品ではないが。しかし、苦手意識を持ちつつも、それでもやはり素晴らしいものは素晴らしい。それはSEであり、音楽であり、マガマガさんの力の入れ様が窺える豪華な装丁も然り。
そして、さらに素晴らしきは、厳選されたのであろうキャスティング。ブラボーのひとことです。森川氏のルシアンと石田氏のキラはこれ以上ないほどの配役で、特に石田氏の、13歳の無垢な少年から18歳の諦めと悟りの入り混じった青年への変貌振りには、今更ながらに鳥肌が立つ。二人の短い蜜月、容赦のない別離、遅すぎる告白、そのどれもが迫真の演技で、ひとつひとつの台詞に引きずり込まれるように目くるめくストーリーが展開していく。
余談だが、この作品を初めて聴いたのは、このキャスティングの某オーディションだった。ルシアンは増谷氏でキラは置鮎氏・・そう言えば大抵の方は想像がつくと思うのだが。
そして、忘れてならないのが脇の面々。抗えない力に葛藤するディラン、サマラ、ジェナスがまた素晴らしい好演であり、沢木氏のナレーションも一役買っている。
アザムの背で、再びルシアンの腕に擁かれるキラの夢のような瞬間が、このまま永遠に続けばいいのに、と、キラでなくても願わずにはいられない。泣きます。



2

二重螺旋
吉原理恵子
ムービック
★★★
三木眞一郎×緑川光 阪口大助 柚木涼香
家族を捨て、愛人のもとへ行ってしまった父親、それをきっかけに狂気に陥る母親。一気に崩壊していく家族の中にあって、さらに兄弟同士の痴情が縺れ合っていく・・・という、いわゆる近親相姦もの。破滅的なエンディングに向かってひた走りながら、一方、その心理描写を掘り下げていく、という、吉原さんの十八番チックな作品。しかし今回、どことなくあっさりして感じるのは、吉原作品ということで私が必要以上にドロドロ感を期待してしまっていたからだろうか、今ひとつ聴き応えに欠けた気がした。
心理描写は、特に尚人(緑川)の胸中など、くどいほどに描かれているのに、全体的に「浅い」という印象を受ける。例えば、雅紀(三木)が、どのような気持ちで母親との関係を持っていたのか、いつから尚人に対してそういった感情を懐いていたのか、如何せん情報が少なすぎる気がするし、尚人の独白が一方的過ぎて、雅紀の狂気へ至る経緯が、何も見えてこない。それに、これは極個人的な感想なのだが、BGMが非常にいい感じでヘビーなだけに、尚人のモノローグを、すべて感情的なそれではなく、端的に感情で語る部分と、もっと淡々と語る部分を使い分けてくれたら、返って痛々しくてよかったように思う。
あと、最後の雅紀のモノローグだが、ここまで徹底的に尚人視点で描いておきながら何故!?という、大きな違和感。セリフ自体もどこかで聴いたことのあるような使いまわされたものであり、酷く蛇足な気がした。
ただ、好きか嫌いか、と訊かれれば・・・・大好きです、もう大好物♪頭のおかしい三木眞は、どうしてこうも毎回毎回、填ってくれちゃうのだろう。狂気な部分と素な部分の緩急が、もう、三木氏にしかできないような上手さなんだよね。それと、緑川氏の痛い受け声は、いつもながら、子宮の奥に、ぎゅっ、て感じで響いてくるし、特に、遠くから聞こえてくるそれはもう絶品で、裕太(阪口)の気の毒さにも拍車をかける。
しかし、いけないと思いつつ、どうしてもほかの作品、例えば「間の楔」や「銀レク」、ていうか、ぶっちゃけ「渇愛」とか「渇愛」とか「渇愛」とかといった名作と比較してしまい、そういう意味では悲しいかな、どうしても軽薄で中途半端な印象が否めない。この消化不良加減は、このドラマ自体の結末や続編へ続きそうな終わり方がどうの、という問題ではなく、この作品自体の物足りなさゆえなのではないだろうか。ちょっと残念。


ムービック(キャラCDコレクション)☆二重螺旋☆