三千世界の鴉を殺し
津守時生
新書館
★★★★☆
諏訪部順一 三木眞一郎 斎賀みつき 中田譲治 神奈延年 関智一
立木文彦 若本規夫 うすいたかやす 尾又淑恵 拡森信吾 川崎恵理子 
このところの跡部人気により、非常に露出の高くなった諏訪部氏だが、BLでも出演作品が急激に増えているようだ。ただ、この作品を現在の段階でBLと括るにはかなり語弊があり、しかしあまりにヒットだったので、レビューは書いてみることにした。
ジャンルはSFに分類されるだろうか。とにかく、台詞のセンスには感動さえ覚える。キャラクターのひとりひとりが、それぞれ素晴らしいジョークの才能を持っており、しかも本人達はジョークではなく、本気で言っているらしいところがあまりに恐ろしい。会話であれモノローグであれ、テンポも間も言うこと無しの面白さで、爆笑ではないものの、思わず噴出してしまう。
そして、キャラクター!いくらSFとは言え、ここまで個性的なキャラにはなかなかお目にかかれないだろう。きわめて優秀でありながら、非常に問題も多く、辺境惑星に左遷されてきた銀河連邦宇宙軍大尉・ルシファード(諏訪部)。長く美しい黒髪を持ち、その外見からは考えられないようなピー音入りまくりの下品な暴言を吐く反面、すごく優しく、お茶目で可愛い男。もう、とにかく最初から最後まで、彼の魅力が炸裂。それを演じる諏訪部氏の男前なこと、色っぽいこと、本当にしびれます。
さらに、そんな彼を虜にしてしまうほど美しい、軍病院の外科主任、サラディン(三木)。彼もまた、その見かけからは想像もできないマッドでサイコで変態なドクターであり。あまりに妖しいそのドクターを演じる三木氏が、これまたひどく妖艶。この二人、絡みらしい絡みは現段階ではほとんどないのだけれど、会話が妙に色っぽい。年の差、なんと200歳のこのカップルは、一方ではひどく謎めいた背景を抱えている。
そして、脇キャラも言い尽くせないほどの個性でぶつかり合っており、その誰も彼もが魅力的なのだ。タフなライラをはじめ、カジャ、ワルターと、本当に楽しませてくれる。
更にもうひとつ付け加えるなら、SE、音楽のいずれもが見事。特に音楽は、さすがの高野氏であり、シーンごとの雰囲気作りに大いに貢献している。また、ジャケットの形状はともかく、表に描かれている藍川さとる改め古張乃莉さんのイラストが、なんとも言えず美しい。
ここまで手放しで褒めていいものかどうか、多少の懸念はあるけれど、とにかく丁寧に作られた作品であり、私のツボにはまった、ということを理解していただけたら幸いだ。


新書館CD三千世界の鴉を殺し

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三千世界の鴉を殺し 2
津守時生
新書館
★★★★
諏訪部順一 三木眞一郎 斎賀みつき 神奈延年 関智一 中田譲治
五十嵐麗 立木文彦 若本規夫 堀内賢雄 小林優子 うすいたかやす 他
メインの二人については、前回で語りすぎるほど語ったので、今回、特筆することはほとんどないのだが、それでも作品全体を通して、前作同様、ルシファードがより魅力的に描かれている。ひどく壮大で危ない背景を感じさせながらも、愉快で爽快な会話の巧みさで、目前のストーリーをスピーディーに展開させていく。パープルヘヴン(以下PH)という、この作品には欠かせない、腐女子の妄想の権化とも言うべき下品な要素を見事に取り込み、それはもう、なんとも抱腹なエピソードで楽しませてくれる。ルシファードとライラ(斎賀)の支離滅裂な掛け合いといい、ワルター(関)とその前妻・メリッサ(小林)の前途多難なやり取りといい、ルシファードの両親であるO2とフリーダムの絶望的な交信といい、女性のたくましさと男性の情けなさを露呈する辛辣な会話はあまりに面白い。母性本能をくすぐらんと悪戦苦闘するルシファード@諏訪部氏の台詞をものともせず、ワルター@トモカズくんの珍しくキザで二枚目なキメ台詞を空振りさせるほどの、男前なお姉さまたちに敬服。PHをひとつひとつのエピソードに絡ませつつ、そういった意味では前作よりも更にBLっぽさが薄味になっている印象だが、それを相殺できるほどの面白さなのだ。
その遅々とした進展加減は原作でもやはり同様であり、うんざりするほど先は長いのだが、でもどうせなら、このまま細部に拘った、丁寧且つ忠実な作品作りをして欲しいと願う。


新書館CD三千世界の鴉を殺し 2



三千世界の鴉を殺し 3
津守時生
新書館
★★★☆
諏訪部順一 斎賀みつき 三木眞一郎 神奈延年 中田譲治 関智一
堀内賢雄 野島健児 うすいたかやす 小林優子 安田未央 山田美穂 他
今回、キャスト以外の、要するに脚本、演出、音楽その他のスタッフが総入れ替えだったわけだが。続編を待ち焦がれている身でありながらこういったことを書くのは非常に不本意なのだけれど、シーン切り替えの効果音なども含め、全体的な雰囲気としては前作までの方が好みだった。クオリティが落ちた、とまでは言わないが、満足度としてはやはり前2作を下回るような気がする。
確かに台本泣かせな原作だとは思う。密度を濃くしようと思えば、どこかを大胆にブッた切らないといけないのだろう。なのに、どこも重要でどこも面白いから切りようが無い。ただ、2作目まではキャラの設定とその情報、あるいはその魅力で誤魔化せていたものも、3作目以降、ストーリーが核心を突くにつれ、CD化すればするほど自らの首を絞めるようなことになりかねない気がするのだがどうだろうか。絶対的な情報量の足りなさから、<ドラマCD>としては、どうしても不完全で中途半端なものしか生み出せないだろう。
ただ、この作品に関しては、私が思うに南野作品の次くらいにCD化が難しい作品だと思うのね。だからと言ってビジュアルその他の情報を与えすぎるのもどうかというか、ブックレットに頼りすぎるような作品作りはして欲しくないし、ていうかブックレット自体無いんだけど(笑)、そういう意味ではすごくがんばっているとは思うのだが、原作未読で、しかもこのぶつ切り感をどう解釈するかは論議を醸しそうなところ。確かに、小説1冊分を1枚に収め切るのは絶対に無理だし、まあ、だからこそシナリオの出来不出来がものを言うわけだけれど、単に会話部分を繋げればいいというような素人じみた仕事では、納得いくものもいかないはずだ。なぜなら、この「三千世界の鴉を殺し」という作品が表面だけを掬って事足りるような作品ではないからだ。
しかし、面白いか面白くないか、と言われれば、間違いなく面白い。ドラマCDとしては、絵に例えるなら下書き程度のもの、と言ってもいいくらいの完成度であるはずなのに、これがもう、形容しがたいほどに面白い。そして、原作既読の場合はファンディスクとして、未読の場合は解らないなりに楽しめばいいのではないか、それで消化不良ならば迷わず原作を読めばいいのではないか、そう思えるのだ。ゆえに、極、極個人的に言わせてもらえば、ファンディスクとしてでもいいから、やはり続編を作って欲しい、そう願うのだ。ルシファーは相変わらずボケボケしくてキュートこの上ないし、BLというわけでもないのにサラ(三木)やワルター(関)、マオ(堀内)とのキスシーンまであり、キャストファンとしても文句は無いだろう。
ただ、ひとつだけ、もの凄ーく細かいことを突っ込ませてもらえれば、「幽霊親父」というセリフを「ゆうれいおやじ」ではなく「ゆうれいちちおや」とルシファーが言っているのだが、それって台本ミス?にしても・・(笑)
前述のように、酷いぶつ切り感はあると思うが、これは原作もそうで、次の任務への<フリ>なので仕方がない。そして次回作があるならば、前半は間違いなくマコ(野島)絡みの話であるはずなので、とても楽しみだ。
伝わるか伝わらないかはともかく、今回に限って言えば、レビューの辛さは作品への愛ゆえ、と思って欲しい。星の数だけを見て判断してもらってもよい。ただ、私はこのシリーズが大好きだし、特にこの諏訪部さんは絶品だと思う。未聴の方は、まあ騙されたと思って1枚目だけでも聴いてみたらいい。ルシファード以上にチャーミングな男がいるものならば、ぜひ、教えて欲しい。


新書館CD●三千世界の鴉を殺し 3●



三千世界の鴉を殺し 4
津守時生
新書館
★★★☆
諏訪部順一 三木眞一郎 斎賀みつき 神奈延年 野島健児
千葉進歩 小林優子 尾又淑恵 水落幸子 川崎恵理子 
今回に関しても、原作4巻の主要なセリフだけをひたすら繋いだ1枚となっている。状況の説明すら入れる余裕がないのか、戦闘シーンや電脳機器を駆使したシーンなど、そのほとんどがSE頼みという、前作を上回るほどの強行手段をとっている。その理由については前作のレビューをおさらいしていただければ理解してもらえると思うが、今回の作品全体の印象、延いてはCD作成に対する姿勢というかスタンスは、完全に「ファンディスク」としての様相を呈してきた。ただ、開き直りでなく、私個人としてはそれでもいいとは思っているけれど。
制作側の立ち位置はともかく本編だが、これが身震いするほどに面白いわけだ。これまで、無駄に知能指数が高いものの武闘派という括りだったルシファーが、実はそれ以上に能力を発揮するフィールドが電脳戦であり、姿が見えない敵との攻防は終始緊張感が漂い、非常に聴き応えがあった。しかし、そんな中でも、脱力する部分はしっかりと抜き、悪辣且つ笑えないジョークの天才が操るセリフの一つ一つは、サイコなドクターやベビーフェイスのケルベロスを揶揄嘲弄しながら、小気味のよいテンポとともに目まぐるしい展開を見せる。一方、今回は身体を張った戦闘のみに従事したライラも、あまりに男前なセリフと振る舞いで目前の敵や作戦のターゲット、その上、後方支援に徹していたルシファードまでをも跪かせていく。
更には、この段階ではまだ謎であるラフェール人・ニコル(千葉)の登場、相変わらずのサラとカジャの掛け合い、そして副官を「監視者」と呼ぶ本当の意味、と、愉快なエピソードからショッキングなエピソードまで、どこまでもバラエティーに富んでいる。
私は原作既読なので断言は出来ないが、「ファンディスク」などと言いながら、実は未読でもかなり楽しめるのではないかと思っている。確かにSEに頼りすぎている感は否めないが、それを差し引いても面白さの方が数段も上だと思うからだ。
しかし、だ。原作には長々と描かれている蓬莱人の回想が、大胆にも一切合切カットされていることもさることながら、私が今回、どうしても許せなかった部分をひとつだけ言わせてもらうならば、ガーディアン・レッドの登場シーンが思い切り飛ばされていたことだ。なんで?ていうか、キャストは誰!?(←本音)
大昔の日記にも書いたことがあるが、マーメノイドは石田彰です。(お前の中だけでな!)